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THE KEBABS・佐々木亮介&田淵智也が深掘る新作EP「人生を通して言いたいテーマにすごく近い」

 4人組ロックバンド・THE KEBABSが15日、5曲入りCDとワンマンライブの映像をパッケージした最新EP『幸せにしてくれいーぴー』をリリースした。

最新EP『幸せにしてくれいーぴー』への思いを語るTHE KEBABS・佐々木亮介&田淵智也

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 佐々木亮介(Vo&Gt/a flood of circle)、新井弘毅(Gt/ex. serial TV drama)、田淵智也(Ba/UNISON SQUARE GARDEN)、鈴木浩之(Dr/ex. ART-SCHOOL)の音楽的瞬発力を活かした今作。ORICON NEWSではこのほど、佐々木と田淵の2人に接触し、同作が生み出された経緯とこだわりについて聞いた。

最新EP『幸せにしてくれいーぴー』をリリースしたTHE KEBABS

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■“THE KEBABSらしさ”を提示するバンドマンとしての“反射神経”

――凝ったアレンジで魅せた前作『セカンド』を経て、今回は昨年8月の24時間配信番組『THE KEBABSの日』で制作された3曲や、『OTODAMA'22 〜音泉魂〜』の前日に作られた「ともだちのうた」など、バンドの瞬発力と反射神経で作り上げられた作品になりました。

【佐々木】そもそもTHE KEBABSは、「隙間時間にも遊びでバンドがやりたい」っていう欲張りさんたちの集まりだから(笑)、ライブアルバムでデビューしたし、そこからライブをやりまくろうと考えていたんです。でも、コロナ禍でライブが飛んじゃって、「じゃあスタジオにこもって曲を作ろう」と切り替えた結果、前作『セカンド』の感じになったんですよ。今回はその反動ってわけじゃないけど、24時間で3曲作ったり、新井(弘毅/Gt)さんが体調不良でフェスに出られなくなったときに、急きょ3人で「ともだちのうた」を作ったといった意味では、確かに反射神経で作った側面もありますね。中でも、「ライブをやるなら新曲を作ろう」っていう田淵さんの反射神経がものすごかった。そこで出てきたものに対して、またメンバーが反射神経で対応していったので、今まで以上にTHE KEBABSらしさが素直に出たと思います。

【田淵】僕が曲を作るとき、THE KEBABSでもUNISON SQUARE GARDENでも楽曲提供でも、「その人に合った曲を作る」という部分は変わらないんです。ただ、THE KEBABSの場合は「スタジオで適当にセッションしてたら曲ができちゃった」というのもOKで。

【佐々木】簡単に作ってはいるんだけど、『THE KEBABSの日』に「かわかわ」を作ったとき、田淵さんのすごさを感じましたね。夜中に何となくテーマを決めて曲を持ち帰ったんだけど、翌朝集まったときに、田淵さんが眠そうな目をこすりながら「Dメロは6/8拍子かな」って言い出して。当初はずっと4/4拍子だったんですよ。でも、Dメロを6/8拍子にした瞬間、曲が一気にキャッチーになった。それって、本当に毎日サボらず、ストライクゾーンを目がけて投げ続けているピッチャーだからこその閃き、反射神経だと思うんですよ。もう…油断も隙もないなと(笑)。

【田淵】演奏しているとひらめくんですよ、「ここはこうした方がもっと面白くなるかな」って。そうしたひらめきは新井くんや浩之(鈴木/Dr)さんにもあって、誰かがアイデアを出すとそれをあまり精査せずに、「いいね!」ってみんなが乗っかっていくんです(笑)。

【佐々木】すぐに褒め合う(笑)。

THE KEBABS・佐々木亮介

THE KEBABS・佐々木亮介

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■ひらめきを礎に 作曲工程の中に潜り込む“ナメんなよ”の精神

【田淵】そういう意味で印象に残っているのは「ゴールデンキウイ」。最初にシンプルなリフを作って、それを基に展開していく曲の構成になるかな…と想像していたら、新井くんがポロっと「このリフだけでいくのがよくない?」って。それに乗っかったら、ブレイク明けに浩之さんからスネアを連打するアイデアも出てきたりして、放っておくと誰かから何かが出てくるんです。それが面白くて。

