“顔出しNG”なのになぜ人気? 中毒性高いそらるの歌声の魅力とは

 YouTubeやニコニコ動画などで話題の“歌い手”。その多くは顔出しをせず、歌声だけで聴き手を魅了する。その“歌い手”のなかでも作詞作曲を自身で手がけ、アーティスト性を高く評価されているそらる。11月15日に日本テレビ系『ZIP!』に出演した際には、「目閉じていたのに、そらるさんの歌声が聴こえた瞬間飛び起きた」「ZIPを観ていたら、親に歌声いいねって言われた」など、“歌声”に対する声が、ネットで話題となっている。これまで顔出しをしていないベールに包まれたそらるだが、ここまでの広がりを見せたその“歌声”の魅力に改めて迫ってみよう。

聴く人の心を癒やす、地声と裏声を混合したミックスボイスが魅力

 そらるは、宮城県出身の歌い手で、2008年からニコニコ動画の「歌ってみた」を中心に活動を開始。当初からその歌声が話題になり、ボカロPのDECO*27の楽曲「罪と罰」や「モザイクロール」などのカバー動画はニコニコ動画で殿堂入りを果たすなど、動画再生総数は2億回以上を記録。2012年には1stアルバム『そらあい』でCDデビューし、同作はオリコン週間アルバムランキングで7位を記録。以降、独自に自主流通盤など複数の作品ををリリースしている。現在は、リアルでライブ活動を行う他、テレビ番組やゲームなどのさまざまなタイアップ曲を担当し、放送中のテレビアニメ『ゴブリンスレイヤー』エンディングテーマ「銀の祈誓」が話題を集めるなど、そらるの歌声が、ネットを飛び出して広がりを見せている。

 10代〜20代女性を虜にし、アニメ業界も注目を置くそらるの歌声は、どのようにして生まれたものなのか? レーベルスタッフは、「そらるさんの歌声は、低音から高音まで音域が広く、楽曲のテーマや曲調に合わせて歌唱できる表現の豊かさが、お客さんを惹きつける要因の一つだと思っています。それは、“歌い手”としてマネジメントに所属せず自身で模索しながら培われた、表現能力ではないでしょうか」と分析する。実際にそらるが『ZIP!』でインタビューに応えた際には、「そらるさんの声は、歌声だけでなく地声も優しくて紳士だった」とネットで話題になり、その“声”で魅了していることがわかる。

 また、そらるの歌声の魅力は地声(チェストボイス)と裏声(ファルセット)が混ざった、ミックスボイスを上手く使用していることも、表現の幅を広げている。男性のような声の強さ(地声)を保ちつつ、女性のような高音域(裏声)を出すことによって、強さと優しさを兼ね備えた独自の表現を手に入れた。この歌声についてネットでは「そらるさんの歌声に癒されます」、「歌い手っていう印象だったけど、今はヒーリング効果あるんじゃないかって程の、綺麗な歌声と高音の出し方が綺麗すぎる」、「元気になるし、癒やされる。落ち込んだときに聴いています」と、聴く人の心を癒やしているようだ。

素顔を明かさないベールに包まれた存在だからこそ“生”を求める声が続出

 これまでミュージックビデオや音楽番組などのメディアでも素顔を明かさず、謎のベールに包まれている。『ZIP!』のインタビューでも、映ったのは横からや背後からのアングルのみだった。素顔を見せない理由としてそらる、「ネットから活動を初めて、当時は顔を出すことがすごく怖いことに思えた。それからそのまま顔を出さずに活動を続けています」と、ネットでの活動の良さも怖さも分かった上での判断だったと明かす。しかし、そらるの声に魅了されたファンが、顔を見せてない謎を持つからこそリアルな姿が観たい、生の歌を聴きたいという願望を抱くのは当然のことだろう。

 その願望に応えるように2012年からは、ぐるたみん、赤飯、まふまふなどを排出したイベント『EXIT TUNES ACADEMY』シリーズに定期的に出演するようになり、2013年からは単独公演を行っている。ライブではもちろん素顔を見せているわけだが、こうしたライブ活動を続けていくなかで「怖いという思いもだんだんなくなってきた」と言う。前述のレーベルスタッフは、「彼の歌唱表現が一番発揮されるステージはライブだと思っている」と、そらるの魅力はライブでより発揮されると話す。「観客も、きっかけは動画投稿サイトやCDの音源かもしれませんが、ライブでのパフォーマンスを観て、また来たいという人が単純に増えているからライブ会場も徐々に大きくなっているのではないでしょうか」と分析する。

 2012年には東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREの2デイズだったワンマンライブは人気の高騰と共に規模を拡大し、昨年は全国5公演のツアーファイナルを神奈川・横浜アリーナで開催した。現在は、同じくネットから活動の場を広げたクリエーター・まふまふと2人組ユニット・After the Rain(2014年結成)としても活動。After the Rainとしては、今年8月にさいたまスーパーアリーナで2日間ライブを開催するほどの人気を得ている。

独自の世界観も人気の要因 性別世代問わず広がるファン層

 ライブには10代〜20代の女性だけではなく、男性や親子連れなど非常に幅広いユーザー層にも広がっている。「中学生くらいの女子とお父さんが、一緒になって一生懸命ペンライトを振っている姿が凄く微笑ましく印象に残っています」(レーベルスタッフ)。彼が生み出す世界観も人気の要因だ。例えば昨年、神奈川・横浜アリーナを行ったツアーのタイトルは「夢見るセカイの歩き方〜」で、After the Rainのさいたまスーパーアリーナ公演のタイトルは「雨乞いの宴/晴乞いの宴」だったりと、ゲームやファンタジーの世界と親和性を感じさせる独自の世界観を持っている。

 「ライブでは、一緒に盛り上がれるアップテンポな楽曲や、彼の原点である“歌ってみた”によるカバー歌唱を始め、バラードやミドルテンポでは、観客がじっくりと聴きながら涙する姿も見受けらます。また、何より応援してくれる方々を一番に考える姿と感謝の気持ちが、“歌い手”として第一線で活躍し続ける彼の原動力ではないでしょうか」(レーベルスタッフ)。そらるのライブ人気はさらに高まっており、来年は3月から『SORARU 10周年記念ツアー』を開催。4月13日とファイナルの14日は、千葉・幕張メッセ国際展示場4〜6ホールで行う。

 ライブでも魅了するその歌声は、激しさのなかに優しさを感じさせる独自の世界観を演出。高音域では叫ぶように歌い、低音域では重低音の効いた深みのある声を聴かせ、ミックスボイスで癒しを与える“そらる”。オリジナリティあふれるオンリーワンの“声”は、ネットを飛び出し、ライブを通してリアルな場へと広がりつつある。

(文/榑林史章)

提供元: コンフィデンス

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