VR・メタバース活用で新たなライブ体験提供する「Virtual harevutai プロジェクト」

 去る3月26日、ボーカロイド・GUMIと音街ウナが、DMMのVRメタバースサービス「DMM Connect Chat」内に存在する未来型仮想ライブ劇場「Virtual harevutai」でVRライブに挑戦した。この一文だけではピンとこないという人も、「ボカロの3Dキャラクターがメタバースでライブを行った」と言い換えれば、俄然興味が湧いてくるのではないだろうか。同ライブは、ポニーキャニオン、DMM.com(以下、DMM)、キュー・テックの3社が協業で立ち上げたメタバース・ライブ事業「Virtual harevutai プロジェクト」ローンチ・イベント。メタバース元年とも言われる今年、エンターテインメント界では何が起こり、同プロジェクトは何を生み出そうとしているのだろうか。

プロジェクトの舞台となるのはVRメタバースサービス「DMM Connect Chat」

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■ポニーキャニオン、DMM、キュー・テックが協業 メタバース上で様々なイベントを創生

 ポニーキャニオンは2019年、CGライブが行える透過スクリーンやライブ配信設備を常設した未来型ライブ劇場「harevutai」を東京・池袋にオープンした。このリアル劇場のバージョンアップ的な位置づけとして、インターネット上に仮想的に作られたVR空間すなわちメタバース上に「Virtual harevutai」を再現。そこで音楽ライブを開催するだけでなく、様々なイベントを創生し、新しいライブ体験を提供しようというのが、今回立ち上げた「Virtual harevutaiプロジェクト」の骨子だ(なお、ここでは現実さながらのCG空間を体感できる技術をVR、それにより生み出される空間をメタバースとして表記する)。

 発足のきっかけをポニーキャニオン執行役員エグゼクティブプロデューサー・浅見真人氏は説明する

「コロナ禍でオンラインライブという新しい表現が生まれましたが、あくまでも2Dモニター画面を見る受動的な行為で、ライブの臨場感や、友達と一緒にペンライトを振るような共有感は希薄です。一方、VRは能動的に自らが動いて、アーティストや仲間と同じ空間を共有できるもので、没入感が圧倒的にリアル。特にコロナ禍で思うようにリアルライブが行えないなか、お客様にライブの臨場感を体験してもらいたいという想いと、VRのアドバンテージが合致したのがきっかけです」

写真左から DMM.com VR 事業部事業部長・古山パトリック千秋氏、ポニーキャニオン執行役員エグゼクティブプロデューサー・浅見真人氏

写真左から DMM.com VR 事業部事業部長・古山パトリック千秋氏、ポニーキャニオン執行役員エグゼクティブプロデューサー・浅見真人氏

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 同プロジェクトの核といえるVR空間のシステム開発・設計を担うのがDMMで、VRライブを配信したり、ユーザーが視聴を楽しんだりするには、同社のVRメタバースサービス「DMM Connect Chat」を利用する。昨年1月より先行公開していたが、今年3月に大幅にリニューアルした正式版のサービスがスタート。VRゴーグルだけでなく、スマートフォンやWindows/Macでの視聴も可能となっている。「このVR空間で最初に取り組みたいと考えたのが音楽ライブでした」と語るのは、DMM.com VR 事業部事業部長・古山パトリック千秋氏。

「ただ当社は音楽ライブを制作、プロデュースするスキームを持ち合わせておらず、アライアンスできるパートナーを探す中で、ボカロPなどのクリエイターが数多く所属するエグジットチューンズ・レーベルをお持ちのポニーキャニオンさんにお声がけしました」

 VR空間を作るDMM、音楽ライブ企画・制作を行うポニーキャニオンの2社に、長年にわたり様々なデジタル映像コンテンツ製作をサポートしてきた総合ポストプロダクション会社のキュー・テックが加わるという、個々の企業の強みを活かした役割分担により、このプロジェクトは運営されている。

■空間の共有感は想像以上にリアル メタバース上で生まれる新たな形のコミュニティ

 では、肝心のVRライブはどのように行われるのだろうか。冒頭で紹介したボーカロイドのVRライブ『SPACE DIVE !! 2022 -GUMI & UNA Virtual Reality LIVE-』は、フォトスキャンにより忠実に再現されたバーチャルなライブハウス『Virtual harevutai』のステージ上で、GUMIと音街ウナの3Dキャラクターが歌って踊るというもの。視聴者はチケットを購入してVR空間に入り、ライブハウスの好きな位置に移動し、ライブを鑑賞することができる。その空間には他の視聴者(アバター)も多数来場しており、音声やチャットで視聴者同士のコミュニケーションも可能となっている。

今年3月にボーカロイド・GUMIと音街ウナが行ったVRライブ (C)MTK/INTERNET Co., Ltd./PONY CANYON INC.

今年3月にボーカロイド・GUMIと音街ウナが行ったVRライブ (C)MTK/INTERNET Co., Ltd./PONY CANYON INC.