【佐々木】プレッシャーのない状況から生まれてくる4人の作家性があるから、作業的にはパッと作られていくんだけど、「ナメんなよ」っていう要素があちらこちらに散りばめられていると思います。

【田淵】「THE KEBABSを抱きしめて」のAメロとBメロの歌詞なんて、1時間もかからずに佐々木が書いたものだし、「かわかわ」も佐々木が1日で書き上げた歌詞。どうやったら反射神経で“凍ったゼリー”なんてワードが出てくるのか、そのセンスにすごく感動しましたね。

【佐々木】そこはTHE KEBABSで鍛えられた部分かな。THE KEBABS自体、勢いで始めた最初の頃と今とでは全然違っていて。スタジオで『セカンド』をみっちり作った時間を経た今だから、ひらめきとは言っても、「こうした方が面白い」っていうところに到達できる反射神経のレベルが随分と上がっている気がするんです。しかも、「かわかわ」で一番重要なのは、“ずっきゅん”ってワードを俺じゃなくて浩之さんが出してきたこと。普段ならそんなことを言い出さなさそうな人から「“ずっきゅん”ってどう?」って(笑)。新井さんは新井さんで、ギターソロをお願いすると露骨にイヤそうな顔をするのに、「THE KEBABSを抱きしめて」のソロなんか、ライブでもしっかり音源と同じメロディーをなぞっていて、「結構気に入ってんじゃん」って思ったり(笑)。

――そうやってお互いの秘めたセンスを引き出し合うのもTHE KEBABSの面白さなんですね。佐々木さんは今回、田淵さんのどんなところを引き出せたと感じていますか?

【佐々木】前に田淵さんと一緒に作った「ラビュラ」っていうバラードがあって、自分で言うのもアレですけど…名曲なんですよ(笑)。そのときの動機が「BPMの速い曲がたくさんあったからバラードを」って感じだったんで、「今後バラードを作る機会はあまりないかな」と思ってたんです。ところが、『OTODAMA'22 〜音泉魂〜』に新井さんが出られなくなって、一度はバンドの出演自体を取りやめようかという話にもなったんですけど、3人で出ようと決めた直後に「じゃあ新曲でしょ」って田淵さんからこの曲のデモが届いて。これだけシンプルなコード進行のバラードって、たぶん田淵さんはTHE KEBABS以外では書かないと思うし、「2曲目のバラードが来た!」ってすごくうれしかったですね。ただ、デモではサビしか歌詞がなくて「AメロとBメロはよろしく」っていうパターンだったんですけど、新井さんのこともあったし、ようやくフェスができるになった状況に思うところも多々あったので、歌詞はわりとすんなり書けました。

【田淵】その歌詞が本当にすぐ書いたとは思えないほどよくて。

【佐々木】田淵さんが作ったサビのコード進行がエモすぎて、歌詞はなにを書いてもいける感じだったから、「これはもうプリンまで抱きしめてくれそうだな」っていう感じで歌詞を書いて、懐の深い曲になりました。

THE KEBABS・田淵智也

THE KEBABS・田淵智也

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■「誰でもできるんだから、みんなやればいいじゃん!」――初期衝動を思い出させる5曲の魅力

――本当に5曲とも、実にバンドの面白さやバンドの楽しさが凝縮されていますね。その中で、バンドキッズたちにコピーをオススメするなら?

【佐々木】全曲オススメだけど、「THE KEBABSを抱きしめて」で合唱部をモチーフにしたミュージックビデオを撮ったとき、この曲って合唱曲だったんだと思ったんです。だから、歌いたいギタリストやベーシストの人は、サビを歌えるチャンスです(笑)。あと、ベースがカッコいい曲なら「ゴールデンキウイ」。作曲をしている人なら、「かわかわ」をコピーしてもらえると「えっ、ここで!?」っていうところで出てくる6/8拍子のキャッチーさ、その神髄がわかるはず。

佐々木のメインギターはGretsch製6120 SHP Brian Setzer Signature Hot Rod。厳選されたメイプル・ボディー&ネック+エボニー指板が生み出す上質なサウンドに加え、1ボリューム+ピックアップセレクターというシンプルなコントロール部も特徴 (C)ORICON NewS inc.

佐々木のメインギターはGretsch製6120 SHP Brian Setzer Signature Hot Rod。厳選されたメイプル・ボディー&ネック+エボニー指板が生み出す上質なサウンドに加え、1ボリューム+ピックアップセレクターというシンプルなコントロール部も特徴 (C)ORICON NewS inc.

