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40周年の中村雅俊「100%役者で100%歌手、2人の中村雅俊がいる」

 1974年に俳優&歌手としてデビューしてから今年で40周年を迎える中村雅俊が、7月1日に約15年ぶりとなるオリジナルアルバム『「ワスレナイ」〜MASATOSHI NAKAMURA 40th Anniversary〜』をリリース。“歌手・中村雅俊”として、ORICON STYLEの取材に応じた。アルバムに込められた40周年の感謝、そして東日本大震災の被災地に対する強い思いまで語ってくれた。

7月1日にアルバム『「ワスレナイ」〜MASATOSHI NAKAMURA 40th Anniversary〜』をリリースした中村雅俊

7月1日にアルバム『「ワスレナイ」〜MASATOSHI NAKAMURA 40th Anniversary〜』をリリースした中村雅俊

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■役者が歌っている、というスタンスでは続けられない

──1974年のドラマ『われら青春!』で俳優デビュー、同番組の挿入歌「ふれあい」で歌手デビュー、今年が40周年ですね。デビュー以来、毎年コンサート・ツアーを欠かさず、公演数は1400回超。これはすごい数字です。
【中村】 役者が歌っている、というスタンスでは続けられないなということは、かなり早い時期から思っていました。役者が趣味で歌うのは、失礼だと思ったので。芝居をやるとき、100%役者であるように、歌うときは100%歌手であるべき、という意識でやってきました。だから、俺のなかには2人の中村雅俊がいます。そういう意識でコンサート活動を続けていると、コンサートをやるとはどういうことかと考えるようになりますね。ただ好き勝手に歌えばいいってものじゃなく、たとえばピアノやサックスとかの楽器を演奏するとか、パフォーマーとしての努力も必要です。同じようなものはお見せできませんから。歌の表現も含め、やるたびにスキル・アップしたものをお見せしないと、続きませんね。

──ニューアルバム『ワスレナイ』を聴くと、中村雅俊ワールド全開です。
【中村】 アルバム1曲目の「君がいてくれたから」は、40周年の感謝を歌っています。今回は自分で作詞や作曲をした曲が多いので、いつも以上に自分らしさが濃く出ています。歌も、俺の場合、独特の声質ですからね、どう歌っても中村だってわかってしまいますね。演技と似ていますよ。俺、芝居で台詞を言うときも切れが悪いんです(笑)。ハキハキ言うタイプではない。歌も台詞の言い回しと似ています。これは直らなかった、というより、あえて直そうとも思わなかったところです。ボイス・トレーニングに行くチャンスもなかったわけではないけど、行かなかったし。ハ行のHの音が聴こえないとかね(笑)。いろいろ言われることもありますが、それは持ち味だと思っています。

──そうですね、あの歌はまさに「味」。でも、実はそれが一番難しい。
【中村】 飛び抜けた技術で聴く者を唸らせる歌もあれば、エモーショナルなものを全面に出して聴く者に響く歌もあるから。表現はいろいろあっていいと思います。俺は俺なりに歌い続けてきた結果、持ち味みたいなものが出てきたってことでしょうね。

■自分が動くことで被災地の現実を知ってもらいたい

──中村さんは東日本大震災で大きな被害を受けた宮城・女川町のご出身で、これまで様々な支援活動を行ってこられました。アルバムには震災で被災した東松島市立小野小学校・浜市小学校が統合し、今年4月1日に誕生した東松島市立鳴瀬桜華小学校校歌の「花になろう」も収録されていますね。
【中村】 校歌の作曲は初めてだったので、これで大丈夫かな、という不安もあったんですけど、子供たちが俺の前で歌ってくれたときは感動的でした。あれは去年の嬉しい出来事のひとつでしたね。2校が統合されて新しく生まれた小学校だから、ハモれるように作ったし、ギター1本の伴奏でも歌えるので、卒業して20年くらい経って、焼き鳥屋かどこかでクラス会をやったとき、みんなで歌ってくれたら、こんな幸せなことはありません。

──その「花になろう」や宮藤官九郎さんと歌っている「予定〜宮城に帰ったら〜」や「私の町」など、背景に被災地への思いが流れているアルバムだと感じました。
【中村】 3年前にあの震災があってから、被災地では場所を選ばずに歌いに行きました。「花は咲く」や「予定」も、コンサートでは意識的に歌ってきました。それから、毎年1曲ずつ被災地への思いを込めた新曲を作ろうと、「Smile again」や「ワスレナイ」を書いてきました。これらの曲が中心になっているアルバムです。

──BS朝日の報道番組『いま日本は』でも被災地を訪れていらっしゃいますね。
【中村】 「被災地の未来」というコーナーで各地へ伺っています。番組に出演していることも、このアルバムを出したことも、モチベーションは同じです。自分が動くことで、活字になったり、テレビに映ったりして、まだまだだよ、被災地の現実はこうだよと、全国に知らせることにつながれば、と思っているんです。それは故郷が被災してしまった人間として、この先もずっとやっていくべきことだと決めています。だから、アルバムのタイトルは『ワスレナイ』ですが、俺のなかのテーマは“ワスレサセナイ”でもあります。

(文/藤井徹貫)

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