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 実際に体験してみると、会場内を自由に移動でき、みんなで一緒にペンライトを振ったり、他の視聴者(アバター)の様子を見たりと、空間の共有感は想像以上にリアルで楽しいものだった。また、3DCG映像自体は、既にゲーム分野などで磨き上げられている技術のため、3Dキャラクターのパフォーマンスにはまったく違和感がない。昨年末に行われたジャスティン・ビーバーのメタバース・オンラインライブ『Justin Bieber - An Interactive Virtual Experience』では、本人をモーションキャプチャーした3DCGが使われていたが、現状はまだ、リアルな人物の実写3DCGは表現方法が固まり切っていない段階に感じたのに対して、アニメやボカロというコンテンツはVRと親和性が高く、3DCGキャラクターとしてきちんと成立しやすい印象を得た。

「例えば歌い手さんや、VTuberとの相性もすごくいいと思います。昨今、顔出ししていないアーティストも散見されます。そういう方々が、キャラクターの姿のままでステージに立ったり、遊びに来たりできる場所がVR空間なんです」(古山氏)

3Dキャラクターのステージを視聴者(アバター)は好きな位置に移動して鑑賞できる (C)DMM.com LLC

3Dキャラクターのステージを視聴者(アバター)は好きな位置に移動して鑑賞できる (C)DMM.com LLC

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 3DCG映像を作るツールは、ゲーム業界などでシェア率の高いUnityを使用しているため、『DMM Connect Chat』でVRライブを実施する際に特別なツールが必要になることはほぼなく、決められたフォーマットでデータを作れば、音楽ライブだけでなく、トークショー、展示会など、どのようなコンテンツでも配信可能だ。ある意味自由度が高いゆえに、VRならではの演出をどれだけできるかが重要になってくるだろうと浅見氏は言う。

「我々は会場として『Virtual harevutai』を用意していますが、必ずしもここを使う必要はなく、海の中やジャングルでのライブだってできる。つまり演出の仕方は無限なのです。GUMIのライブでは、『Virtual harevutai』から始まりましたが、次第に壁がなくなって、最後は宇宙空間になって、フロアの端にいくと足元に地球が見えるといったVR空間の演出を行いました」

 さらに終演後に、会場ロビーで視聴者同士が「この曲がよかった」「あの演出はすごかった」などライブの感想を言い合っていたという。今やインターネットやSNS上だけのつながりを持つ友達関係というのは珍しくなくなったが、今後メタバース上で、これまでにはなかった新たな形のコミュニティが生まれてくることは間違いないだろう。その輪の中にアーティスト本人がアバターで加わるといったことも、リアルの世界では難しい面が多々あるが、VR空間であれば敷居はずっと低くなりそうだ。

ペンライトを振ったり他の視聴者の様子を見たり空間の共有感は想像以上にリアル(C)DMM.com LLC

ペンライトを振ったり他の視聴者の様子を見たり空間の共有感は想像以上にリアル(C)DMM.com LLC

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■3Dバーチャル領域に生活空間を作る 新たなエンタメ作りはメタバースコンセプト実現に向けた第一歩

 このように、エンターテインメント界に明るい話題を提供してくれるメタバースではあるが、現状はまだまだ黎明期。あらゆるポジティブな可能性を秘めている一方で、さまざまな点で、まだ最適解は見出されていない。VRライブに話を限定しても、内容面では今後どんどん新しいアイデアが生まれてくるであろうし、現状は製作費の相場もあってないようなものだ。また、VR空間を最大限に楽しむために必要なVRゴーグルも、「例えるなら、今はガラケー以前、肩掛け式携帯電話という印象。まだまだ発展する余地があると思う」(古山氏)とのことだ。

 もちろん、技術は間違いなく進化するものであり、VR関連デバイスの小型化・低価格化は時間の問題。そうなった時に、どんなエンターテインメントをVR空間で実現できるのか、それを今から考え、チャレンジしていく価値は十分にある。

 最近、メタバースというワードがあちらこちらで飛び交い、インターネット上の仮想空間としてさまざまなメタバースが立ち上がっている。オンラインでのゲームやチャットの世界では既にメタバースが存在しており、そこでの文化形成とルール作りのために、4月18日には「メタバース推進協議会」も発足した。ただ古山氏によれば、メタバースという言葉が本来意味するところは「人間が常にデジタルデバイスと共に過ごせるようになり、デジタルの3Dバーチャル領域に生活空間を作ろうという壮大なコンセプト」だという。

自由度が高いVR空間ではどんな演出を行うかが重要 (C)MTK/INTERNET Co., Ltd./DMM.com LLC

自由度が高いVR空間ではどんな演出を行うかが重要 (C)MTK/INTERNET Co., Ltd./DMM.com LLC

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「現状はそのコンセプトの一端として、ゲームを核としたメタバース空間や、仮想通貨やNFTを使った経済圏を作ろうとするメタバース空間など、様々なメタバースが生まれています。その中で『Virtual harevutai』プロジェクトは、ユーザー同士が交流できるコミュニティサービス+アルファの空間として、音楽ライブ領域のメタバースを生み出そうというもの。これが成功してユーザーが増えれば、この空間でお店を出して商売できたり、新しいサービスを展開したりすることも可能となります。そういった個々の空間がつながっていき、将来的にメタバースという大きなコンセプトを実現できる。そうした世界を構築する第一歩でもあるんです」(古山氏)

 コンセプトの実現、すなわちメタバースの完全体は、莫大な資金を投入したとしても、まだ10年以上の歳月がかかると言われるほど容易なものではない。しかし、15年前に生まれたスマートフォンやYouTubeを、今は誰しもが当たり前のものとして利用しているように、いずれはメタバースというバーチャル空間が当たり前のものとなるだろう。その時にどんな新しいエンターテインメントを作り出せるのか。未来への挑戦はすでに始まっている。

文・布施雄一郎

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  • プロジェクトの舞台となるのはVRメタバースサービス「DMM Connect Chat」
  • 写真左から DMM.com VR 事業部事業部長・古山パトリック千秋氏、ポニーキャニオン執行役員エグゼクティブプロデューサー・浅見真人氏
  • 今年3月にボーカロイド・GUMIと音街ウナが行ったVRライブ (C)MTK/INTERNET Co., Ltd./PONY CANYON INC.
  • 3Dキャラクターのステージを視聴者(アバター)は好きな位置に移動して鑑賞できる (C)DMM.com LLC
  • ペンライトを振ったり他の視聴者の様子を見たり空間の共有感は想像以上にリアル(C)DMM.com LLC
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