音楽朗読劇のさらなる可能性を切り拓く「サウンドシアター」の挑戦
新作で描かれるのは日本の伝統芸能・文楽の世界
原作は、北駒生『火色の文楽』(ゼノンコミックス/ノース・スターズ・ピクチャーズ)。主人公は、「バレエ界の星」として期待を一身に集めていたが、練習中の怪我によって、バレエへの夢を絶たれてしまった少年・迫弓矢。失意に暮れなか、幼馴染に連れられて人形浄瑠璃・文楽に出かけた彼は、そこで聴いた義太夫の声に激しく心を揺さぶられる。それをきっかけに、文楽の世界に足を踏み入れ、自分と同年代の三味線奏者の弦治や人形遣いの柑太と出会い、青春の炎を燃やし始めていく。
「最上の芸を追い求めて、もがきながら成長していく少年たちの姿を描いた原作を読んで、どうしてもこの世界を表現したくなりました。文楽の深遠なる世界観にすっかりとらわれてしまったわけです。サウンドシアターとしては久しぶりの和モノであり、しかも現代劇です。これまでとはひと味違った、新たな境地を開く作品になると思います」
太夫・三味線・人形遣い、現役の演者も参加するスペシャルなコラボレーションが実現
そして、「火色の文楽」の世界感を増幅させるのは、音楽監督・土屋雄作率いる音楽陣だ。今回は津軽三味線日本一の称号を最年少で手にした藤井黎元も加わり、物語にさらなる陰影を与える。それだけではない。今回のサウンドシアターには、人形浄瑠璃・文楽から、太夫:豊竹希太夫、三味線:鶴澤友之助、人形:吉田一輔、吉田玉翔、吉田簑悠の参加も決まった。現役の演者によって物語の中の演目も楽しめるという、まさに、ここでしか見ることのできないスペシャルなコラボレーションは必見だ。
文楽の世界を再構築することによって、果たして、どのような独自の世界が面前に展開されるのだろうか。『SOUND THEATRE × 火色の文楽』は、音楽朗読劇のさらなる可能性を切り拓く、そんなチャレンジングな作品である。
(※天崎滉平の崎は、立つ崎が正式表記)