ORICON NEWS
V字回復への第一歩「どうしても君が好きだ」に見る新生AKB48のプライドと気概
4月26日にリリースされたAKB48の61枚目のシングル「どうしても君が好きだ」。昨年、2022年10月に発表した「久しぶりのリップグロス」の初週売上を上回る32.7万枚を記録し、5/8付シングルランキング１位を獲得した。本作で1位獲得は48作連続・通算48作目となる。初めての１位獲得は、今からさかのぼること約14年前の「RIVER」（09年11/2付）である。この移り変わりの激しいポップシーンにあって、長きにわたりこの記録を伸ばし続けるというのは、どれほどの重圧だろうか。この数ヶ月にわたって、AKB48のYouTube公式チャンネルに上がった一連のドキュメンタリー動画には、そんなプレッシャーにもがきつつも、新しいAKB48の姿を模索する、真摯な姿が映し出されていた。
■解散することのないアイドルグループAKB48 今のメンバーたちの心の内は？
かつてアイドルの寿命は短かった。とくに女性アイドルは短命だった。しかし、2000年代に入り、モーニング娘。やAKB48のような、メンバーチェンジを繰り返して新陳代謝を行い、解散することのないアイドルグループが生まれた。前出のAKB48のシングル1位記録は、そういったスタイルをファンが受け入れたことの表れであり、アイドルシーンが音楽シーンにすっかり根付いた証であると言えるだろう。
多くの人が名前を認知し、強固なファンダムを有するグループに加入することは、一気に大きな注目を集めるという意味でアドバンテージはあるが、一方で、常に過去と比較され続け、高い水準の成果を求められるという負荷がかかる。安定路線を選べば飽きられ、かといって冒険しすぎれば反発を招く。リリースの度に成長した新しい姿を見せて、いかにファンを刺激し続けることができるか。言うは易しく行うは難し。しかし、それを続けてきたのがAKB48なのだ。
しかし、コロナを境にAKB48は『NHK紅白歌合戦』への出場を3年連続で逃し、CD売上も往時の半分以下となっている。もちろんそれでも、堂々たるセールスを上げていることに変わりはないわけだが、今のメンバーたちの心の内はどうなのだろうか。そんな疑問に答えてくれたのが、昨今公開されたAKB48YouTube公式チャンネルの動画だった。
■今年2月、AKB48YouTube公式チャンネルに公開された刺激的な2本の映像
今年2月26日、「#AKB48_0227」なるティーザーがアップされた。その冒頭、画面に映し出されたSNSコメントの辛辣さに面食らう。「AKB48カラオケでよく歌ってたなー」「時代は変わった」「懐かしい」…これでもかというくらい、AKB48を過去のアイドルとして捉えている発言が続き、本当に公式映像なのかと疑うほどだった。次の瞬間、滑走する1台の自転車をカメラが追い始める。フードを目深に被っていて顔がよく見えないが、その“誰か”は秋葉原を出発し、東京ドームや東京タワーを横目に、渋谷交差点を走り抜け原宿にたどり着く。自転車が竹下通りに入ったところでその映像は終わった。
翌日に公開されたもう1本の映像「#AKB48_022721_61stシングル0426リリース」で、ユニバーサルミュージックグループの会長兼CEOであるルシアン・グレンジ氏から、レーベル移籍を歓迎する旨のコメントが流れ、前日のティーザーが、長く所属していたレコード会社「キングレコード」から、「ユニバーサルミュージック／EMI Records」への移籍であったことがファンに知らされた。自転車を滑走させていたその人が、メンバーの本田仁美であったことも。
なかなか刺激的な2本の映像から、移籍を機に、さらなる高みを目指したい、そんな並々ならぬ意欲と覚悟を感じ取れた。果たしてファンはどう受け止めているのか。自らを「平成のアイドル」と自嘲するAKB48に対して、どんな感情を抱いているのか。コメント欄を読むと、冷静に状況を受け止めつつも、「これから何が起きるのかワクワクする」とグループの新たな船出にエールを送る声が大半を占め、妙に感心させられた。「もがいているAKB48が好き」そんなファンに支えられているのだ。
