flumpool、試練を乗り越えた再始動後の変化 ドラマ主題歌ににじむ生々しい肉声

 2020年に入り、テレビから聴こえてくるflumpoolの音楽を自然と耳にした。その曲は「素晴らしき嘘」で、吉高由里子主演のドラマ『知らなくていいコト』(日本テレビ系)のエンディングテーマとして、物語に寄り添うように流れていた。彼らはデビュー当初から数々のドラマ、映画とのタイアップ曲を担って来たバンドなので、それ自体は驚くことではなかったのだが、曲の宿すメッセージが以前にもましてリアルに、まるで生々しい肉声のように伝わってきたのは衝撃だった。その変化の原因はおそらく、flumpoolというバンドが2017〜2018年に経験した試練と、それを乗り越えた2019年の再始動以降、一連の活動にある。

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■活動休止を余儀なくされた全国ツアー中の突然のできごと

 デビュー10周年イヤーを目前に控えいよいよ加速…という矢先の、2017年12月3日、山村隆太(Vo)が歌唱時機能性発声障害であることが判明。8度目の全国ツアー『flumpool 8th tour 2017「Re:image」』開催中のできごとだった。12月5日に活動休止を発表、やむなくツアーは中止となる。それは相当にショッキングな、悲しい知らせだった。山村は治療に専念。メンバーは短期留学したり、個人練習にいそしんだりと、突然訪れた空き時間をそれぞれに過ごしていたと聞く。

 やがて山村は、スタジオでメンバーらと音を鳴らすことを求めるようになり、何時から何時までと予め決めることなく、思うまま自由にセッション。その時間は何よりの良薬となった。声が出ない、思うように歌えないという苦しみを誰にも言えず、長くひとりで抱え込んでいた山村の心は、次第にほぐれていく。良きヴォイストレーナーとの出会いもあり、彼らは再始動への助走を開始した。

 しかし、そのタイミングは山村のコンディション次第であったため、会場や日時を決めても実現に至らないことも…。数度の辛抱強い調整を経て、2019年1月13日、ついに再始動。地元・大阪の天王寺公園でゲリラライブを敢行し、2月からファンクラブツアーを、5月からは全国ホールツアーを開催すると発表した。1月13日はバンドの結成記念日だった。

■一度歩みを止めた経験が結実した楽曲「HELP」

 復活全国ホールツアーのタイトルは『flumpool 9th tour「Command Shift Z」』。<ひとつ前の動作に戻って、もう1回進む>という意味を持つショートカットキーの記号を用いたユニークなネーミングである。前ツアーで中止となってしまった広島、鳥取、三重、福井でのいわばリベンジ・ライブを序盤で行い、5月22日、東京・国際フォーラム ホールAで本格リスタート。

 あの日、会場が大きな喜びと興奮に包まれた感触を今も昨日のことのように思い起こすことができる。夢に向かって自分を信じ前進すること、想いを真っ直ぐに届けること、といったポジティなメッセージを曲に乗せることの多かったflumpoolだが、一度歩みを止めた経験は、同日リリースの楽曲「HELP」として結実。

 メインコンポーザーである阪井一生(G)の曲に山村が歌詞を載せる、という従来の順番ではなく、山村がフロントマンとして発信したいメッセージをまずは心に強く思い描き、阪井とやり取りを重ねながら曲を練り、尼川元気(B)、小倉誠司(Dr)とともに鳴らしていく、というプロセスで生み出された、軽やかながらも力強い1曲である。彼らは弱音を吐かない優等生ではなくなったかもしれない。しかし代わりに、「助けてほしい」と“弱音”を吐くことができる本当の“強さ”を手に入れたのである。

■タイアップのシンクロニシティーが高まる2020年のflumpool

 完全復活を遂げた彼らは、2019年、12月30日には大阪城ホールにてワンマンを実施。そのステージで、2020年2月にシングルを、春には4年ぶりにアルバムをリリースすること、そしてアルバムを引っ提げた10度目の全国ツアーの開催を発表した。

 冒頭で述べた「素晴らしき嘘」は2月26日にリリースされるシングルの表題曲となる。山村はこの曲について、「『嘘に救われること』が日常にあったり、逆に『真実だけを追求して相手を追い詰めてしまうこと』もあると思います」とコメント。では、真実とは一体何なのか? 「ドラマとともにその答えを探していきたい」と結び、結論を明言していない。

 ここに感じるのも、「HELP」で“弱さ”を肯定的に描いたのと同様の、柔軟かつ誠実なスタンスである。強弱も善悪も、真実と嘘も、単純な二極に分けて語れるものでは決してなく、その間には無限のグラデーションが広がっている。「俺たちはこうだ!」と断言するタイプの強さではなく、曖昧で複雑な、だからこそ奥深くもある人間の心と向き合うような、しなやかな強さ。それを音楽に乗せてリスナーを鼓舞する訴求力。flumpoolはバンドとして一度立ち止まり痛みを味わい、そこから立ち上がるという体験からそれらを得たのだと推察する。

 アニメ『あひるの空』(テレビ東京系)のオープニング曲として書き下ろされたM2「ネバーマインド」も、「自分に負けない」をテーマとし、声が出なかった時期に山村が自身に言い聞かせていたリアルな言葉をモチーフにしたという。バンド・ヒストリーという実話と、タイアップするフィクションとのシンクロニシティーが高まり、リアリティと説得力を増しているのが2020年のflumpool。制作中のアルバムタイトルが『Real』だというのも、偶然とは思えない。彼らにとって真実とはどんな形、どんな色をしているのか? 春に聴こえてくる音と言葉に期待したい。
(文/大前多恵)

関連写真

  • 最新シングル「素晴らしき嘘」をリリースしたflumpool
  • 最新シングル「素晴らしき嘘」
  • 昨年末の大阪城ホール公演の模様 Photo by 渡邉一生
  • 昨年末の大阪城ホール公演の模様 Photo by 渡邉一生
  • 昨年末の大阪城ホール公演の模様 Photo by 渡邉一生

提供元:CONFIDENCE

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