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レコ大受賞&紅白で英語版披露、世界へ照準「パプリカ」はグローバルスタンダードになる?

「〈NHK〉2020応援ソングプロジェクト」によって生まれた「パプリカ」が、『第61回日本レコード大賞』でレコード大賞を受賞。平均年齢11.2歳での受賞は史上最年少の快挙となった。さらに『第70回NHK紅白歌合戦』にも2年連続で出場。Foorinと、英語版を歌うFoorin team Eのコラボレーションも話題をさらった。日本の児童たち魅了し、この曲とともに楽しげ歌い、踊る子どもたちの姿を全国各地で目にする機会が急増した2019年を経て、「パプリカ」は世界の子どもたちに届き始めている。

『第70回NHK紅白歌合戦』でパフォーマンスを披露したFoorin

『第70回NHK紅白歌合戦』でパフォーマンスを披露したFoorin

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■紅白では「パプリカ」のほか、英語詞の「paprika」も披露

 2019年12月31日に放送された『第70回NHK紅白歌合戦』では、「パプリカ -紅白スペシャルパージョン-」として、Foorinに加えて、「国境を超えて世界中のみんなと繋がってひとつになる」ことを目指し、新たに5人の英語ネイティブの子どもたちで結成された、Foorin team E全体のトップバッターとして登場。

 メインボーカルのもえのが笑顔で、「今日は日本語バージョンに加えてteam Eのみんなと『パプリカ』英語バージョンも歌います。皆さん、一緒に『パプリカ』を踊ってくださいね」とお願いすると、会場からは温かい拍手が送られた。

 イントロのリズムが流れると、客席からは自然と手拍子が鳴り始め、メンバーはステージ中央で手をつないでサークルつくると、クルクルと回転し、それぞれのポジションへ。はじけるような笑顔、元気いっぱいの歌声、キレキレのダンスを披露するメンバーを、後ろで見つめる他の出演者たちも笑顔で見守る。

 そしてサビに入ると、ステージの出演者、客席で見ていたラグビーW杯日本代表のメンバー(笑わない男・稲垣選手も一緒にダンス!)、さらに観客が全員で「パプリカダンス」。サビが終わり間奏に入ると、メンバーがステージ袖を見ながら手招き。冒頭でもえのが予告していた通り、team Eのメンバーが、松田聖子、MISIAらと手をつないで登場。ハンズクラップを促しながら、出演者やメンバー同士でハイタッチし、司会の綾瀬はるかが「ここからはFoorin team Eの皆さんが歌います。英語で『paprika』、世界に届け!」と紹介するとメンバー全員で、英語バージョンを歌唱。放送では、英語詞のテロップの下に日本語詞が入りなど、視聴者にもわかりやすくなっていた。

 英語パートが終わると、再び日本語バージョンに戻ったCメロでは、メンバーが会場のさまざまな場所へ移動。審査員席、ステージ後方、ラグビー日本代表のいる客席などでダンスし、ステージに戻る。大サビでは、会場が一つになってパプリカダンスを踊り、最後はメンバー全員がステージ中央で人差し指を上げ、決めポーズ。歌唱後には、最年長のひゅうがが、team Eのコールバンを抱きかかえたり、りりことエヴァンジェリンが肩を組み、手を合わせて花を作るなど仲の良さが垣間見える一面も。会場を一体化させる最高のパフォーマンスで、トップバッターの大役を果たした。

 このFoorin & Foorin team Eのパフォーマンスについて、音楽ライターの布施雄一郎氏は以下のように解説する。

「レコード大賞受賞の翌日、しかもトップバッターという最高のシチュエーションでの、出演者全員が一体となってのパフォーマンスは、「みんなと踊りたくなる」という、この曲の魅力を象徴していたように思います。なかでも、全員がサビで“パプリカダンス”をしていたように、分かりやすい決めポーズは、海外の動画世代にとっても真似をしたくなる大きなポイント。そのうえで、FoorinとFoorin team Eによるパフォーマンスを見ていると、日本人的な柔らかい踊りなら可愛いいし、キレのあるダンスだとカッコいいという、この曲が「誰でも踊れる」だけでなく、「いろんな民族のビート感にマッチする」という多様性も感じました。こうした「自分たちのパプリカ」が海外の人たちによってSNSや動画サイトで拡散されるようになれば、国境を超えて、この曲がより広がっていく可能性は十分にありえると思います」(布施氏)