そして数週間後に公開された「【AKB48】61stシングル「どうしても君が好きだ」選抜発表ドキュメンタリー」。内容を知らされないまま集められたメンバーたちにいきなり移籍が告げられる。間髪入れずに、移籍第1弾となる61枚目のシングルの選抜メンバー16名の発表が始まる。名前を呼ばれたメンバーは、1人、また1人と神妙な面持ちで前方に並ぶ。伝統を守りながらも“新風を吹き込むこと”を課せられた彼女たちは、コロナ禍で長いトンネルの中にいた。移籍とともにリリースされるシングルは待ったなし、新しいAKB48を見せなければならない、そんな責任の重さを感じているように見えたのは、私だけではないだろう。なぜ、喜びを爆発させないのか？ 選抜メンバーたちの「AKB48を守りつつ、新しいAKB48を外部に発信していきたい」という言葉に、固い表情に。苦悩の深さを見た思いがしたのだが…、それから10日も経たぬうちに公開されたミュージックビデオ（MV）で、それは杞憂であったことに気づかされた。
■郷愁を誘う青春の1コマ「どうしても君が好きだ」映像から伝わってくるメンバーの本気度
「どうしても君が好きだ」は、疾走感のある爽やかで伸びやかな楽曲だ。作詞はこれまで同様に、秋元康氏が手掛け、作曲は音楽ユニット“ナスカ”が担当している。AKB48ならではの世界観とは、「僕」と「君」との永遠に終わらない青春の情景とでも言えばいいだろうか。同じ体験をしているわけではないのに、どこか既視感のある青春の1コマが描かれており、そこが郷愁を誘う。その“郷愁”が今作には感じられるのだ。センターを務めるのは、59thシングル表題曲「元カレです」以来2度目となる本田仁美。ドラマパートで、ダンスパートで、グループをしっかりまとめ上げる存在感は見事だ。そして、AKB48に加入後1年も満たない17期（グループの歴史を感じる）研究生3名、佐藤綺星、平田侑希、山崎空が加わり、瑞々しいパワーをさく裂させている。
MVの舞台は学校。制服姿のメンバー16名が、実際の学生時代の経験や特技・イメージをリンクさせた設定となっており、教室・図書室・放送室で過ごした学校生活の1シーンが描かれている。何か吹っ切れたような、清々しい表情がまぶしい。ファンの反応も「気づいたら口ずさんでいる」「AKBらしい」「新しい風が吹いた」と好反応。早々と前作の視聴回数を超えていることに加え、コメント数の多さからも興奮の度合いの高さがわかる。
そして、ファンが何よりもメンバーの本気度を感じているのが、MVから1ヶ月を経たCD発売日に公開されたプラクティクス動画ではないだろうか。サビの「印結びダンス」や16人のフォーメーションダンスのキレの良さ。1人ひとりの気合と心意気が、映像から痛いくらいに伝わってくるのだ。
ファンならずとも分かる。何かが変わった。おそらくAKB48のメンバーたちもその手ごたえを感じているはずだ。そんな強い印象を残す、今回の「どうしても君が好きだ」の仕上がり。アイドル長寿時代に入った今、その先頭を走るグループの1つとしての気概を持ち、道なき道をどう切り開いていくのか、がぜん興味が湧いてきた。「恋するフォーチュンクッキー」「ヘビーローテーション」と、誰もが知る人気曲を持つグループだけに、新生AKB48には是非、そのレパートリーを増やしてほしい。その可能性は十分にあるはずだ。
■作品情報
AKB48 61stシングル
「どうしても君が好きだ」Type A【初回限定盤】
2023年4月26日（水）発売
【CD】
M-1「どうしても君が好きだ」All Stars
M-2「寝たふり」お料理選抜デザート部
M-3「サヨナラじゃない」AKB48 チーム8
M-4「どうしても君が好きだ」（Instrumental）
M-5「寝たふり」（Instrumental）
M-6「サヨナラじゃない」（Instrumental）
【DVD】
・「どうしても君が好きだ」Music Video
・「寝たふり」Music Video
【歌唱メンバー】
★「どうしても君が好きだ」選抜メンバー ※全Type収録
大西桃香、大盛真歩、岡部 麟、小栗有以、小田えりな、柏木由紀、倉野尾成美、佐藤綺星、千葉恵里、平田侑希、本田仁美、向井地美音、村山彩希、茂木 忍、山内瑞葵、山崎 空
★「寝たふり」お料理選抜デザート部 ※全Type収録
石綿星南、岩立沙穂、岡部 麟、小林 蘭、篠崎彩奈、福岡聖菜、山邊歩夢
★「サヨナラじゃない」AKB48チーム8 ※TYPE-A収録
