ボーカルグループでの活動後、2017年4月に無期限の活動休止を発表した荒井麻珠。令和元年初日の5月1日に2年間の充電期間を経て活動再開を宣言した。活動再開の第一弾としてオリコンミュージックストアでは新曲の独占先行配信がスタートした。8月にはソロデビューライブも決定しており、新曲やライブについて、ソロアーティストへの想い、更に充電期間中についてじっくり語ってもらった。
――令和初日でもある5月1日に、ORICON NEWSのYouTubeチャンネルでソロアーティストとしての活動開始を発表。どんな気持ちでこの日を迎えましたか?
【荒井】直前までは「早く発表したい!」という気持ちが強かったんですが、時間が迫ってくるにつれて緊張感が芽生えてきました(笑)。
――ご覧になる方の反応も気になったでしょうからね。
【荒井】はい。でも(当日開設した荒井麻珠としてのYouTubeチャンネルやTwitterの)フォロワーさんがどんどん増えていくのを見て、ちょっとだけ緊張がほぐれたというか。Twitterって、言葉や写真を通してその人のことを色々と知ることができじゃないですか。「この人のことを知りたい」「この人の言葉を聞きたい」って思ってくださる方もいらっしゃったのかなって考えると、その気持ちがすごく嬉しかったです。ありがたいなって。
――改めて、YouTubeのオフィシャルチャンネルやTwitterなどをいち早く開設された理由を聞かせてもらえますか?
【荒井】SNSで自ら発信していくのが、一番伝わりやすいかなと思ったんです。それに、ちょっとでも身近に感じてもらえることが重要なのかなって思ったので。今はTikTokやInstagram、公式LINEも始めていますが、まずは自分の歌声を待っていてくれた方がいらっしゃるかもしれないし、私自身も歌声を聴いてほしいとずっと思っていたので、最初にミュージックトレーラーをYouTubeにアップしたんです。
――その荒井麻珠オフィシャルチャンネルで公開されている「1st Music Trailer」では、いきなり7曲ものオリジナル曲が発表されましたよね。
【荒井】はい。活動休止中は、これからどういう歌を歌っていきたいかとか歌いたいかっていう、ソロとしてのイメージや方向性を固めながら少しずつトライしていたんですが、たくさんある楽曲の中で「まず届けたい!」と思ったのがあの7曲だったんです。
――あの7曲以外にも楽曲があるということは、この2年間、かなりのペースで音楽制作に没頭されていたんですね。
【荒井】やっぱり私にとっては、音楽を通して伝えることが一番だという思いがありましたから。
――活動開始をお知らせした動画の中では「いろんな刺激を受けたり、苦手なことにも挑戦した」というような表現をされていましたが、もう少し具体的に聞かせてもらえますか?
【荒井】まず音楽に関しては、これまで自分が歌ったことのないジャンルの曲に挑戦してきました。挑戦というか、もともとやってみたかった音楽にしっかり向き合ったというのが正しいかもしれません。いろんな音楽を聴くだけではなく、実際に声に出して歌うこともすごく自分の学びにつながりました。
あとは、ダンス。今まですごく苦手だったんですが、ソロのアーティストとしてのパフォーマンスということを考えると、目でも楽しんでいただけるようなライブ作りがしたいなと思うようになったので、そのためにも、まずは基本的なダンスができるようになりたいなと。ちょっとずつかもしれませんが、自分の中では成長できてるかなって思うところでもあります。
――かなりストイックにレッスンされたそうですね。
【荒井】ダンスのレッスンなんですが、ほぼ筋トレと体幹を鍛えていて(笑)。体の基礎を作るというところから入っているので、まさに自分の体が勉強してるなって感じでした(笑)。
――他にはどんなことを?
【荒井】ちょっと話が戻りますが、音楽面での具体的なスキルアップのためにも色々と学んでいました。これまでやったことがなかったんですが、コーラスを自分で考えたり、作曲をしたり。
――コーラスに関してはご自身の楽曲だけでなく、ももいろクローバーZの楽曲のコーラスアレンジとディレクションもされたんですよね。
【荒井】はい。これまで自分では出してこなかった色を引き出すことができて、すごく刺激になりましたし、勉強になりました。
――作曲に関しては?
