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【編集長の目っ!】JUJU、ニューヨークへの想い

■伝統のライブで、その実力を見せつけた感動の一夜をパッケージ

 前に、このコーナーで、JUJUのカバーアルバム『Request』を取り上げたときに、彼女の声についてこんなことを書いた。“JUJUの声は、胸の奥の深い深いところまで、スッと入ってくる。なんだろう……天性のものといえばそうかもしれないけど、喜びも悲しみも哀愁も、光と陰も、とにかく人間の感情を揺さぶる、感情に訴えかけてくる、ありとあらゆるものが内包されている。それが“せつなさ”となって押し寄せてくる感じ―――あくまでも個人的な肌感覚だけど……。彼女のこれまでの経験や過ごした時間が、声に刻まれている、ということなんだろうか―――。

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 8月1日に発売された彼女のアルバム『MTV UNPLUGGED JUJU』を聴いて、改めてそう感じた。4月30日、日本人女性アーティストとして初めて、『MTV Unplugged』への出演を果たしたJUJU。その時の模様を収録したライブアルバムだ。ジャズシンガーを目指し、18歳の時に単身渡米。ニューヨークで過ごした彼女が、まさに“凱旋”。ニューヨークのMTVスタジオで収録される、伝統のアコースティックライブの主役として登場した。実は彼女、さかのぼること約9年前、2003年に同じステージで行われた『MTV Unplugged 平井堅』の収録に、オーディエンスとして参加していた。もちろんデビュー前で、歌手になることを夢見ていた彼女が、9年後、憧れのステージに立ったことになる。しかも日本人女性アーティストとしては初めてという、そんなビッグなシンガーになって第2の故郷に錦を飾ったわけだ。

 彼女はこのライブにいろいろなタイプの曲を用意していた。今現在の自分を形成している、これまでにさまざまな影響を受けたルーツナンバーから、ブレイクのきっかけになった曲、新しい作品まで、限られた時間のなかでなるべく自分というものを知ってもらうためのセットリストで臨んだようだ。彼女の“色彩豊かな声”を、惜しげもなく披露している。デビュー曲「光の中へ」DeBargeの名曲「I Like It」のカバーでは楽しそうに、R&Bをしっかりと聴かせ、大ヒット曲「明日がくるなら JUJU with JAY'ED」は、ピアノとストリングスだけで披露。どこまでも切ない感情を伝える歌声。もちろん日本語で歌ったが、その素晴らしいメロディーと彼女の表現力で、現地の観客の心を捉えたはずだ。

 9年前、同じスタジオで観客として観ていた平井堅「瞳をとじて」をカバー。そしてこのタイミングでは最も新しい作品の「ただいま」(6月13日発売)を初めて披露。さらに自分にとっての“アイドル”だと、松任谷由実の 「Hello, my friend」と山下達郎の「Paper Doll」をカバーを聴かせてくれている。個人的にはこの「Peper Doll」に脱帽した。アレンジも素晴らしく、そしてこの難しい山下の名曲を見事に自分のものにし、そのボーカリストとしてのテクニックと、表現力の凄さに脱帽。素晴らしいプレイだ。自分のルーツミュージック、日本の音楽の素晴らしさを届けたい、知って欲しいという彼女の想い、強い意志を感じさせてくれるようだ。

 このほかにも、彼女の真骨頂といってもいいスウィングジャズの名曲で、その実力をまざまざと見せつけ、そして「私にとってものすごく大切な1曲」と「奇跡を望むなら...」を、このステージに立てる喜びも含め、万感の想いを込めて歌い上げているように感じた。

 そして何と言っても自分の心の故郷、まさに“ニューヨークへの想い”を、力強くも切なく歌ったビリー・ジョエルの名曲「New York State of Mind」のカバーは名演だと思う。「ニューヨークに来てから、もっと好きになった」というこの名曲をニューヨークの人々を前に、自信を持って歌い、感謝の気持ちを表しているようだ。

 曲によって変わる、色彩豊かな歌声。そして確かなテクニックと圧倒的な表現力。シンガー・JUJUを堪能できる。改めて彼女の歌の力に感動してしまう。また島健(P)を中心とするバックミュージシャン、ニューヨークで活躍するストリングスセクションの演奏とアレンジの素晴らしさも、是非じっくり堪能して欲しい1枚だ。

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  • アルバム『MTV UNPLUGGED JUJU』ジャケット写真

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