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“音楽の表現”を捉えた自己発信型の現代的アーティスト・向井太一

 メディアだけじゃなく、リスナーが音楽を聴くプラットフォームがこれだけ多様化すると、当然ながら、自身の発信力やセリフプロデュース力が大事になってくる。そんな中、興味深い立ち振る舞いを見せてくれているのが、福岡県出身で、現在25才のR&Bシンガー、向井太一だ。SoundCloudに楽曲を継続的にアップしてきたことでメジャーデビューのチャンスを掴んだ向井は、曲のみならず、ファッション、ビジュアル、パッケージ、SNS、ライブパフォーマンスといった周辺要素も込みで“音楽の表現”を捉えている現代的アーティストだと言えるだろう。

音楽以外の表現方法で広げられるんじゃないかなと思っている

 どんなに優れたシンガーでも、いい曲をいい演奏で歌っているだけでいいのかというと、それだけではなかなかヒットに結びつかなくなっているのがいまの時代。すでに散々言われてきたことだが、ラジオ、テレビ、ネットいうメディアだけじゃなく、リスナーが音楽を聴くプラットフォームがこれだけ多様化すると、当然ながら、自身の発信力やセリフプロデュース力が大事になってくる。そんな中、興味深い立ち振る舞いを見せてくれているのが、福岡県出身で、現在25才のR&Bシンガー、向井太一だ。SoundCloudに楽曲を継続的にアップしてきた彼の自己発信型の活動が目にとまり、トイズファクトリーと契約。今年8月にSoundCloudで発表してきた曲に新曲を加えたEP『PLAY』をサブスクリプション限定で発売後、待望の1stフルアルバムを完成させた。「海外では今、アルバムというよりシングル単位で、しかも、デジタルでリリースすることが主流になってますけど、こういう時代の中で、1つの作品としてアルバムを出すっていうことが、僕の中でひとつの区切りというか、意思表示だと思っていて。僕は、サウンド面だけでなく、アートワークなど、音楽以外の表現方法としても伝えたいことがたくさんあるんですね。アートワークや映像によって、曲の聴こえ方もすごく変わるって思っていて。だから、今回のジャケも、僕がカメラマンもデザイナーもセレクトさせてもらったんです。今はそういうアーティストすごく増えてると思うんですが、僕はサウンド面だけでなくて、パッケージとして、しっかりと自分で作り上げていきたいっていう思いがすごく強い。自分が伝えたいメッセージや表現したい世界観の最大値みたいなものがギュッと詰まった1枚になってますね」

 ファッション雑誌のウエブサイトでのコラム執筆やモデルとしても活躍する彼は、曲のみならず、ファッション、ビジュアル、パッケージ、SNS、ライブパフォーマンスといった周辺要素も込みで“音楽の表現”を捉えている現代的アーティストだと言えるだろう。「いろんなことをやってるんですけど、全部、音楽活動の一環として考えていて。サウンド面では、今のJ-POPシーンにはないようなものをやっているので、広がる速度は遅いと思うし、手に取っていただくチャンスも他のジャンルと比べると少ないと思う。その間口をアートワークだったり、音楽以外の表現方法で広げられるんじゃないかなと思っていて。最終的にどの入口でもいいから、自分のコアの部分である音楽に行き着いてくれればいいなと思ってやってますね」

 サウンドの根底にあるのは最新のトレンドであるオルタナティヴR&BやHIP HOP、レベルミュージックとしてのファンクやレゲエであるが、アルバムのジャケットやアーティスト写真とはなかなかリンクしない。「僕はずっと、アーティストとしてのビジュアルと音楽性や声にギャップがあるって言われてきて。それは、自分の中で強みだと思ってますね。僕がやってるのは、一般的には、敷居が高い音楽だと思うんです。言い方は悪いですけど、R&Bを歌ってる人はこういうビジュアルじゃなきゃいけないっていう偏見があって。確かに僕はブラックミュージックが好きで聴いてきたけど、決してゴリゴリではない(笑)。あくまでも見た目は等身大でリアルでいたいなと思うし、今までR&Bを聴いたことのない人に新しい出会いを提供して、音楽の間口を広げる人というか、ジャンルに対する偏見やボーダーを外す役割になれたらいいなと思っていて。だから、楽曲の世界観は人間臭くてエモーショナルなものを表現してるんですけど、ビジュアル面は無機質にしてる。ジャケットだけを見るとどんな音楽なのか、どんなジャンルなのかがわからない。そういうギャップを持たせるようなものを意識して作っていますね」

ラックミュージックをポップスに昇華したい

 便宜的に“R&B”というジャンルのラベルを貼ってしまったが、彼自身は「そのジャンルのアーティストではないって思っている」と断言する。「僕は自分のことをJ-POPだと思っているんです。例えば、宇多田ヒカルさんのように、ブラックミュージックをポップスに昇華したいっていう気持ちがすごく大きくて。もちろん洋楽で育ってはいるんですが、日本の音楽もすごく好きだし、『紅白歌合戦』も出たいし『ミュージックステーション』も出たいんですよ(笑)。評価されたいっていう欲求がすごいあるんです(笑)。だから、今回は歌詞の世界観とサウンド面で、アンセム的な要素とトレンド的な要素のバランス、デジタルと生音、体温を感じる唱法の配分をすごく考えた上で制作をしていって。尖った面での評価だけでなく、より広い範囲でポップスに昇華できるかが課題だったし、その1つの起爆剤にはなったんじゃないかと思います」

 ジャンルや時代を縦横無尽にクロスオーバーさせ、ライブハウスやクラブとお茶の間をつなぐ本作に、彼は“青い炎”を意味する『BLUE』というタイトルをつけている。「悩みや葛藤、コンプレックスや嫉妬から反発する力――いわゆるネガティブからポジティブに変わる力というのと、アーティストとしての意思表明も込めていて。青い炎は一見、静かで動きも少なけど、派手な赤い炎よりも熱くて、ちょっとの力や風では消えない。今ってジャンルもアーティストの消化もすごく速いと思っていて。新しいプラットフォームができることによって、いろんなアーティストやジャンルを聴く機会が増えたっていうプラスの意味がある反面、残っていくことはすごく難しいんですよね。その中で、僕はしっかりと芯のあるアーティストになりたいっていう意思表明を、1stアルバムというひとつの区切りに提示したいなと思ってこのタイトルにしましたし、時代性を感じさせつつも、消化されずに残っていく、新しいクラシックになればいいなって思ってますね」

(文:永堀アツオ)

提供元: コンフィデンス

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