【荒井】作曲はソロになってから興味が湧くようになって、教えてもらうようになったんです。作家さんの才能には到底叶いませんし、本当に難しいなとは思いますが、土台の音に対して自分が感じたメロディーやハモリを自由に乗せていくのがとても楽しくて。こんな風に自分で作って歌えるんだと思うと嬉しいし、やりがいも感じることができたんです。
――音楽に対する視野も広がりますね。
【荒井】はい。でも、作詞はやっぱり難しかった(笑)。言葉をメロディーに乗せて伝えるっていうのは、こんなに難しいんだなって実感しました。ゆくゆくは自分でもできたらいいなとは思いますが、今はまず「この人の歌詞が歌いたい」と心から思える、そして尊敬しているプロデューサーさんが作詞したものを歌いたいなと思っています。
自分が思っている自分と、他の人から見た自分の違いってあると思うんですが、プロデューサーさんが書く歌詞にはハッと気づかされるものがあったりして、すごく気持ちが入りやすいから。自分では見えなかった自分を知ることができるのはすごくありがたいし、それを歌えることが今とても嬉しいんです。苦手なことを含め、トライしてみて今の自分を知るというのも大切な学びだなと思いました。
――2年前、グループをやめる時に麻珠さんは「もっと色んなものを勉強して、自分を高めていきたい」とおっしゃっていましたが、その言葉どおりの日々が続いているんですね。
【荒井】経験したことないことばかりだったので、今もそうですが、周りの方からたくさんのことを学ばせていただいてます。
――では、グループとして活動した4年間を今麻珠さんはどんな風に感じていらっしゃいますか?
【荒井】自分の音楽は、全てあそこで作られたなと思っています。自分の、第一歩だったなって。グループとしての活動があったから今の自分があるし、たくさんのことを学べた4年間でした。勉強だらけでしたよね。路上ライブもやったことなかったし、アカペラで歌うということ自体そう。メンバーと一緒にハーモニーを奏でる気持ち良さにもそこで初めて気づきましたし、それまで自分からは聴かなかったし歌ってこなかった洋楽の魅力も、グループでの活動を通して知ることができました。
色んな場所で歌わせていただけたことも、自分にとってはすごく大きかったですね。私は小さい頃からソロとしての歌手を目指していたんですが、最初から1人で歌っていたら感じることができなかった音楽の楽しさを知ったし、1人だと見ることができなかった景色をたくさん見ることができたのは、グループとしての活動があったからだと思っています。
――なるほど。
【荒井】と同時に、こんなにも厳しいんだということも知りました。最初のオーディション期間、すごくシビアな世界なんだということを感じて、もっと頑張らなきゃ、負けたくないって強く思ったのを覚えています。それまでそんなシビアな部分を感じたことがなかったからというのもありますが、今思えば、たぶん漠然としてたんでしょうね。
――ソロの歌手になりたいという夢を持っていたとはいえ。
【荒井】はい。メンバーやスタッフさんが支えてくれていたからであって、自分1人の力では、精神的にも乗り越えられなかったと思います。そこはもう、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
――いくつの頃から、ソロの歌手になりたいと思っていたんですか?
