サザンオールスターズの10年ぶり、15枚目のオリジナルアルバム『葡萄』が好調な動きを続けている。初週売上げ30万枚で他を圧倒的に引き離してのロケットスタート。この数字は今年発売されたアルバムの中で3番目に多い初週売り上げ枚数。その後も2位→2位→3位とすでに4週連続でベスト3をキープする。予測では、5月中には50万枚を超え、さらにツアーの進行にともなって売れ行きがさらに加速していくことは間違いないだろう。
■サザン流ポップスの集大成的なアルバム
なぜ、このアルバム『葡萄』にこんなに人気が集まっているのか。それは、サザンオールスターズというバンドの音楽の集大成といってもいい内容で、彼らのすべてが、ここに集まっているといっても過言ではなく、緻密かつバラエティに富んだ仕上がりだからなのだと断言しよう。
『葡萄』のブックレット用に行われたインタビューで、桑田佳祐は「前作『キラーストリート』はこの先のサザンはどうのようなスタンスをとって進めばいいのか、それを模索していた時期で、ポップスの総合商社みたいなスタイルを演出しようと、2枚組にして重箱の隅を突くだけ突いて、仕上げにネジをギュッと締め過ぎちゃって、マニアックな色合いを濃くしてしまった」と述懐しているが、まさにこの『葡萄』は、それとは対極にあるサザン流ポップスの集大成的なアルバムになっている。
まさにファンが望むものが、期待値の倍になって姿を現した、そんな印象のアルバムだから、潜在的なファン層にまで作品のリリース情報が浸透し、セールスも動いたということなのだと思う。
特にこの10年の間に、リーダーである桑田は死生観が変わるような大病を患った。それがあったことによって、自分の出自であるサザンオールスターズの新たな時代の中での原点回帰、新たな時代の中でのメッセージ性というものを本気で考えたのだなと感じずにはいられない。サザンオールスターズというのは、歌謡曲からロックまでもともとさまざまな音楽的要素をミクスチャし、歌われる言葉の方も日本語と英語をそれまでにない形でミクスチャした世界中どこにもないバンドだったのだということを、この『葡萄』に並んだ作品群を聞きながら改めて感じてしまう。
■新しい時代の第一歩を踏み出したサザンオールスターズ
このアルバムには全16曲が収録されている。タイアップで事前に浸透していた曲も多い。レコード会社は最終的にアルバムのセールスに結びつけるために1曲でも多くと、タイアップをつけてくる。とは言っても作品やアーティストに魅力がなければタイアップはとれないのだから、タイアップの多さは作品力の高さ、アーティスト人気の絶対度の証明ということでもある。
でも、今回のアルバムに関していうとタイアップで事前に浸透していなかった作品が僕にとってはすごく心地よい。「青春番外地」は1970年代の青春群像が歌われる。当時はみんなどこかアウトローだった。「天国オン・ザ・ビーチ」は「笑点のテーマ」がダブってくる。サザン流お笑いソングの神髄ここに極まり!という感じだ。「道」は間もなく還暦を迎えるアーティストの心情がものすごくストレートに出ているように感じた作品だ。同世代が共感できる作品として、サザンの今後の方向性の一つがここにあるかもしれない。「Missing Persons」は1970年代ロックの香りがムンムンのサウンド。斉藤誠のギタープレイもまさに1970年代ロックへのオマージュ。しかも歌われる歌詞は拉致問題なのだ。これぞロックです。
とにかく良くできた作品集『葡萄』。16粒(曲)の大粒の実がついたひと房というイメージでつけたのだろうか。桑田自身は「タイトルはあくまでも記号なので、あまり深い意味はないんです」とオフィシャルブックインタビューで語っているが、いやいや、精魂込めてこのアルバムを作ってきたアーティストにおりてきた言葉だ。きっと、あとあと驚くような意味合いが本当はあるのかもしれない。
