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【編集長の目っ!】平原綾香の歌に「ドキッ!」としてしまう理由

 こんなに表情豊かな声で歌を聴かせてくれるボーカリスト、しかもまだ27歳という若さでこの表現力って……。平原綾香が3年2ヶ月ぶりにリリースするオリジナルアルバム『ドキッ!』(2月29日発売)のDISC2、『CONCERT TOUR 2011〜LOVE STORY〜』を収録したライブ盤を聴いて、ど肝を抜かれた。

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 恥ずかしながら、彼女のライブをまだ観たことがなく、なのにこんなこと書くのはおこがましい限りだけど、それでも改めてそのボーカリストとしての才能に、感服するばかりだ。ニューアルバムということで、本当はDISC1の『ドキッ!』のほうから聴くべきだったかもしれない。でも、ライブを観たことがないというのと、CDやテレビで聴くその歌声が残してくれる“余韻”の心地良さにいつも感動していたので、まずはライブ盤から聴いてみようと思い…。

 まず『ドキッ!』のジャケットが新鮮だった。アルバムの紙資料に“あたらしい平原綾香、はじめました”というキャッチが躍っていて、ジャケットは彼女がヘッドフォンをした思いっきりラフなスタイルで、ショートパンツでおなかを出してジャンプをしているという、確かに彼女のイメージではない。新しい。彼女のパブリックイメージというのは、“強いバラード”を多く歌っているせいか、おとなしいイメージなのかもしれない。今までのアルバムのジャケットもどちらかというと“静”の落ち着いたイメージのものが多かった。でも今回のジャケットはカラフルで、“動”だ。確かに今まで見たことがない平原綾香がそこにいるわけだから、「ドキッ!」としてしまうが、でもきっと彼女はこういう明るくて、情熱的で、“素直”な女性なんだろうなあとアルバムを聴いて思った。

 様々な作家陣が紡いだ曲たちに共通しているのは、“強くも優しい言葉とメロディ”。そして“希望”を残してくれるところ。いろいろなタイプの楽曲を、表現力という、簡単な言葉で言っていいのかどうかわからないほど素晴らしい表現力で、歌ってくれている。低音から中音、高音まで、縦横無尽にその表情を変える声は、本当に素晴らしいと思う。

 基本は日本語だけの曲が多いが、中には英詞が含まれているものもあって、このアルバムのリードシングルにもなっている「NOT A LOVE SONG」もそのひとつだ。でも彼女が歌う英語詞は、まるで日本語と同じような感動というか、空気を感じさせてくれるから不思議だ。

 どの曲もしっかりと歌詞が伝わってくる。表情豊かな声で、と書いたが、確かに歌っているのだけれど、歌うというよりも、どこか詞を読んでいる、そっと耳元でつぶやいてくれているような感覚になる。それは、彼女が全身全霊で歌い、素直な心で、聴き手に届けようとする気持ちがものすごく大きな力に変わり、直接彼女と向き合って言葉を投げかけてもらっている、そんな感覚にさせてくれているのかもしれない。錯覚ではない。素直に、真摯に歌と向き合い、ひと言ひと言をきちんとどうやって伝えていくか、という彼女の作品に対する気持ちがそのまま出ているからだと思う。

 悪夢のようなあの大震災からもうすぐ1年。日本中の人々が心に深い傷を負った。被災者も、そうじゃない人も。そんな中で、彼女の歌に癒され、勇気を与えられた人は少なくないはずだ。そして音楽のチカラ、歌のチカラを改めて気づかせてくれたはずだ。彼女の純粋な心、素直な人間性が歌に表れているんだと思う。だから伝わる。

 個人的にすごく胸にしみたのが「いつも いつも」。オフコースの初期(78年)の名曲を、作者でもある小田和正のコーラスと共にカバーしている。シンプルで短い歌詞、約2分という短い曲だけど、心にすごく響く。とにかく深い。シンプルで短い曲だからこそ難しい。鳴ってる楽器はアコギだけ、でも彼女は深い感動を与えてくれる。平原綾香の歌に、まさに「ドキッ!」とさせられるアルバムだ。

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  • 平原綾香
  • 最新アルバム『ドキッ!』(2月29日発売)

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