【荒井】小学3年生からです。それまでは将来の夢として「ケーキ屋さんになりたい」って言ってたみたいなんですが(笑)、小3で絶対歌手になりたいって思って、小4から音楽スクールに通い始めました。はっきりとしたきっかけがあったわけではないんですが、逆に言うとそれくらい自然に音楽にのめり込んでいたんですよね。「物心ついた頃から」という表現はもっと小さい頃をさすんでしょうけど、私の場合はそこが物心ついた時期だったというか、人生の最初から今までずっと歌手を目指していたんだと思っています。
――ご両親も音楽が好きだったそうですね。
【荒井】はい。2人とも音楽が好きでよく聴いてたし、もともと母は歌手になりたいという夢を持っていたんです。だから私が歌手になってくれたらいいなって思っていたところはあるかもしれないけど、小学4年生の時にスクールで初めてちゃんと私の歌を聴いて、この子の応援をしたいって思ったらしいんですよね。私の歌声に、希望を感じてくれたみたいで。
――歌手になりたいと言ってたけど、そんなに人前では歌っていなかったんですか。
【荒井】そうですね。自分からガツガツ「聴いてください!」みたいなタイプじゃなかったし。あまり大きい声を出すということもしてこなかったので、レッスンを受けるようになって声量もグッと上がったんですよ。グループのオーディションもそうですが、本格的にレッスンを進めていく中で学んだことや成長できた部分はたくさんありますね。
――オーディションは小さい頃からたくさん受けてきたそうですね。
【荒井】母が色々と探してくれて、小学生の頃からいくつもいくつも受けて、いっぱい落ちてっていうのを何年も繰り返してきました。で、やっと通過したのがグループのオーディションだったんです。ソロとしてデビューすることを目指してはいたけど、ここまで一生懸命応援してくれた母の気持ちが嬉しかったし、ソロであってもグループであっても負けたくないっていう気持ちがどんどん強くなっていましたからね。だけど一番の根本にあるのは「歌が歌いたい」という気持ちだったので、素直にグループでも通用するような実力をつけたいと思ったし、先ほどの話に戻りますが、グループとしての厳しさや楽しさを感じながら活動を続けてきました。
――日本武道館でワンマンライブをやるという大きな目標も達成しましたね。
【荒井】グループ結成当初からの夢でしたが、そういう目標があると、今何をするべきかがわかってくると思うんです。どんなに大きな夢だとしても、目標を持つことはすごく大事だと実感しました。今もドームツアーがやれるくらいになりたいという夢を持っていますが、それはただ場所的にクリアしたいわけではなく、それだけの集客ができる実力をつけたいし、直接歌を届けられるライブというものをずっと大事にしていきたいと思っているからなんです。
――そのライブに対する考え方は、ソロアーティスト・荒井麻珠としての指針とも言えそうですね。
【荒井】実は人生で一度だけ、あるアーティストの方のライブを見て「あぁ、生きている」と思えたことがあるんです。その声や表情や動きを見ているだけで自然と涙が溢れてきて、これまでに味わったことがない感覚になったんですよ。そして、自分もこういうアーティストになりたいと思ったんです。これまで色んな方のライブを見て、生で聴く音楽の素晴らしさを感じてきたけど、自分の人生として受け止めるほどのライブは初めてで。
私はこれまで歌手として、アーティストとして、人の心を救えるような音楽を届けたいって言ってきたんですが、その感覚を自分自身が実感してしまったような感じでした。自分はこういう人になりたいんだって、改めて自分の芯を確信したんですよね。
――だから、自分の歌ってなんだろうとか、私が歌えることってなんだろうって考えることになったんでしょうね。
【荒井】グループはグループで出せる音楽の魅力があるけど、自分だから歌える歌を歌ってみたくなったんです。中学の時から一緒に頑張ってきたメンバー、その頃から応援してくださったみなさんの思いというのがあるのはわかっていましたが、自分のこれからの音楽人生を考えた時に、自分の中から湧き上がってくるものをしっかりと伝えたいという気持ちがすごく強くなっていったんです。
アーティストとして客観的に、そして冷静になって考えた上で決断をしました。寂しく思ってくださったファンの方もいるかもしれませんが、そこはソロとしてちゃんとお返しをしたいと思っているし、みなさんの心を震わせることができるような歌を届けられるアーティストになりたいなと思っています。
――まだ10代だったのに、人生の大きな波を超えたような感じですね。
【荒井】でもいい意味で、また1つ自分の“はじまり”を迎えられたような感覚です。もちろん自分の音楽人生の本当の意味でのはじまりはグループだったわけで、そこは一番大切に思っているところですが、その上でさらに新しい自分を見せていくという意味のはじまりでもあるかなと。
――その”はじまり”を告げるオリジナル曲を聴いた方の中には、あまりの新しさにびっくりした方も多かったんじゃないかなと思います。
