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SURFACE椎名慶治、ニューアルバム「and」セルフライナーノーツを公開

 本日、5thオリジナルアルバム「and」をリリースした椎名慶治が、アルバム全曲のセルフライナーノーツを公開した。楽曲紹介だけでなく、制作経緯や裏話を織り交ぜ、椎名慶治らしい口調で、アルバムを聴きながら楽しめる内容となっている。

5thアルバム「and」をリリースした椎名慶治

5thアルバム「and」をリリースした椎名慶治

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■1:Knock and Opened
 今回のアルバムの幕開けを、2曲目に収録されている「アイムリアル」にするには、いきなりテンションMAXで飛び出した感が強く(笑)、もっとそこに向かう期待感、そして、今のコロナ禍を打破したい思いなど、次曲(アイムリアル)の開放感を、更に盛り上げられるような短い曲が欲しいなと。
 共同プロデューサーでもある、宮田‘レフティ’リョウ(以下:レフティ)に持ちかけたのがキッカケで生まれた曲です。サンプリングは、ほぼレフティのスタジオのドアであり(笑)、それをスマホにマイクを繋げて録音。今の録音機器って凄いですよねぇ…簡易的なのに綺麗に録れる。更にパソコン上で、エディットしてリズムにしていくって感じでした。擬似ストンプ的な感覚と言いますか、それ自体は真新しい事ではなく、20年以上前にSURFACEでもやっている事です。そして、最後に鍵、ロックが外れてドアが開く。
 短いながら、歌詞が無くも何か伝わる曲になった気がしますね。

■2:アイムリアル
 流れ込むように始まる開放感。先行デジタルリリースで聴いてくれた方もいらっしゃると思います。デジタルリリースバージョンとはマスタリングが違う、言わばリマスタリングバージョンになっています。よくリマスターって呼ばれるアレです。1曲目を通して聴く「アイムリアル」は、また違った表情を見せてくれたのでは?なんて。アルバムを見据えて、山口寛雄(以下:ヤマ)と最初に作った曲でした。
 この曲の原石(歌詞がまだないデモ)が生まれた事により、「良いアルバムが作れるかも知れない」って感じるほどの手応えがありましたね。サウンドメイクに関しては、ギターが和音で鳴らないと言う部分が今(現代)っぽさを感じますね。僕の中には無い概念でした。23年間音楽をやっていて初めての事だったので。ギターってコードを掻き鳴らすイメージがあるのですが、この曲は2本以上の弦が同時に鳴らない。なのに、物足りなさを感じさせないアレンジ。音を足すのではなく間引く、それは楽器の数だけではなく、弦の本数にまで及ぶなんて!王道のようで新しいアイムリアルの世界を是非。

■3:一旦紅茶飲む
 デモテープをレフティと作る時に、ギターではない何かでリフ(反復フレーズの意味)を作ろうと試行錯誤した結果、選ばれた楽器は、ファンクやソウルでそこそこ使われるクラビネット。それを、レフティがおもむろに弾き、そこに2人でメロディーを乗せていく。 実は展開が変わっていて、【Aメロ、Bメロ、Cメロ、サビ】が1番だとすると、2番では【Aメロ、Cメロ、サビ】であり、Bがない。と思えば、2番終わりでBが出てきて、最後のサビ終わりもBメロで終わる。だけど、聴き馴染みは違和感ないんじゃないか?と。変にまとまった感のある曲。一貫して、曲全体を支えるクラビネットのリフが、多分そうさせている縁の下の力持ちなんだろうと分析。その辺りを意識して聴いてみて欲しいなと。

■4:DOUBT!!(Album Ver.)
 昨年末2020年のバースデーライブで披露されたバージョンが、限りなくこの形に近い。その時のライブアレンジが、イヤにカッコよく聴こえて、アルバムもこのバージョンにしたいなってところからそれを実現した。デジタルリリースでは、椎名ソロ初のギターレスに挑戦するなど、積極的な楽曲だったんですが、アルバムでは音数も増えて、真新しさよりも王道なブラックミュージックテイストになったなと。是非デジタルリリースされたバージョンと、聴き比べて楽しんでもらえればです。特に、ヤマのベースに注目して聴くと面白いです。ずーっとウネウネうるさいです(笑)。最高か。

■5:「ここは ぶきや です」
 1番今回のアルバムリリースに至るまでの間に、皆さんがモヤモヤしたタイトル曲じゃないかなぁって思います(笑)。一度、普通にシリアスなカッコいい形で完成に向かっていましたが、歌詞を全て書き直す事になり、そこからアレンジも歌詞に寄せて今の形になっていきましたね。ギターレスな曲の予定で進んでいた経緯もあった気がしますが、結局、7弦ギター(普通のギターでは出せない音階の音が出るギターって思ってくれれば)まで飛び出す形になりました。ふざけてるのか、本気なのか、そのどちらも共存出来ている稀有な曲なんじゃないかと。真骨頂な気がしています。
 コレが好きと言ってくれるなら、もっと面白い事が色々出来そうだなぁって思えるサウンドでしたね。流石のレフティマジックでした。