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【田淵】そう言われると、確かにTHE KEBABSの曲って、自分が曲を作れるようになった瞬間の“気づき”が詰まっているのかもしれません。僕も昔、曲ってどう作ればいいかわからなくて、職人や達人が作るものだと思ってたんですよ。でもいろいろやっているうちに、「このコードとこのコードで曲が作れるんだ」とか、「ゴールデンキウイ」みたいなリフを延々と繰り返していると、なんとなくメロディーみたいなものが浮かんで、それを乗せれば曲になるんだって、曲作りの“からくり”に気付ける瞬間があるんです。そういう感覚をすごく思い出させてくれる作品かもしれないですね。だから、僕はデカい声で「音楽は誰でも作れるよ」って言いたいんですよ。ちょっと大きな話になるけど、それって僕が人生を通して言いたいテーマにすごく近いんです。「誰でもできるんだから、みんなやればいいじゃん!」って。別に音楽に限った話じゃなくて、「なぜか自分はこれができちゃうんだよね」っていうものは、その人の人生の宝物なんです。それが僕の場合は作曲だったんだなって、『幸せにしてくれいーぴー』の5曲を振り返って、改めてそう感じました。

佐々木のアンプはRoland製JC-120 (C)ORICON NewS inc.

佐々木のアンプはRoland製JC-120 (C)ORICON NewS inc.

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【佐々木】今って、アカデミックに構築していく音楽や、あえて全部をパソコンで作るようなアーティストがすごく増えたじゃないですか。そういう曲が増えれば増えるほど、シンプルなインディーズバンドがアメリカやイギリスのチャートに突然入ってきたり、スカスカ感でヨレヨレ感のある音楽がチャーミングに聴こえる時代にはなってきている気がする。ただ、そのためにはバランスが大事かなとも思っていて。THE KEBABSは4人とも音を決めるのが早くて、ステージ上の音のバランスがすごくいいんです。

佐々木の足下には、BadCat製「Siamese Drive」(オーバードライブ)とtc electronic製「polytune」(チューナー)のみが配置されている (C)ORICON NewS inc.

佐々木の足下には、BadCat製「Siamese Drive」(オーバードライブ)とtc electronic製「polytune」(チューナー)のみが配置されている (C)ORICON NewS inc.

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――バランスがいいとは?

【佐々木】演奏し始めたら主張の塊のようなメンバーなのに、みんながお互いの音をよく聴いているんです。それは、「相手がこう弾いたら自分はこう反応しよう」っていう、バンドの楽しさを骨の髄まで知っているからこそ、それができる状況を作っているんですよ。そこは、初めてバンドをやる人でも長年やってる人でも、とても大事なことだと思います。

田淵のTHE KEBABSでのメインベースはFender製Road Worn 50's Precision Bass。アルダーボディー+メイプルネックという王道的な仕様に加え、永年使い込まれたかのようなキズや塗装の剥がれ、パーツの変色などを再現したレリック加工や、アノダイズドピックガードの採用などが特徴 (C)ORICON NewS inc.

田淵のTHE KEBABSでのメインベースはFender製Road Worn 50's Precision Bass。アルダーボディー+メイプルネックという王道的な仕様に加え、永年使い込まれたかのようなキズや塗装の剥がれ、パーツの変色などを再現したレリック加工や、アノダイズドピックガードの採用などが特徴 (C)ORICON NewS inc.

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【田淵】ベースに関して言えば、THE KEBABSの曲はフレーズが簡単だからこそ、浩之さんのデカいドラムさえちゃんと聴こえていれば、そこに乗っかるだけでロックバンドをやっている感覚になれます。逆に言えば、それは「THE KEBABSだとベースで主張する必要がない」という安心感でもあって。しかも、浩之さんのキックとスネアがジャストなところにいてくれるので、極論、ベースの音が聴こえなくても、ドラムに乗っかるだけでバンドをやってる楽しさを感じられる。そこはポイントかもしれません。

田淵のアンプはAguilar製AG700とAmpeg製SVT810AVの組み合わせ (C)ORICON NewS inc.

田淵のアンプはAguilar製AG700とAmpeg製SVT810AVの組み合わせ (C)ORICON NewS inc.