【荒井】これはちょっと上手く説明ができないんですが、聴いていても歌っていても、<感情線>が動くような歌が歌いたいということをずっと思っていたんです。そこを、ソロの楽曲ではより強く出していけるかなというのはありました。あとはかっこいいジャジーな雰囲気のものもあったりして、声色とか表現の部分での新鮮さも感じてもらえたらなと思っているんですが。
――7月1日からは、オリコンミュージックストアで「薄暗くなった空が僕を包んでどうしようもない」が独占配信されるんですよね。
【荒井】はい。最初にもお話ししましたが、まずは自分の歌声を届けたいなという思いがあったので、この曲はアカペラで始まるんです。歌詞は聴いた人によって色んな解釈があるのかなと思いますが、私にとってこの曲は、自分が今まで内に秘めていたものというか、閉じ込められていたものが溢れ出てくるような感じがあったんですよね。
レコーディングの時も、この曲に宿っているものが強いからか、歌う自分の心がまず揺さぶられてしまって、地に足が着かないような感じになってしまったんです。曲の途中で涙が溢れてしまうほど入り込んでしまったんですが、求めていたのはそういうものだったし、それほどの曲をソロとしてのはじまりに歌えたことはすごく嬉しかったです。
――「Timing Clever」では、共作ですが作曲にも挑戦されていますね。
【荒井】この曲はコーラスのアレンジにもすごくこだわったんですが、アカペラをやっていたことがとても生かされているなと思うし、自分の強みにもなっているなと思いましたね。アカペラって1人で歌う美しさもあると思うけど、他の人の声を聴きながら「今すごくハマってる!」とか「共鳴してる!」っていうあの絶妙な感覚がすごく好きで。今回実際に自分でコーラスを積むにあたっても、これまで学んできたこととか体で感じてきたことがたくさんあったんだなって感じました。
――8月21日には初めてのワンマンライブも開催。オリジナル曲をフルで、しかもバンド編成で聴くことができるんですよね。
【荒井】そうなんです。緊張もするけど、「早くリハがしたいな」って今はワクワクする気持ちも。素晴らしいメンバーのみなさんと一緒にステージに立てるので、今からとても楽しみです。「荒井麻珠」としての初めてのライブなので歌をしっかり届けるというのが大切な軸ではありますが、例えばファッションやグッズなどにも今の自分らしさが表れていると思うので、そのあたりにも注目して楽しんでいただきたいなと思っています。
――では最後に、今後の抱負を聞かせてもらえますか?
【荒井】これはいい意味で、「荒井麻珠」というものを作りたいなと思っています。「誰々っぽい」とか「これに似てる」ではなく、「荒井麻珠」でしか作れない世界を作れたらなって。憧れのアーティストはたくさんいるけど、自分は自分として、自立した芯のあるアーティストとして認めてもらえるような存在になりたいです。歌い方やパフォーマンスなど全てにおいて自分らしさを突き詰め、音楽として表現していきたいなと思っています。
(ライター / 山田邦子)
――令和初日でもある5月1日に、ORICON NEWSのYouTubeチャンネルでソロアーティストとしての活動開始を発表。どんな気持ちでこの日を迎えましたか?
【荒井】直前までは「早く発表したい!」という気持ちが強かったんですが、時間が迫ってくるにつれて緊張感が芽生えてきました(笑)。
――ご覧になる方の反応も気になったでしょうからね。
【荒井】はい。でも(当日開設した荒井麻珠としてのYouTubeチャンネルやTwitterの)フォロワーさんがどんどん増えていくのを見て、ちょっとだけ緊張がほぐれたというか。Twitterって、言葉や写真を通してその人のことを色々と知ることができじゃないですか。「この人のことを知りたい」「この人の言葉を聞きたい」って思ってくださる方もいらっしゃったのかなって考えると、その気持ちがすごく嬉しかったです。ありがたいなって。
――改めて、YouTubeのオフィシャルチャンネルやTwitterなどをいち早く開設された理由を聞かせてもらえますか?
【荒井】SNSで自ら発信していくのが、一番伝わりやすいかなと思ったんです。それに、ちょっとでも身近に感じてもらえることが重要なのかなって思ったので。今はTikTokやInstagram、公式LINEも始めていますが、まずは自分の歌声を待っていてくれた方がいらっしゃるかもしれないし、私自身も歌声を聴いてほしいとずっと思っていたので、最初にミュージックトレーラーをYouTubeにアップしたんです。
――その荒井麻珠オフィシャルチャンネルで公開されている「1st Music Trailer」では、いきなり7曲ものオリジナル曲が発表されましたよね。
【荒井】はい。活動休止中は、これからどういう歌を歌っていきたいかとか歌いたいかっていう、ソロとしてのイメージや方向性を固めながら少しずつトライしていたんですが、たくさんある楽曲の中で「まず届けたい!」と思ったのがあの7曲だったんです。
――あの7曲以外にも楽曲があるということは、この2年間、かなりのペースで音楽制作に没頭されていたんですね。
【荒井】やっぱり私にとっては、音楽を通して伝えることが一番だという思いがありましたから。
――活動開始をお知らせした動画の中では「いろんな刺激を受けたり、苦手なことにも挑戦した」というような表現をされていましたが、もう少し具体的に聞かせてもらえますか?
