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今井美樹、紆余曲折経ての30年「英国移住は正解だった」

 デビュー30周年を迎える今井美樹が、6年ぶりのオリジナルアルバム『Colour』を発売した。英国に移住して3年、現在は家族との充実したロンドン生活を送る今井が、ORICON STYLEのインタビューに応じた。これまでの活動を振り返り、決意と覚悟から生まれた大ヒット曲「PRIDE」の誕生秘話など、紆余曲折を経て辿り着いた現在の生活や心境について語った。

英国在住の今井美樹(写真:鈴木かずなり)

英国在住の今井美樹(写真:鈴木かずなり)

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◆英国に移住して家族の雰囲気が柔らかくなり、自然と家族の会話も増えた

――英国に移住して約3年ですが、ロンドン生活も慣れましたか?
【今井】 今でもアップアップです(笑)。ただ、英国では“生活者”として過ごしてます。ロンドンは日常の時間の流れが東京とは随分違うので、自然と自分自身の心持ちも視点も変わったというか。

――ペースがまったく違うんですね。
【今井】 (英国は)それぞれが自分の時間を確保することを大事にしている、ということです。仕事第一で遅くまで働いて儲ける、というよりは、家族の時間や自分自身の生活を大切にするっていうことが基本になっていて、お互いがそれを守り尊重しているので、ある意味フェアではあるんです。

――では、今井さん含め、ご家族のみなさんも時間の使い方が変わりました?
【今井】 家族の雰囲気が柔らかくなりました。娘に関しては年頃なので別の意味で難しいこともありますが、夫は仕事で出かけても、例えば相手のプロデューサーが夜の7時には必ず家に帰る人だったりすると、自分も帰宅して夕食は家で食べるみたいな。日本だったらスタジオ作業なんて、そのままスタジオで出前とって食べてまた遅くまで続きをやる、とか、仕事の後に飲みに行って夜中に帰るなんてこともありましたが、ロンドンは基本的に遅くまでお店があいていないので、必然的に早く帰ることになります。そうなると、自然と家族の会話も増えますし、いろんなところでムリやり感がなくなって優しくなるというか。何でもない時間もぐっと深く味わえるようになった気がする。そこは東京にいるときとは大きく変わりました。

――ロンドン移住は大正解だったんですね。
【今井】 そうですね。仕事人として生きて、あくせくしていたのが東京にいた頃の自分だとしたら、そこまでしなくても別にいいかなって思っているのがロンドンにいる自分。ただ、そこは年齢もあってもし10年若かったら、やっぱりロンドンでもあれもこれも、となっていたと思います。あくまで私たちにとってこのタイミングで新しい生活をスタートさせたことは正解だったなと。

◆歌手としての活動がスタートした頃は、歌うことがすごくコンプレックスだった

――今年で歌手生活も30年となりますが、デビュー当時のことを振り返って思うことは?
【今井】 実は当時、歌手になろうという明確な意志があったわけではないんです(笑)。音楽はずっと好きでしたが、好きなことイコール大切なものっていう感覚で、人前で歌うことはまったく考えたことがなかったんですよ。

――確かに“今井美樹”の名はモデル・女優として先に世の中に認知されていました。だから歌手デビューしたとき、歌が上手くて驚いた覚えがあります(笑)。
【今井】 今もうそうだけど、あの頃も女優やモデルが歌を出すっていう流れがあって。私も気づいたら歌手デビューが決まっていました。でも、初めて録音した自分の声を聴いたときに、「これ、誰が歌っているんですか?」って聞いたぐらい驚きました。「私はこんなふわぁ〜っとした声じゃない! もっとガツンとした声のはず」って(笑)。

――“今井美樹ボイス”が、当時は気に入らなかったと(笑)。
【今井】 そんな、自覚も無いままレコーディングするような物が世の中に出ていくなんてダメだって、音楽ファンだったからこそショックでした。まだ足跡を残してないというか、歌っていても自分の気持ちが足跡として曲に残っていない感覚があって、だから歌手としての活動をスタートした頃は歌うことがすごくコンプレックスでした。でも、3枚目のアルバムを出した頃から、自分がこういうことをしたいという方向性が見えてきて。制作に一から関わるようになってからはレコーディングがとても楽しくなって、貪欲になっていくし、視野も広がっていきました。「PIECE OF MY WISH」もそんななかで出会った曲でした。

◆決して真っすぐに歩いてきた30年間ではない

――この曲でアーティストとしての“今井美樹”と、その音楽は完全に定着しましたね。
【今井】 でもその後、私はその大切な楽曲を一度手放してでも、新しいことをしていきたいという気持ちが出て来たんです。それぐらいのことをする覚悟がないと次はないなって。

――でもヒットを出した後に、その路線やブレーンを変えるってかなり勇気がいりますよね?
【今井】 不安もありましたが、現状のままでは新たなものを迎えられないっていう危機感のほうが大きかったんでしょうね。その後、新たなチームでレコーディングを始めるんですが、そんなときに布袋の音楽にも出会ったんです。そして、楽曲のお願いをしました。

――その覚悟が大ヒット曲「PRIDE」に繋がったと。今井さんはデビューして一気にトップアーティストに上り詰め、そのまま不動の道を歩んできた印象がありますが、そこに至るまでは常に大きな決断があったんですね。
【今井】 いま振り返るとそうですね。決して真っすぐに歩いてきた30年間ではなく、真っすぐ歩けるところをあえて自らの意志で蛇行してきた道のりというか。でもその結果、辿り着いたのが現在であり、だからこそ今、穏やかな気持ちでロンドンで暮らしていくことができる。それをベースにして今回のアルバムを作れたこともすごく嬉しいし、時間をかけて歩き続けて辿り着いたが場所がここで良かったなと思います。

(文:若松正子)

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