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――そのバンドアンサンブルを、7月から始まるツアー『THE KEBABS 熱熱』で是非とも堪能させてもらいたいです。佐々木さんは今、a flood of circleの新譜『花降る空に不滅の歌を』をリリースしてツアーの真っ只中ですし、田淵さんも4月12日にUNISON SQUARE GARDENのアルバム『Ninth Peel』をリリースしてすぐにツアーを始めるなど、お2人とも今年もライブ三昧の1年となりそうですね。

田淵のエフェクターボードは、RUPERT NEVE DESIGNS製「RNDI」(D.I.ボックス)、EDEN製WTDI(プリアンプ)、KORG製「Pitchblack」(チューナー)、Hartke製「Bass Attack」(プリアンプ)、EBS製「MULTI COMP」(コンプレッサー)というラインナップ (C)ORICON NewS inc.

田淵のエフェクターボードは、RUPERT NEVE DESIGNS製「RNDI」(D.I.ボックス)、EDEN製WTDI(プリアンプ)、KORG製「Pitchblack」(チューナー)、Hartke製「Bass Attack」(プリアンプ)、EBS製「MULTI COMP」(コンプレッサー)というラインナップ (C)ORICON NewS inc.

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【佐々木】だけどTHE KEBABSは、ライブが本当に楽なんですよ。何の準備もいらなくて。a flood of circleやUNISON SQUARE GARDENだと、さすがにそういうわけにはいかないけど(笑)。

【田淵】THE KEBABSのライブの日って、気分的にはオフ日なんですよ。「ここまで仕事を頑張ればオフ(THE KEBABSのライブ)だ!」って(笑)。それが7月に控えているので、めちゃくちゃ頑張り甲斐があります。そうそう、a flood of circleの新譜、めっちゃよかったよ。

【佐々木】うれしいなぁ。俺もUNISON SQUARE GARDENの新譜をすごく楽しみにしているんですよ。そうやって、お互いちゃんとやっていないとね。THE KEBABSだけやってたら、ただただ余生を楽しんでいる人になっちゃう(笑)。だけど、人生一度しかないなら、THE KEBABSをやらない人生はちょっと損だなって思うし、『幸せにしてくれいーぴー』を聴いてくれたリスナーにも、同じように感じてもらえたらうれしいですね。

文:布施雄一郎

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  • 最新EP『幸せにしてくれいーぴー』をリリースしたTHE KEBABS
  • THE KEBABS・佐々木亮介
  • 佐々木のメインギターはGretsch製6120 SHP Brian Setzer Signature Hot Rod。厳選されたメイプル・ボディー&ネック+エボニー指板が生み出す上質なサウンドに加え、1ボリューム+ピックアップセレクターというシンプルなコントロール部も特徴 (C)ORICON NewS inc.
  • 佐々木のアンプはRoland製JC-120 (C)ORICON NewS inc.
  • 佐々木の足下には、BadCat製「Siamese Drive」(オーバードライブ)とtc electronic製「polytune」(チューナー)のみが配置されている (C)ORICON NewS inc.
  • 佐々木のボーカルマイクはHURE製SM58だが、豊洲PI公演時にはワイヤレス仕様のハンドヘルドトランスミッターが装着されていた (C)ORICON NewS inc.
  • THE KEBABS・田淵智也
  • 田淵のTHE KEBABSでのメインベースはFender製Road Worn 50's Precision Bass。アルダーボディー+メイプルネックという王道的な仕様に加え、永年使い込まれたかのようなキズや塗装の剥がれ、パーツの変色などを再現したレリック加工や、アノダイズドピックガードの採用などが特徴 (C)ORICON NewS inc.
  • 田淵のアンプはAguilar製AG700とAmpeg製SVT810AVの組み合わせ (C)ORICON NewS inc.
  • 田淵のエフェクターボードは、RUPERT NEVE DESIGNS製「RNDI」(D.I.ボックス)、EDEN製WTDI(プリアンプ)、KORG製「Pitchblack」(チューナー)、Hartke製「Bass Attack」(プリアンプ)、EBS製「MULTI COMP」(コンプレッサー)というラインナップ (C)ORICON NewS inc.
  • 田淵のステージ足下には、MXR製「M80 Bass D.I.+」(プリアンプ)とJHS Pedals製「The Clover」(プリアンプ)という2台のペダルのみ (C)ORICON NewS inc.

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