【荒井】まず音楽に関しては、これまで自分が歌ったことのないジャンルの曲に挑戦してきました。挑戦というか、もともとやってみたかった音楽にしっかり向き合ったというのが正しいかもしれません。いろんな音楽を聴くだけではなく、実際に声に出して歌うこともすごく自分の学びにつながりました。
あとは、ダンス。今まですごく苦手だったんですが、ソロのアーティストとしてのパフォーマンスということを考えると、目でも楽しんでいただけるようなライブ作りがしたいなと思うようになったので、そのためにも、まずは基本的なダンスができるようになりたいなと。ちょっとずつかもしれませんが、自分の中では成長できてるかなって思うところでもあります。
――かなりストイックにレッスンされたそうですね。
【荒井】ダンスのレッスンなんですが、ほぼ筋トレと体幹を鍛えていて(笑)。体の基礎を作るというところから入っているので、まさに自分の体が勉強してるなって感じでした(笑)。
――他にはどんなことを?
【荒井】ちょっと話が戻りますが、音楽面での具体的なスキルアップのためにも色々と学んでいました。これまでやったことがなかったんですが、コーラスを自分で考えたり、作曲をしたり。
――コーラスに関してはご自身の楽曲だけでなく、ももいろクローバーZの楽曲のコーラスアレンジとディレクションもされたんですよね。
【荒井】はい。これまで自分では出してこなかった色を引き出すことができて、すごく刺激になりましたし、勉強になりました。
――作曲に関しては?
【荒井】作曲はソロになってから興味が湧くようになって、教えてもらうようになったんです。作家さんの才能には到底叶いませんし、本当に難しいなとは思いますが、土台の音に対して自分が感じたメロディーやハモリを自由に乗せていくのがとても楽しくて。こんな風に自分で作って歌えるんだと思うと嬉しいし、やりがいも感じることができたんです。
――音楽に対する視野も広がりますね。
【荒井】はい。でも、作詞はやっぱり難しかった(笑)。言葉をメロディーに乗せて伝えるっていうのは、こんなに難しいんだなって実感しました。ゆくゆくは自分でもできたらいいなとは思いますが、今はまず「この人の歌詞が歌いたい」と心から思える、そして尊敬しているプロデューサーさんが作詞したものを歌いたいなと思っています。
自分が思っている自分と、他の人から見た自分の違いってあると思うんですが、プロデューサーさんが書く歌詞にはハッと気づかされるものがあったりして、すごく気持ちが入りやすいから。自分では見えなかった自分を知ることができるのはすごくありがたいし、それを歌えることが今とても嬉しいんです。苦手なことを含め、トライしてみて今の自分を知るというのも大切な学びだなと思いました。
――2年前、グループをやめる時に麻珠さんは「もっと色んなものを勉強して、自分を高めていきたい」とおっしゃっていましたが、その言葉どおりの日々が続いているんですね。
【荒井】経験したことないことばかりだったので、今もそうですが、周りの方からたくさんのことを学ばせていただいてます。
――では、グループとして活動した4年間を今麻珠さんはどんな風に感じていらっしゃいますか?
【荒井】自分の音楽は、全てあそこで作られたなと思っています。自分の、第一歩だったなって。グループとしての活動があったから今の自分があるし、たくさんのことを学べた4年間でした。勉強だらけでしたよね。路上ライブもやったことなかったし、アカペラで歌うということ自体そう。メンバーと一緒にハーモニーを奏でる気持ち良さにもそこで初めて気づきましたし、それまで自分からは聴かなかったし歌ってこなかった洋楽の魅力も、グループでの活動を通して知ることができました。
色んな場所で歌わせていただけたことも、自分にとってはすごく大きかったですね。私は小さい頃からソロとしての歌手を目指していたんですが、最初から1人で歌っていたら感じることができなかった音楽の楽しさを知ったし、1人だと見ることができなかった景色をたくさん見ることができたのは、グループとしての活動があったからだと思っています。
――なるほど。
【荒井】と同時に、こんなにも厳しいんだということも知りました。最初のオーディション期間、すごくシビアな世界なんだということを感じて、もっと頑張らなきゃ、負けたくないって強く思ったのを覚えています。それまでそんなシビアな部分を感じたことがなかったからというのもありますが、今思えば、たぶん漠然としてたんでしょうね。
――ソロの歌手になりたいという夢を持っていたとはいえ。
【荒井】はい。メンバーやスタッフさんが支えてくれていたからであって、自分1人の力では、精神的にも乗り越えられなかったと思います。そこはもう、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
――いくつの頃から、ソロの歌手になりたいと思っていたんですか?
