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山崎まさよし、デジタル時代だからこそ“生音”を〜独自スタイルを貫く姿勢とは

 歌手の山崎まさよしが、大塚食品『ボンカレー』の46周年記念CMに楽曲を提供した。WEB CMで使用されるほか、記念パッケージにあるシリアルナンバーをキャンペーンサイトに入力すると、楽曲をダウンロードして聴くこともできる。こうした新たな試みに参加した気持ちや、ダウンロードの時代だからこその音楽作りについて話を聞いた。

山崎まさよしのレコーディングの様子

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◆デジタル時代だからこそ、“自分の手”で時間をかけて楽曲制作を――

 今回、山崎が手がけた楽曲は、CDショップや配信サイトではないところで、多種多様なユーザーの耳に届くことになるわけだが、どんな形で楽曲がリリースされるか、山崎自身はこだわらないと言う。

「ひと昔前までは、街で鳴っているとか、喫茶店の有線放送で鳴っているとか、ラジオもそうだし、選ぶ選ばざるに関わらず、いたるところで音楽を耳にしていました。そういう環境の中で、ポップスというものは育ってきたと思います。そういう意味では、僕自身どこでどんな風に聴かれてもいいと思って作っているし、この形で聴かないとダメということはないんです」

 また、こうしたデジタル社会の最先端をいく企画だからこそ、「音楽は生や素朴感にこだわった」と話す。

「僕の仕事は、入口なんです。そこから先は、ダウンロードなのかCDなのか、どういうハードで聴くのか、ヘッドフォンやスピーカーはどうか、それで最終的な出口にいるのがリスナー。結局、入口である音楽そのものが、いかにいいものであるかということが、とても重要です」

 デジタルで聴かれる時代だからと言って、じゃあPCで手軽に作ればいいというわけではない。実際に山崎は、今でもピアノやアコースティックギターを弾きながら、それこそ“自分の手”で時間をかけて楽曲を作っている。『ボンカレー』のCMソングにしても、スタジオにマイクを立て、部屋の空気感ごとレコーディングする手法を取った。マイク位置を細かく変えながら、実際に自分で演奏してという繰り返しで、かなりの時間を費やしたそう。

「やはりモノを作るには、たくさんの時間をかけないといけないと思っています。アイディアを寝かせるのもそうだし。パッと思いついてパッとできてしまうということは、メイクシュア(確かめも)せずに流れでできてしまっているということ。そういうものは、人の心にとどまらずに通り過ぎていってしまうんです。負荷をかけてものの成熟を計ることは、すごく大切。でもそれは、生楽器であるとか、人の手を介したものであるとか、生のものでないと絶対にできないことなんです」

◆山崎の“生”指向は、期せずして時代の最先端に!?

 そうして生まれる“生”の音を、いかにそのまま録音し、そのまま聴いてもらうかは、音楽業界にとっては永遠のテーマである。近年は現在のデジタル環境の中で、高音質を求める機運も高まってきた。ハイレゾリューション(ハイレゾ)音源と呼ばれるものも、そのひとつだ。高解像度の音楽データのことで、レコーディング時の空気感や臨場感まで、そのまま録音できる技術だ。CDの3倍以上の情報量を持つため、ネットによる配信や販売がメインになっているが、以前のような配信音源=低音質というイメージを、まったく覆すものだ。デジタルにはうといと言う山崎も、このハイレゾ音源には興味を示している。

「昔は、オーディオマニアの人がそういう感じだったけど、今は普通の人でも、気にするようになっていると思います。個人的には、ハイレゾで録音した音源を、アナログ盤にしてターンテーブルで聴いてみたいですね。アナログで周波数帯域のすごく広いものをハイレゾで録って、ダイレクトカッティングで溝を彫ったら、きっと最高音質のアナログ盤レコードになるはずなので、面白いと思うんですけどね」

 アナログフェチを自負する山崎。自宅では、木で作られたウッドコーンのスピーカーで、アナログ盤レコードをよく聴いているとのこと。しかし山崎のような嗜好を持った音楽リスナーは、年々数を増している。実際に、アナログレコードとCDの中古販売の専門店「HMV record shop渋谷」が、8月2日にオープンするなど、アナログ盤は再ブレイクの兆しだ。山崎の“生”指向は、期せずして時代の最先端を行っていると言えるのかもしれない。

(文:榑林史章)

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