サントラの気鋭とタッグ Do As Infinityと澤野弘之が語る“マッチングの妙”
お互いのキャリアが違う分、最初の1曲が大事
「Do As Infi nityさんを知ったのは19歳、20歳の頃。当時観ていたCX系ドラマ『二千年の恋』の主題歌「Yesterday & Today」を聴き、“この方たちもエイベックスのアーティスト?!”と驚いた記憶があります。お話をいただいたときはうれしかったんですが、これまで僕が関わってきた方たちとはキャリアが違う。仕事のやり方でぶつかったら、作業が進まなくなるかもしれないという不安もありました。“とにかくまず1曲作るので、その感触で本当に一緒にやるかどうか判断してください”とお返事したんです」(澤野)
その最初の曲が、第1弾シングルの「Alive」だ。デモを聴いた大渡亮は、「澤野節を踏襲しながら、そのままDo As Infi nityの作品と言ってもおかしくないほど」の完成度に感動したという。一方の伴都美子は、「正直、最初は腰が重たかった」と振り返る。「根が臆病なので、新しいことにトライをするとき、考えすぎちゃうところがあるんです。でも、ある日ふと、難しいことはおいといて、シンプルに澤野さんの音楽と向き合ってみようと思った。そうしたら、クラシックや映画のサントラが好きだったりする自分の嗜好にもヒットして、“よし、乗っかってみよう”と急に前向きになりました(笑)」
アーティストとサウンドプロデューサーマッチングの妙とは
「元々ギターが好きで、こう弾いてほしいという自分のクセのようなものもあるので、それは譜面に起こし、あとは自由にやっていただきました。大渡さんのソロでDo As Infi nity感が加われば、結果としていいコラボになると思っていました」(澤野)
「間奏にスペースが空いてると、せっかくだからソロを弾こうという気になりますね(笑)。曲のヘヴィさに食いついて後押しするような、いつもより速いフラッシーなソロに挑んだりもしました」(大渡)
「歌の面でもいろいろチャレンジしました。コーラスの積み方ひとつとっても、これまで経験したことのない指示をたくさんいただきました」(伴)
「ワイドに広がる厚いコーラスが好きなんですよ。伴さんの声が乗るととても新鮮な響きになる。チープな言い方ですが、毎回“やっぱりカッコいい”と思っていました」(澤野)
ハードなメランコリックさと、歌詞からくる爽快感がアルバムの魅力だが、それと対極にある、ピアノとウッドベースとアコギで奏でられた「唯一の真実」も白眉。「歌だけで始まるバラード」という伴のリクエストに澤野が応え、その曲に触発された伴が、自らの深いところにあった命への思いを初めて綴った。
「出産し、生きるってこんなに大変なのかという日々を送る私にとって、生きること、人生、命は最大のテーマ。連綿と続く命の繰り返しのなかで私もまた生きていると実感しています。『ALIVE』はその証のような作品なのかなと。産み落とせてホッとしています」(伴)
19周年を迎えるアーティストと気鋭のサウンドプロデューサー。距離感の取り方に時間がかかった分、歯車が噛み合ってからの展開には目を見張るものがあった。双方の視界が予想外に開けたという意味で、マッチングの妙と言えるだろう。
(文:藤井美保/写真:HIRO SATO)
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