【荒井】小学3年生からです。それまでは将来の夢として「ケーキ屋さんになりたい」って言ってたみたいなんですが(笑)、小3で絶対歌手になりたいって思って、小4から音楽スクールに通い始めました。はっきりとしたきっかけがあったわけではないんですが、逆に言うとそれくらい自然に音楽にのめり込んでいたんですよね。「物心ついた頃から」という表現はもっと小さい頃をさすんでしょうけど、私の場合はそこが物心ついた時期だったというか、人生の最初から今までずっと歌手を目指していたんだと思っています。
――ご両親も音楽が好きだったそうですね。
【荒井】はい。2人とも音楽が好きでよく聴いてたし、もともと母は歌手になりたいという夢を持っていたんです。だから私が歌手になってくれたらいいなって思っていたところはあるかもしれないけど、小学4年生の時にスクールで初めてちゃんと私の歌を聴いて、この子の応援をしたいって思ったらしいんですよね。私の歌声に、希望を感じてくれたみたいで。
――歌手になりたいと言ってたけど、そんなに人前では歌っていなかったんですか。
【荒井】そうですね。自分からガツガツ「聴いてください!」みたいなタイプじゃなかったし。あまり大きい声を出すということもしてこなかったので、レッスンを受けるようになって声量もグッと上がったんですよ。グループのオーディションもそうですが、本格的にレッスンを進めていく中で学んだことや成長できた部分はたくさんありますね。
――オーディションは小さい頃からたくさん受けてきたそうですね。
【荒井】母が色々と探してくれて、小学生の頃からいくつもいくつも受けて、いっぱい落ちてっていうのを何年も繰り返してきました。で、やっと通過したのがグループのオーディションだったんです。ソロとしてデビューすることを目指してはいたけど、ここまで一生懸命応援してくれた母の気持ちが嬉しかったし、ソロであってもグループであっても負けたくないっていう気持ちがどんどん強くなっていましたからね。だけど一番の根本にあるのは「歌が歌いたい」という気持ちだったので、素直にグループでも通用するような実力をつけたいと思ったし、先ほどの話に戻りますが、グループとしての厳しさや楽しさを感じながら活動を続けてきました。
――日本武道館でワンマンライブをやるという大きな目標も達成しましたね。
【荒井】グループ結成当初からの夢でしたが、そういう目標があると、今何をするべきかがわかってくると思うんです。どんなに大きな夢だとしても、目標を持つことはすごく大事だと実感しました。今もドームツアーがやれるくらいになりたいという夢を持っていますが、それはただ場所的にクリアしたいわけではなく、それだけの集客ができる実力をつけたいし、直接歌を届けられるライブというものをずっと大事にしていきたいと思っているからなんです。
――そのライブに対する考え方は、ソロアーティスト・荒井麻珠としての指針とも言えそうですね。
【荒井】実は人生で一度だけ、あるアーティストの方のライブを見て「あぁ、生きている」と思えたことがあるんです。その声や表情や動きを見ているだけで自然と涙が溢れてきて、これまでに味わったことがない感覚になったんですよ。そして、自分もこういうアーティストになりたいと思ったんです。これまで色んな方のライブを見て、生で聴く音楽の素晴らしさを感じてきたけど、自分の人生として受け止めるほどのライブは初めてで。
私はこれまで歌手として、アーティストとして、人の心を救えるような音楽を届けたいって言ってきたんですが、その感覚を自分自身が実感してしまったような感じでした。自分はこういう人になりたいんだって、改めて自分の芯を確信したんですよね。
――だから、自分の歌ってなんだろうとか、私が歌えることってなんだろうって考えることになったんでしょうね。
【荒井】グループはグループで出せる音楽の魅力があるけど、自分だから歌える歌を歌ってみたくなったんです。中学の時から一緒に頑張ってきたメンバー、その頃から応援してくださったみなさんの思いというのがあるのはわかっていましたが、自分のこれからの音楽人生を考えた時に、自分の中から湧き上がってくるものをしっかりと伝えたいという気持ちがすごく強くなっていったんです。