上見天乃、歌田初夏、大西桃香、岡部 麟、奥原妃奈子、小栗有以、小田えりな、川原美咲、行天優莉奈、倉野尾成美、坂川陽香、坂口渚沙、下尾みう、清水麻璃亜、高岡 薫、高橋彩音、高橋彩香、徳永羚海、永野芹佳、橋本陽菜、服部有菜、左伴彩佳、藤園 麗、本田仁美、山田杏華、吉川七瀬、吉田華恋
【初回限定盤 封入特典】
・応募抽選シリアルナンバー券1枚
※山崎空の崎は「たつさき」
※高橋彩音、高橋彩香の高は「はしごだか」
■解散することのないアイドルグループAKB48 今のメンバーたちの心の内は？
かつてアイドルの寿命は短かった。とくに女性アイドルは短命だった。しかし、2000年代に入り、モーニング娘。やAKB48のような、メンバーチェンジを繰り返して新陳代謝を行い、解散することのないアイドルグループが生まれた。前出のAKB48のシングル1位記録は、そういったスタイルをファンが受け入れたことの表れであり、アイドルシーンが音楽シーンにすっかり根付いた証であると言えるだろう。
多くの人が名前を認知し、強固なファンダムを有するグループに加入することは、一気に大きな注目を集めるという意味でアドバンテージはあるが、一方で、常に過去と比較され続け、高い水準の成果を求められるという負荷がかかる。安定路線を選べば飽きられ、かといって冒険しすぎれば反発を招く。リリースの度に成長した新しい姿を見せて、いかにファンを刺激し続けることができるか。言うは易しく行うは難し。しかし、それを続けてきたのがAKB48なのだ。
しかし、コロナを境にAKB48は『NHK紅白歌合戦』への出場を3年連続で逃し、CD売上も往時の半分以下となっている。もちろんそれでも、堂々たるセールスを上げていることに変わりはないわけだが、今のメンバーたちの心の内はどうなのだろうか。そんな疑問に答えてくれたのが、昨今公開されたAKB48YouTube公式チャンネルの動画だった。
■今年2月、AKB48YouTube公式チャンネルに公開された刺激的な2本の映像
今年2月26日、「#AKB48_0227」なるティーザーがアップされた。その冒頭、画面に映し出されたSNSコメントの辛辣さに面食らう。「AKB48カラオケでよく歌ってたなー」「時代は変わった」「懐かしい」…これでもかというくらい、AKB48を過去のアイドルとして捉えている発言が続き、本当に公式映像なのかと疑うほどだった。次の瞬間、滑走する1台の自転車をカメラが追い始める。フードを目深に被っていて顔がよく見えないが、その“誰か”は秋葉原を出発し、東京ドームや東京タワーを横目に、渋谷交差点を走り抜け原宿にたどり着く。自転車が竹下通りに入ったところでその映像は終わった。
翌日に公開されたもう1本の映像「#AKB48_022721_61stシングル0426リリース」で、ユニバーサルミュージックグループの会長兼CEOであるルシアン・グレンジ氏から、レーベル移籍を歓迎する旨のコメントが流れ、前日のティーザーが、長く所属していたレコード会社「キングレコード」から、「ユニバーサルミュージック／EMI Records」への移籍であったことがファンに知らされた。自転車を滑走させていたその人が、メンバーの本田仁美であったことも。
なかなか刺激的な2本の映像から、移籍を機に、さらなる高みを目指したい、そんな並々ならぬ意欲と覚悟を感じ取れた。果たしてファンはどう受け止めているのか。自らを「平成のアイドル」と自嘲するAKB48に対して、どんな感情を抱いているのか。コメント欄を読むと、冷静に状況を受け止めつつも、「これから何が起きるのかワクワクする」とグループの新たな船出にエールを送る声が大半を占め、妙に感心させられた。「もがいているAKB48が好き」そんなファンに支えられているのだ。
そして数週間後に公開された「【AKB48】61stシングル「どうしても君が好きだ」選抜発表ドキュメンタリー」。内容を知らされないまま集められたメンバーたちにいきなり移籍が告げられる。間髪入れずに、移籍第1弾となる61枚目のシングルの選抜メンバー16名の発表が始まる。名前を呼ばれたメンバーは、1人、また1人と神妙な面持ちで前方に並ぶ。伝統を守りながらも“新風を吹き込むこと”を課せられた彼女たちは、コロナ禍で長いトンネルの中にいた。移籍とともにリリースされるシングルは待ったなし、新しいAKB48を見せなければならない、そんな責任の重さを感じているように見えたのは、私だけではないだろう。なぜ、喜びを爆発させないのか？ 選抜メンバーたちの「AKB48を守りつつ、新しいAKB48を外部に発信していきたい」という言葉に、固い表情に。苦悩の深さを見た思いがしたのだが…、それから10日も経たぬうちに公開されたミュージックビデオ（MV）で、それは杞憂であったことに気づかされた。
