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演歌歌手・竹島宏、デビュー20周年シングルで見せた新たな境地

 デビュー20周年を迎えた竹島宏。アニバーサリーイヤーにふさわしく、今年1月に発表したコンセプトアルバム『Stories』、6月に発表したNHK BS時代劇主題歌「向かい風 純情」に続き、8月25日には早くも新曲「プラハの橋」(作詞:山田ひろし 作曲:幸耕平 編曲:坂本昌之)をリリース。8月28日に43歳の誕生日を迎える竹島のバースデーシングルともなる本作は、東ヨーロッパの古都・プラハ舞台に、男女の別れの情景を哀歓たっぷりに歌い上げた悲恋の歌。新曲に込めた想いを聞いた。

デビュー20周年を迎えた竹島宏

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■新たな竹島宏像を確立するために歌唱法の変更にもチャレンジ

――歌手生活20年目の今年は、怒涛のリリースラッシュですね。

 「プラハの橋」は、作曲の幸耕平先生が、僕の歌手生活20周年のお祝いとして作ってくださいました。楽曲を聴かせていただいたところ、あまりにも良い曲で、しかも前作の「向かい風 純情」とは異なるタイプの曲だったこともあり、なるべく早い時期に発表したいと思いました。ちょうど8月が誕生月だったので、僕自身が関係者にバースデーシングルとして出したいと掛け合ったところ、トントン拍子でリリースすることができました。

――「プラハの橋」は、2016年の「夜明けのカラス」以来の5年ぶりの幸先生の楽曲です。

 幸先生がまずおっしゃったのは、「そろそろ竹島も大人の歌手になってもらいたい」と。歌謡曲の世界において竹島宏の立ち位置を考えたときに、僕にしか歌えない新たな世界観を作らなくてはいけないということで作ってくださったのが、この「プラハの橋」です。先生がこの曲で確立されようとしている新たな竹島宏像は、ドラマチックな世界を表現できる歌い手というイメージでしょうか。これまでの僕の曲では、ありそうでなかったメロディーも使われ、竹島宏にさほど興味のなかった方々もふと耳を傾けてしまうような、そんな曲が生まれたと感じています。レコーディングでは、これまでの20年間で積み重ねてきた歌唱法は意識せずに、歌い方自体に新しさを感じられるようになっているかをポイントとしました。シンプルに歌詞を届けるための歌い方を追求し、歌詞カードがなくても聴き取れる歌に仕上がったと思います。思い切ったチャレンジですが、こう歌えばもっとうまくなるんだというワクワクする気持ち、今までやったことのない新しい歌い方を実現できた喜びが大きかったです。

――今後のキャリアの転機となる作品になるかもしれませんね。

 歌い手として大きく成長させてくれる歌だと感じています。最近では珍しいくらい物語の中の陰影がはっきりと見え、かつ余白を楽しめる曲になっていると思います。文芸作品に例えると、短編小説というよりは長編小説でしょうか。聴いた皆さんがいろいろなことを想像して、それぞれのドラマを作っていただけるような歌の世界なので、何回も噛みしめてじっくりと味わっていただきたいですね。本来、歌は皆さんの心の中で育てていただくものと僕は思っているので、本当の意味での歌の姿をよく表している作品、自信をもってみなさんに聞いてくださいと大きな声で言える1曲になりました。

――山田ひろし先生による歌詞の世界はとても詩的な雰囲気です。

 今までに出合ったことのないタイプの美しい歌詞というのが最初の印象でした。終盤に相手の幸せを願って別れるシーンが出てくるのですが、あまりにも美しすぎて、もっとアクの強さのようなものがほしい、そうでなければ聴いてくださる皆さんの心のひだに分け入っていくことはできないのではないかと感じました。そこで、山田先生に主人公の男性の心の叫びとして、恋人の女性に対してストレートに表現する言葉がほしいとお願いして、男性の傷ついた思いを吐露するフレーズを加えていただきました。しかもそのシーンで彼は泣いているんです。そこで美しい歌詞に血が通ったような思いがして、これでこの歌の世界は決まった!と思いました。表現者としては、ファンの方に幸せになってくださいと僕が叫んでいるようなシーンにすることもできますし、そういう意味でもとても満足しています。

■コロナ禍でのさまざまな経験や発見は僕をタフにしてくれた

――聴いてくださる方にはどんなことを感じ取っていただきたいですか?

 まず声をじっくり味わっていただきたいですね。特にサビでは今回、F#まで使っています。切迫感のある雰囲気を出すためにもいつもより半音上げて歌ってみてはと幸先生から提案されました。この曲で声や表現力を磨いていければ、数年先にはさらにドラマチックな歌唱ができるようになるはずです。僕は情報量の多いタイプの声質なので、扱い方ひとつで歌が重くなったり軽くなったり、微妙なさじ加減で歌のノリが変わってくるようなところがあります。ただ、自分でちょっと重たいなと思う声も、ファンの皆さんは味わいとして受け止めてくださっているようなので、もっと上手くコントロールできるようになれば、大きな武器になるのではないかと思っています。そういう意味で磨けば光る部分と認識してトレーニングを続けていきたいです。

