雨のパレード、CDが売れない時代のアーティストの想い「音楽の入れ物にはしたくない」

 テレビ東京系ドラマ『下北沢ダイハード』のエンディングテーマで注目を集めつつある男女4人組ロックバンド・雨のパレード。“CDが売れない”と言われる時代だからこそ、「CDを単なる音楽の入れ物にはしたくない」と“モノ”としての魅力や付加価値を追求している。“ノスタルジック”な古き良き音楽に注目した本作とバンドとして未来について、ボーカルの福永浩平に話を聞いた。

CDの良さを知っている世代に、自分たちの存在を知って欲しい

 テレビ東京系ドラマ『下北沢ダイハード』で、エンディングテーマ「Shoes」を担当している4人組ロックバンドの“雨のパレード”。昨年3月にメジャーデビューしたバンドで、今作「Shoes」は、ロックバンドながらシンセサイザーを大胆に取り入れ、80年代を彷彿とさせるサウンド感をフィーチャーした楽曲として注目を集めている。「CDの良さを知っている世代に、自分たちの存在を知って欲しい」、という“作戦”で作ったのが、「Shoes」だったと中心人物の福永浩平(Vo)は話す。
「宇多田ヒカルさんなどがCDを出して何百万枚も売れた時代がありましたが、それはもちろん楽曲が良かったからですが、当時CDを買っていた世代の方をこちらに振り向かせたいと思って作りました。それで、ジャケットやミュージックビデオも含めて、“ノスタルジック”をテーマにして、シンセやドラムの音色を懐かしいものにしたり、歌詞にもそういうテイストを落とし込んだりしています」

 しかし福永は、実際には80年代は通っておらず、今の洋楽の中からそれを見つけ、新鮮さを感じて取り入れていった。80年代テイストをリヴァイヴァルしているアーティストには、福永と同様に80年代を通っていない者が多いが、ほとんどが当時の日本のシーンからのインスパイアだ。その点で、洋楽からのインスパイアだと言う福永の存在はイレギュラーだ。
「例えばディスクロージャーなら、ジュノー106や60のシンセを使っていて。トロ・イ・モワなら、ローランドのJX-BPとか。そういう洋楽のインディー系アーティストのサウンドに出てくる、昔のアナログシンセの音を参考にしています。狙い通りと言うとあれですけど、大人の方で気に入ってくれる方が多いし、若い方でも反応してくれる方がいて、それは嬉しいですね」

 彼らがバンドを結成して上京した頃には、すでに“CDが売れない時代”と言われるようになっていた。バンドの収益はライブで販売するグッズなどの物販が多くを占めている現状だが、彼らはそれでもバンドをやり、CDを売りたいと言う。
「CDのモノとしての価値が、僕は好きなんです。モノとして所有したい気持ちを、ユーザーに対して煽りたいと言うか。持っている優越感を、もっと味わってもらいたいという感じですね。僕自身漫画も好きで、ネットで読むことが主流になっているけど、大好きな松本大洋さんの作品はコミックで持っていたい。配信で聴いて良いなと思った作品は、改めてCDやアナログレコードを買うことも多いです」

自分たちの好みの音楽で、時代を変えて行きたい

 CDとして売ることを考えた時に、モノとしての魅力や付加価値がどうしても必要になる。そこで彼らが付加したのが、ノスタルジーや所有欲という、数値では計れないものだった。近年CDジャケットのアートワークは、ネットで並んだ時のサムネイル映えを意識したメンバーの顔をアップにしたものなどが多いが、「Shoes」のスニーカーをデザインしたアートワークは、おしゃれでちょっと飾っておきたいなと思う作品性の高いものになっている。これも付加価値の1つだろう。ジャケットに限らずタオルやTシャツなどの定番グッズのデザインもしかりで、こうしたアイデアも福永自らが提言したものだという。
「上京した時に、音楽で食って行きたいと思っているのに、CDが売れない時代になったと言われ、じゃあ何で食って行くのか考えた時にグッズだと思ったんです。実際にバンドシーンでは、グッズの収益が大事になっていて。グッズの個性や多様化が、すごく大切だと感じるようになっていました」

 音楽も個性的だが音楽に限らない、さまざまな方向にアンテナを張って活動していることから、メジャーデビューしても、その創造性の高さは変わっていない。そんな彼らに、時代が期待することとは?
「僕らは1991年生まれで、同じくらいの年齢のミュージシャンやバンドがけっこう多くて(例:米津玄師、OKAMOTO’S、コムアイなど)。安易な四つ打ちダンスロックが流行った時に、僕らもそうですけど“え?”と疑問符を投げかけた同世代のバンドが多かったんです。僕らの世代は、自分たちのやりたいことをやる、“個”が強い世代だと思っています。だから僕らのバンドと言うより、僕らの世代で、音楽シーンの流行りとかいろいろなものをひっくり返したいと思っています。自分たちの好みの音楽で、時代を変えて行きたいです。そこに対して期待されているんじゃないかと思うし、実際にそうやっていきたいと思っています」

 音楽もネットも、実際に手に取ることのできないものだからこそ「CDを単なる音楽の入れ物にはしたくない」とも話す福永。何がいつブレイクするか分からない、横並び一線のバンドシーンにおいて彼らの存在が、新しいムーヴメントの呼び水となるかもしれない。

(文/榑林史章)

提供元: コンフィデンス

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