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“顔出し”しないアーティストが続々 コンテンツ過多時代に音楽を届ける最短コース

 近年、ヨルシカやずっと真夜中でいいのに。、Eve、美波三月のパンタシアといったいわゆる“顔出し”をしていないアーティストが、YouTubeで1000万回を超える再生回数を記録し、配信サービスやサブスクリプションサービスの上位にランクインしている。彼らに共通していえることは、アーティスト自身のビジュアル面を隠し、映像・音楽・歌詞(文字)で視覚的に楽曲を訴求させていることで、音楽を届け方にも変化が見えている。

◆“顔出し”なしでも人気のアーティストが続々ヒット

 ヨルシカ「言って。」、ずっと真夜中でいいのに。「秒針を噛む」、Eve「トーキョーゲットー」、美波「ライラック」。「ボカロP+シンガー・ソングライター」あるいは「アニメーターを含むクリエーター+シンガー・ソングライター」という組み合わせの音楽チームが、YouTubeで1000万回を超える再生回数を誇る楽曲を次々と送り出すなど、大きな注目を集めている。

 これらのアーティスト(クリエイター・チーム)の共通した特徴は、いわゆる“顔出し”を制限していること。アーティスト自身のビジュアル、キャラクターを押し出すのではなく、アニメーションを中心としたMVを制作、楽曲の世界観、イメージを視覚的に訴求すると同時に、歌詞を表示することで楽曲に対する理解を深められるように提示している。その特徴が最も表れているアーティストのひとつが、ファンから“三パシ”と呼ばれている「三月のパンタシア」。ボーカル・みあを中心としたクリエイター・ユニットだ。

 憂いを帯びた歌声、聴き手の心に寄り添うストーリーを描いた楽曲、そして、姿を見せない神秘性も相まって、10代〜20代を中心に強い支持を獲得している“三パシ”。楽曲のコンセプトに合わせて作曲家、イラストレーターを迎え、そのイラストと連動して作り上げられる映像作品を制作するなど、作品を発表するたびに注目を集めている。ORICON NEWSのインタビューで、みあは「三月のパンタシアは、固定のメンバーは私のみで、いろんなクリエイターの方に参加して頂いているユニット。私はその代表みたいな感じですね。私はボーカロイドが好きなので、いわゆるボカロPと言われるクリエイターのなかから、これから音楽活動を一緒にしていきたいと思った方にデモデープを送らせてもらって、一緒に作品を作っていただけませんかとオファーさせていただいたりしています」「今後もメンバーを固定する予定はないんです。ユニットとしての世界観、統一感も感じてもらいたいので、一気にではなく少しずつクリエイターをお迎えして色味を足していけるような活動をしていきたいです」とユニットの趣旨を説明している。“アーティスト+クリエイター”の機能をよりフレキシブルに発展させたユニットと言えるだろう。

◆映像・音楽・文字をバランスよく融合させたMVで、視覚的に楽曲を訴求

 1stシングル「はじまりの速度」(TVアニメ『キズナイーバー』EDテーマ)、2ndシングル「群青世界」(OVA『クビキリサイクル 青色サヴァ ンと戯言遣い』OPテーマ)、3rdシングル「フェアリーテイル」(TVアニメ『亜人ちゃんは語りたい』EDテーマ)など、デビュー当初からアニメ作品とのコラボレーションを展開。さらにネット上の活動として2018年8月には「音楽×小説×イラスト」を連動させた自主企画「ガールズブルー・ハッピーサッド」を始動させるなど、さまざまなメディアを融合させたエンターテインメントを実践している。そのなかで、“三パシ”のスタイルがもっとも顕著に表れているのが、代表曲「街路、ライトの灯りだけ」のMV。イントロと同時に楽曲のタイトルを映し出し、フレーズごとに場面を変えながらリリックを記していくアニメーションの映像は、まるで音楽を聴きながらコミックを読んでいるような感覚をユーザーに与える。サビに入った瞬間に文字サイズが大きくなり、楽曲の世界観に直結するビジュアルを合わせる演出も強いインパクトを放っている。映像、音楽、文字という主要なメディアをこれほどバランスよく融合させたMVはきわめて稀だ。

 3月13日に発売される2ndアルバム『ガールズブルー・ハッピーサッド』は、自主企画「ガールズブルー」をパッケージした作品。Twitter上でみあのオリジナルノベルを連載し、YouTube上で物語をもとにした動画を展開。イラスト・ビジュアルは人気イラストレーターのダイスケリチャードが担当し、2018年8月に投稿した企画第1弾楽曲「青春なんていらないわ」以来、「ガールズブルー」の集大成的アルバムに仕上がっている。収録される新曲はすべて、みあが書下ろした小説を原案に作成。作家陣には堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)、buzzG、40mP、すこっぷなど、バンド、アニソン、ボカロなどで活躍するクリエイターが名を連ね、みあが生み出す物語を的確に音像化している。

◆“リリックビデオ”の可能性を広げた“三月のパンタシア”

 新たにMVが制作された楽曲は「三月がずっと続けばいい」「ビタースイート」。これまで通り“イラスト×リリック”を中心としたMVだが、構成力、ビジュアルの表現を含め、さらにクオリティが上がっている。みあが手がけた原作をもとにすることによって、映像の方向性が明確になり、作品全体の精度が上がった成果だろう。

 三月のパンタシアのMVの魅力の中心はやはり、“リリックビデオ”の可能性を大きく広げていることだろう。歌詞を視覚的に捉えられるリリックビデオは、2010年代半ばあたりから、洋邦問わず、大きな潮流を作ってきた。音楽をスマホやパソコンで聴くことが主流になった現在、映像と歌詞を同時に伝えられるリリックビデオの存在は、これからさらに増えていくはずだ。

 “三パシ”のリリックビデオの特徴は、前述した通り、独創的にして魅力的な物語が軸になっていること。切なく、甘酸っぱい青春を描いた、みあの小説を音楽とリリックビデオで表現することで、受け取り側の共感を高め、あたかもその歌の主人公が聴き手自身であるかのような効果を起こす。これこそが、三パシが強く支持され、共有されているもっとも大きな理由なのだと思う。

 音楽、ゲーム、投稿動画など膨大なコンテンツが溢れている現在、効果的にユーザーに訴求するために必要なのは、「情報の焦点を絞り、“何を伝えるか”を明確にする」という原点。そのことを踏まえたうえで的確な映像を制作することが、リスナーに音楽を届ける最短コースであり、それを実践し続けているのが三月のパンタシアなのだと思う。“何を届けるか”そして“どう届けるか”。音楽は今、届け方のプロデュース能力が必要とされるようになっているのだ。

(文/森朋之)



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