■6:I and I
 サビに行くまでは、シリアスな無骨な感じがするんですが、サビが爽やかに聴こえてて、その噛み合わせが、メロディーとしてはなんの違和感も無い不思議な曲だなぁって自分でも思います。メロディーメイカーの二人が、せーの!って作るからこそ生まれる感覚でしたね。1番記憶に残っているのは、Aメロでのシンベ(シンセベース)の音のみで歌うレコーディング。もう地獄でした(笑)。何かレコーディングの時だけは、ガイドとなるコード(ピアノとかで)を鳴らしてくれれば良いものを、一切ナシ(笑)!、更にシンベが、音階の分かりやすい音で鳴ってくれていればまだマシなんですけど、音階が掴みづらい倍音の混ざった音で悪戦苦闘。今俺が歌ってるキーで合ってるよな?と、自問自答して歌っている感じですね。皆さんが聞いているその音だけで歌っています。もしカラオケとかに入ったら歌えるんでしょうか(笑)。そしてラッパーとの絡みがカッコ良い曲でもありますよね。まだ一度もお会いした事ないんですけど(笑)。なんやかんや、苦手みたいに読み取れるかも知れませんが、アルバム1、2を争う好きな曲です。

■7:GOOD GIRL
 デモテープはグッズ購入者にプレゼントされていたので、新曲ながらも知っている方が多い曲。いつものアカペラで作った曲の1つです。一人で曲を作る時はアカペラなんです。少し変則的部分(Bメロの事)もありながらも、サビの歌謡曲なアプローチは、一度聴いたら覚えられるぐらい分かりやすいんじゃないかな?と。素直に分かりやすいモノを目指してました。アレンジも、洋楽的なアプローチで、音の間引き方が秀逸ですね。この辺の王道的なメロディーすらも、今の色に染めてしまうレフティーのアレンジ力は尊敬に値します。あまり深く考えず、気持ち良く聴いてもらえればです。

■8:「そんなに好きなら好きって言っちゃえば?」
 この曲も、スタートはアカペラで作りました。ライブで初披露したのは、2年前ぐらいかなと。そのライブがアコースティックライブだったので、それをバンドライブで披露する為、レフティにアレンジをお願いして、更にブラッシュアップしたのが、今回のアルバムに収録された訳です。大きく変更はされていませんが、ロック寄りだった元のテイストよりファンク寄りになったかな?って気はしています。ドラムのレコーディングは、2020年の5月ぐらいで、ベースやギターは2021年の6月ぐらいだったか…。ずいぶんタイムラグのあるレコーディングになってしまいました(笑)。

■9:アイクルシイ
 ヤマとデモテープを作っている時に、「ボーカルに優しくない時代」の話をしていました。ボーカロイドと生の歌声が混在する時代が来たせいだとは思うんですが、ブレス(呼吸)を感じさせない曲が世に多くなりました。そんな中でヤマと、「時代に乗っかってメロディー(字数)多めの曲を作ろう」ってなりまして、作るまでは良かったです。素敵なメロディーだなぁって思いましたし。歌ってみたら…地獄でした。感情豊かに、メロディアスに、ブレスもなかなか出来ない中で歌い上げる。ライブで歌うのが、もっとも嫌な曲に仕上がりました(笑)。アレンジがまた秀逸で、エレキギターはナシ、アコースティックギターが出たり入ったり、ピアノが出たり入ったり、間引く事でボーカルが更に際立つアレンジに。
 最後のボコーダー(擬似的にハモリを作る機械と思ってもらえれば)と俺で終わるラストまで、延々切ない世界を堪能出来ます。きっとアルバム人気曲になると思います。

■10:それだけ
 もう3年以上前に作った曲で、流石に3年前のアレンジのままで、アルバムに収録するのは時代にそぐわないって思いまして、レフティーに相談しました。その結果、アルバムに違和感なく馴染むサウンドに仕上がったなって思います。注目すべき点は、基本的にメロディーを頭から歌う形に対して、レフティのバッキングは、全体的にシンコペーション(頭を前倒しで弾くクイとも呼ばれる演奏)しています。ハッキリ言ってしまえば、メロディーとバッキング(その中でも主にピアノですね)がチグハグなんです。その噛み合わせの悪さが生むビートが絶妙なんですよ。コレはとっても難しい話になってしまうので、ここでは書ききれないですけど、ボーカルとピアノに注目して聴いてもらえると、如何にピアノがボーカルを無視して演奏しているのかが伺えると思います。卓越した匠の技だと思いますね。あ、違和感はないと思いますが、歌い辛いですよ(笑)?

■11:KI?DO?AI?RAKU?(Album Ver.)
 昨年、応援歌を作ってほしいと社長に言われて作った曲です。あ、アカペラで(笑)。コロナ禍が蔓延して不安になり始めた頃でしたし、音楽で少しでも不安が和らぐのならって、想いを込めて作っていた事を覚えています。前作までのアルバムの延長線上にあるような、俺らしいサウンドで元気に歌い上げるそんな曲で、コロナ禍が明けたら、みんなで騒げるようなパートも入れ込み完成させました。ですが、そこから1年を経て、アルバムに収録する時には、そのらしさが他の曲達と面白いぐらいに混ざらず(笑)、最終的にアルバムの最後に収録する事で、エンドロール的な役目を担ってもらう事になりました。
 過去の「俺らしさ」が、これ程までに混ざらない今作が作れた事に、そんな部分でも気付かされたりしました。

 今回は、ニューアルバム「and」発売と同じタイミングで、2011年に発売されたソロ1stアルバム「RABBIT-MAN<リマスター盤>」をオリコンミュージックストアで独占配信がスタート。より繊細かつよりクリアな音源を、改めて楽しめるようになっている。

<記事構成 / 丸下史洋>

関連写真

  • 5thアルバム「and」をリリースした椎名慶治
  • 5thアルバム「and」のジャケット写真
  • 1stアルバム「RABBIT-MAN<リマスター盤>」のジャケット写真
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