アーティストとして客観的に、そして冷静になって考えた上で決断をしました。寂しく思ってくださったファンの方もいるかもしれませんが、そこはソロとしてちゃんとお返しをしたいと思っているし、みなさんの心を震わせることができるような歌を届けられるアーティストになりたいなと思っています。
――まだ10代だったのに、人生の大きな波を超えたような感じですね。
【荒井】でもいい意味で、また1つ自分の“はじまり”を迎えられたような感覚です。もちろん自分の音楽人生の本当の意味でのはじまりはグループだったわけで、そこは一番大切に思っているところですが、その上でさらに新しい自分を見せていくという意味のはじまりでもあるかなと。
――その”はじまり”を告げるオリジナル曲を聴いた方の中には、あまりの新しさにびっくりした方も多かったんじゃないかなと思います。
【荒井】これはちょっと上手く説明ができないんですが、聴いていても歌っていても、<感情線>が動くような歌が歌いたいということをずっと思っていたんです。そこを、ソロの楽曲ではより強く出していけるかなというのはありました。あとはかっこいいジャジーな雰囲気のものもあったりして、声色とか表現の部分での新鮮さも感じてもらえたらなと思っているんですが。
――7月1日からは、オリコンミュージックストアで「薄暗くなった空が僕を包んでどうしようもない」が独占配信されるんですよね。
【荒井】はい。最初にもお話ししましたが、まずは自分の歌声を届けたいなという思いがあったので、この曲はアカペラで始まるんです。歌詞は聴いた人によって色んな解釈があるのかなと思いますが、私にとってこの曲は、自分が今まで内に秘めていたものというか、閉じ込められていたものが溢れ出てくるような感じがあったんですよね。
レコーディングの時も、この曲に宿っているものが強いからか、歌う自分の心がまず揺さぶられてしまって、地に足が着かないような感じになってしまったんです。曲の途中で涙が溢れてしまうほど入り込んでしまったんですが、求めていたのはそういうものだったし、それほどの曲をソロとしてのはじまりに歌えたことはすごく嬉しかったです。
――「Timing Clever」では、共作ですが作曲にも挑戦されていますね。
【荒井】この曲はコーラスのアレンジにもすごくこだわったんですが、アカペラをやっていたことがとても生かされているなと思うし、自分の強みにもなっているなと思いましたね。アカペラって1人で歌う美しさもあると思うけど、他の人の声を聴きながら「今すごくハマってる!」とか「共鳴してる!」っていうあの絶妙な感覚がすごく好きで。今回実際に自分でコーラスを積むにあたっても、これまで学んできたこととか体で感じてきたことがたくさんあったんだなって感じました。
――8月21日には初めてのワンマンライブも開催。オリジナル曲をフルで、しかもバンド編成で聴くことができるんですよね。
【荒井】そうなんです。緊張もするけど、「早くリハがしたいな」って今はワクワクする気持ちも。素晴らしいメンバーのみなさんと一緒にステージに立てるので、今からとても楽しみです。「荒井麻珠」としての初めてのライブなので歌をしっかり届けるというのが大切な軸ではありますが、例えばファッションやグッズなどにも今の自分らしさが表れていると思うので、そのあたりにも注目して楽しんでいただきたいなと思っています。
――では最後に、今後の抱負を聞かせてもらえますか?
【荒井】これはいい意味で、「荒井麻珠」というものを作りたいなと思っています。「誰々っぽい」とか「これに似てる」ではなく、「荒井麻珠」でしか作れない世界を作れたらなって。憧れのアーティストはたくさんいるけど、自分は自分として、自立した芯のあるアーティストとして認めてもらえるような存在になりたいです。歌い方やパフォーマンスなど全てにおいて自分らしさを突き詰め、音楽として表現していきたいなと思っています。
(ライター / 山田邦子)
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2019/07/01