■世界へ届き始めた「パプリカ」、ヨナ抜きは日本最大の輸出品

 「紅白」でのパフォーマンスで国境を越えて多くの人を魅了した「パプリカ」だったが、老若男女、国籍も問わず、多くの人を引き付ける要因には、この楽曲が童謡や演歌などで使用される「ヨナ抜き」音階で構成されている点も挙げられる。

 音楽プロデューサーの亀田誠治氏は「パプリカ」ついて、「タイトル名を歌う、サビ頭のメロディーが秀逸。このメロディーは日本人のDNAに深く刷り込まれた、邦楽・民謡由来のヨナ抜き音階からなっていて、耳馴染み、口馴染みが良く、このメロディーを歌うと、故郷に戻ってきて心が浄化されるような気持ちになる」と解説。やはり「ヨナ抜き」音階の効果を指摘している。

 そもそも「ヨナ抜き」音階とは、日本固有の音階で、西洋音楽の長音階に当てはめたときに主音(ド)から四つ目のファと、七つ目のシがない音階(ドレミソラ)のこと。民謡や童謡、演歌などで使用されており、日本人とって耳馴染みが良く、J-POPでも古くは、坂本九「上を向いて歩こう」、YMO「ライディーン」、近年では、国民的なヒットソングとなったAKB48「恋するフォーチュンクッキー」、星野源「恋」なども、「ヨナ抜き」音階が効果的に使用されている。

 この「ヨナ抜き」音階について、亀田氏はNHKで2013年に放送された『亀田音楽専門学校』内でも、「ヨナ抜きは日本最大の輸出品」と指摘し、「『ライディーン』は1979年にヨナ抜き音階のテクノで一世を風靡して、40年後、きゃりーぱみゅぱみゅ『つけまつける』で世界に進出している。日本人のアイデンティティを表明する上で、ヨナ抜きベースの音楽は欠かせない存在になっている」ともコメントしている。

■「パプリカ」はグローバルスタンダードになりえるか?

「最大の輸入品」ともいえる「ヨナ抜き」音階で構成された「パプリカ」。そして、今回の紅白では、東京五輪・パラ五輪を前に、「国境を超える」ことを明確に意識したFoorin & Foorin team Eによる「パプリカ(paprika)」がパフォーマンスされた。

 こうなると同じく「ヨナ抜き」音階を使用した「上を向いて歩こう」以来の世界ヒットも期待したくなる。音楽ライターの森朋之氏は、「パプリカ」のグローバルヒットの可能性について、以下のようにコメントする。

「YouTube、ストリーミングサービスの普及によって、世界の様々な地域の特性を活かした音楽が大きな注目を集めています。ラテン音楽のブームを作り出したJ.バルヴィン、K-POPの世界的ブレイクのきっかけとなったBTSはその好例。日本の伝統的な音楽のテイストを取り入れた『パプリカ(paprika)』が“欧米には存在しないエキゾチックな楽曲”として世界中のリスナーから注目される可能性は大いにあるでしょう。黒人、白人を含む子供のパフォーマンスも幅広く支持されるでしょうし、MVに“富士山”“日本舞踊”を取り入れたことも、“日本発”というイメージにつながっていると思います」(森氏)

 日本人のアイデンティティを示し、かつ、誰もがもつ「故郷の原風景」を想起させるメロディーと歌詞。加えて戦略的にも海外を意識した展開がスタート。2019年、全国へと浸透した「パプリカ」が、東京五輪・パラ五輪の開会式や閉会式でどのように使用されるかは不明ではあるが、両大会を契機に、今年、世界へと広がっていくことは大いに期待できそうだ。

関連写真

  • 『第70回NHK紅白歌合戦』でパフォーマンスを披露したFoorin
  • 米津玄師によって選ばれたFoorin team E Photo by Takako Noel
  • 英語ネイティブな5人組「Foorin team E」 Photo by Takako Noel
  • Foorin team Eの全編英語版「Paprika」ジャケット写真

提供元:CONFIDENCE

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