――カップリング曲の「君の明かり」、「心の近くで」(ともに作詞:及川眠子 作曲:幸耕平 編曲:坂本昌之)は、「プラハの橋」とはずい分雰囲気が変わりますね。

 この2曲は100%、僕とファンの皆さんの絆を歌った歌です。コロナ禍で昨年からお会いする機会も限られていますが、時折、生のステージをご覧いただく際の皆さんの目の輝きが忘れられなくて…。皆さんとの心の絆を歌いたいと考えていたところ、先生方がそういう作品を用意してくださいました。「心の近くで」は、編曲の坂本昌之さんにお願いして、聴いているだけで明るく楽しくなる豪華なアレンジになりました。作詞の及川眠子先生にもいくつかりクエストさせていただいたのですが、及川先生も「プラハの橋」の山田先生も、さらに良い作品にするために率直に意見を言ってくださいと、僕の思いと真摯に向き合ってくださいました。

――昨年からコロナ禍の状況で、アーティスト活動も制約があったと思います。

 昨年9月に行った岡山、大阪での2日間連続のコンサートは、スタッフやお客様用の感染予防対策の荷物を持ち込むために東京から車で移動し、かなりしんどい状況でした。狭い車中での長時間移動で体力的にも不安を抱えてステージに立ったのですが、この状況下で駆けつけてくださったお客様にこの瞬間だけでも楽しんでいただかなくてはという気持ちが燃え上がり、楽しいステージになったと思います。この2年間、“人って素敵だな”と思うような人情を感じる瞬間を数多く味わい、良い勉強をさせていただきました。また、ライブ配信も定期的に行ってきましたが、ここでも学ぶことが多かったです。ライブ配信ではご覧になる方は冷静に歌を聴かれていますので、ライブ会場なら勢いで許される表現も、配信の画面で見ると「あれ?」となってしまう。どのような状況でも歌手として冷静な表現をしつつ、そのうえで生のライブ会場のような熱いテンションでお届けする。歌の表現のバランスを養うという意味でも、非常に鍛えられました。

――7月にはデビュー20周年記念コンサートを故郷の福井で開催されました。会場のフェニックス・プラザは、小学生の頃に坂本冬美さんのコンサートを見て、歌手を志すきっかけとなったゆかりの地だそうですね。

 フェニックス・プラザで20周年記念のコンサートを行うことはかねてからの念願でしたので、このコロナ禍の状況で実現できて感謝しています。会場を盛り上げようと応援してくださった地元の関係者の方々や、故郷で歌う宏の顔を見てみたいというファンの方々も大勢いらっしゃいました。皆さんの思いをかみしめながら歌わせていただいたので、普段とは違う緊張感もありましたが、充実感と幸福感に包まれたコンサートとなりました。

――次の20年に向けて、将来の夢を聞かせてください。

 海外公演ができるといいですね。日本語が分からないお客様の前で、現地のミュージシャンと一緒にコンサートができる実力をつけていきたいです。たとえ言葉が通じなくても、声だけでお客様を魅了できるのが、歌手として本物だと思いますから。

文・桑原雄太

【シングル「プラハの橋」】
■8月25日発売
■発売:テイチクエンタテインメント
《収録曲》
【Aタイプ】「プラハの橋/君の明かり」TECA-21043  定価¥1,350
 M1. プラハの橋(作詞:山田ひろし 作曲:幸 耕平 編曲:坂本昌之)
 M2. 君の明かり(作詞:及川眠子 作曲:幸 耕平 編曲:坂本昌之)
 M3. プラハの橋(オリジナルカラオケ)
 M4. 君の明かり(オリジナルカラオケ)
【Bタイプ】「プラハの橋/心の近くで」TECA-21044  定価¥1,350
 M1. プラハの橋(作詞:山田ひろし 作曲:幸 耕平 編曲:坂本昌之)
 M2. 心の近くで(作詞:及川眠子 作曲:幸 耕平 編曲:坂本昌之)
 M3. プラハの橋(オリジナルカラオケ)
 M4. 心の近くで(オリジナルカラオケ)

竹島宏プロフィール
福井県福井市に生まれる。もともと唱歌やクラッシックを好んでいたが、小学5年生の時に曾祖母と行った坂本冬美のコンサートを観て感動し、歌手になることを決意。その後、明治大学経営学部入学とともに上京。学生時代に出場したカラオケの審査会で審査員をしていた作詞家の久仁京介との出会いがきっかけで現在の所属事務所で電話番としてアルバイトを始める。久仁京介より歌のレッスンを受け2002年に「いいもんだ いいもんだ」でデビュー。17年に発売されたデビュー15周年記念作品の「月枕」は自身初の”ゴールドディスク”に認定される。今年は1月に初のコンセプトアルバム『Stories』、6月にはNHK BS時代劇『大富豪同心2』主題歌「向かい風 純情」を発表。デビュー20周年を記念した”竹島宏20thカーニバル”を1年を通じて展開し、ファンに様々な音楽を届けるべく活動している。

関連写真

  • デビュー20周年を迎えた竹島宏
  • 昨年9月に岡山、大阪で2日間連続コンサートを敢行
  • 20周年記念シングル「プラハの橋」Aタイプ
  • 20周年記念シングル「プラハの橋」Bタイプ
  • 昨年9月に岡山、大阪で2日間連続コンサートを敢行
  • 昨年9月に岡山、大阪で2日間連続コンサートを敢行
  • コロナ禍でライブ配信にも意欲的に取り組む

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