このアルバムが完成したことにより、サザンオールスターズは新しい時代の第一歩を踏み出したようだ。次が何年後になるのかはわからないが、確実に次があると思わせてくれるアルバムが『葡萄』だ。
(文/垂石克哉)
■サザン流ポップスの集大成的なアルバム
なぜ、このアルバム『葡萄』にこんなに人気が集まっているのか。それは、サザンオールスターズというバンドの音楽の集大成といってもいい内容で、彼らのすべてが、ここに集まっているといっても過言ではなく、緻密かつバラエティに富んだ仕上がりだからなのだと断言しよう。
『葡萄』のブックレット用に行われたインタビューで、桑田佳祐は「前作『キラーストリート』はこの先のサザンはどうのようなスタンスをとって進めばいいのか、それを模索していた時期で、ポップスの総合商社みたいなスタイルを演出しようと、2枚組にして重箱の隅を突くだけ突いて、仕上げにネジをギュッと締め過ぎちゃって、マニアックな色合いを濃くしてしまった」と述懐しているが、まさにこの『葡萄』は、それとは対極にあるサザン流ポップスの集大成的なアルバムになっている。
まさにファンが望むものが、期待値の倍になって姿を現した、そんな印象のアルバムだから、潜在的なファン層にまで作品のリリース情報が浸透し、セールスも動いたということなのだと思う。
特にこの10年の間に、リーダーである桑田は死生観が変わるような大病を患った。それがあったことによって、自分の出自であるサザンオールスターズの新たな時代の中での原点回帰、新たな時代の中でのメッセージ性というものを本気で考えたのだなと感じずにはいられない。サザンオールスターズというのは、歌謡曲からロックまでもともとさまざまな音楽的要素をミクスチャし、歌われる言葉の方も日本語と英語をそれまでにない形でミクスチャした世界中どこにもないバンドだったのだということを、この『葡萄』に並んだ作品群を聞きながら改めて感じてしまう。
■新しい時代の第一歩を踏み出したサザンオールスターズ
このアルバムには全16曲が収録されている。タイアップで事前に浸透していた曲も多い。レコード会社は最終的にアルバムのセールスに結びつけるために1曲でも多くと、タイアップをつけてくる。とは言っても作品やアーティストに魅力がなければタイアップはとれないのだから、タイアップの多さは作品力の高さ、アーティスト人気の絶対度の証明ということでもある。
でも、今回のアルバムに関していうとタイアップで事前に浸透していなかった作品が僕にとってはすごく心地よい。「青春番外地」は1970年代の青春群像が歌われる。当時はみんなどこかアウトローだった。「天国オン・ザ・ビーチ」は「笑点のテーマ」がダブってくる。サザン流お笑いソングの神髄ここに極まり!という感じだ。「道」は間もなく還暦を迎えるアーティストの心情がものすごくストレートに出ているように感じた作品だ。同世代が共感できる作品として、サザンの今後の方向性の一つがここにあるかもしれない。「Missing Persons」は1970年代ロックの香りがムンムンのサウンド。斉藤誠のギタープレイもまさに1970年代ロックへのオマージュ。しかも歌われる歌詞は拉致問題なのだ。これぞロックです。
とにかく良くできた作品集『葡萄』。16粒(曲)の大粒の実がついたひと房というイメージでつけたのだろうか。桑田自身は「タイトルはあくまでも記号なので、あまり深い意味はないんです」とオフィシャルブックインタビューで語っているが、いやいや、精魂込めてこのアルバムを作ってきたアーティストにおりてきた言葉だ。きっと、あとあと驚くような意味合いが本当はあるのかもしれない。
このアルバムが完成したことにより、サザンオールスターズは新しい時代の第一歩を踏み出したようだ。次が何年後になるのかはわからないが、確実に次があると思わせてくれるアルバムが『葡萄』だ。
(文/垂石克哉)
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2015/05/03