■郷愁を誘う青春の1コマ「どうしても君が好きだ」映像から伝わってくるメンバーの本気度
「どうしても君が好きだ」は、疾走感のある爽やかで伸びやかな楽曲だ。作詞はこれまで同様に、秋元康氏が手掛け、作曲は音楽ユニット“ナスカ”が担当している。AKB48ならではの世界観とは、「僕」と「君」との永遠に終わらない青春の情景とでも言えばいいだろうか。同じ体験をしているわけではないのに、どこか既視感のある青春の1コマが描かれており、そこが郷愁を誘う。その“郷愁”が今作には感じられるのだ。センターを務めるのは、59thシングル表題曲「元カレです」以来2度目となる本田仁美。ドラマパートで、ダンスパートで、グループをしっかりまとめ上げる存在感は見事だ。そして、AKB48に加入後1年も満たない17期（グループの歴史を感じる）研究生3名、佐藤綺星、平田侑希、山崎空が加わり、瑞々しいパワーをさく裂させている。
MVの舞台は学校。制服姿のメンバー16名が、実際の学生時代の経験や特技・イメージをリンクさせた設定となっており、教室・図書室・放送室で過ごした学校生活の1シーンが描かれている。何か吹っ切れたような、清々しい表情がまぶしい。ファンの反応も「気づいたら口ずさんでいる」「AKBらしい」「新しい風が吹いた」と好反応。早々と前作の視聴回数を超えていることに加え、コメント数の多さからも興奮の度合いの高さがわかる。
そして、ファンが何よりもメンバーの本気度を感じているのが、MVから1ヶ月を経たCD発売日に公開されたプラクティクス動画ではないだろうか。サビの「印結びダンス」や16人のフォーメーションダンスのキレの良さ。1人ひとりの気合と心意気が、映像から痛いくらいに伝わってくるのだ。
ファンならずとも分かる。何かが変わった。おそらくAKB48のメンバーたちもその手ごたえを感じているはずだ。そんな強い印象を残す、今回の「どうしても君が好きだ」の仕上がり。アイドル長寿時代に入った今、その先頭を走るグループの1つとしての気概を持ち、道なき道をどう切り開いていくのか、がぜん興味が湧いてきた。「恋するフォーチュンクッキー」「ヘビーローテーション」と、誰もが知る人気曲を持つグループだけに、新生AKB48には是非、そのレパートリーを増やしてほしい。その可能性は十分にあるはずだ。
■作品情報
AKB48 61stシングル
「どうしても君が好きだ」Type A【初回限定盤】
2023年4月26日（水）発売
【CD】
M-1「どうしても君が好きだ」All Stars
M-2「寝たふり」お料理選抜デザート部
M-3「サヨナラじゃない」AKB48 チーム8
M-4「どうしても君が好きだ」（Instrumental）
M-5「寝たふり」（Instrumental）
M-6「サヨナラじゃない」（Instrumental）
【DVD】
・「どうしても君が好きだ」Music Video
・「寝たふり」Music Video
【歌唱メンバー】
★「どうしても君が好きだ」選抜メンバー ※全Type収録
大西桃香、大盛真歩、岡部 麟、小栗有以、小田えりな、柏木由紀、倉野尾成美、佐藤綺星、千葉恵里、平田侑希、本田仁美、向井地美音、村山彩希、茂木 忍、山内瑞葵、山崎 空
★「寝たふり」お料理選抜デザート部 ※全Type収録
石綿星南、岩立沙穂、岡部 麟、小林 蘭、篠崎彩奈、福岡聖菜、山邊歩夢
★「サヨナラじゃない」AKB48チーム8 ※TYPE-A収録
上見天乃、歌田初夏、大西桃香、岡部 麟、奥原妃奈子、小栗有以、小田えりな、川原美咲、行天優莉奈、倉野尾成美、坂川陽香、坂口渚沙、下尾みう、清水麻璃亜、高岡 薫、高橋彩音、高橋彩香、徳永羚海、永野芹佳、橋本陽菜、服部有菜、左伴彩佳、藤園 麗、本田仁美、山田杏華、吉川七瀬、吉田華恋
【初回限定盤 封入特典】
・応募抽選シリアルナンバー券1枚
※山崎空の崎は「たつさき」
※高橋彩音、高橋彩香の高は「はしごだか」
コメントする・見る
関連写真
2023/05/19
