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サカナクション『進化し続けるバンドが挑んだ“最先端ライブ”をレポート』

最先端の演出効果を多数ほどこし、それらを活かしつつもバンド・サカナクションを堪能させてくれた、総動員数約8万人を記録したライブツアー『SAKANAQUARIUM2013 sakanaction』のハイライト、千葉・幕張メッセ/大阪城ホールの3Daysより、幕張メッセ公演2日目の模様をレポート!!

“ドルビーサウンド”を駆使したライブは日本で初めて

 週間ランキング1位を獲得したアルバム『sakanaction』とともに回った今回の『SAKANAQUARIUM2013 sakanaction』。総動員数約8万人を記録した同ツアーの中でも、ハイライトはやはり5月18日、19日の幕張メッセ、5月22日の大阪城ホールでの公演と言えよう。この3日間は、彼ら最大規模の動員をはじめ、いくつかのトピックがあった。そのひとつが6.1chサラウンドによるライブ。公演内容の一部が立体的な音像で楽しめたこの3日間は、数多くのスピーカー類を導入。この幕張2日目も計228本のスピーカー類を用い、時折、まるで生き物のように音の数々が流れ、回り、弾け、襲いかかり、包み込んできては、会場の2万人と共有体感したのだった。ちなみにこのスピーカー数は同会場最多。また音響技術開発の『ドルビーラボラトリーズ』と協力して行われたサラウンドのライブは日本初という。

 会場が暗転すると、いきなり6.1chサラウンドがその存在感をより色濃くする。移動する音片や音塊。目に見えそう、触れられそうな音像のリアルさに驚く。続いてスクリーンに映し出されたデパーチャー。川から海へ、そしてまた川へ。まるで、“今回のツアーも1周回って、成長して帰ってきたよ”とでも言っているようだ。ステージ上のスモークと白色のバックライトのなか、現れたメンバー。5人1列に並び、用意されたラップトップの前でプレイを始める。オープニングは「INORI」。センターのボーカル&ギターの山口一郎が歓声というオーケストレーションの指揮を始める。続く、「ミュージック」では、重いビートの上“コーラス部”を会場に任せる。同曲中盤の暗転後、ギター、ベース、キーボード、ドラム、そしてボーカル(センターポジション)と、各々のフォーメーションについていたイリュージョンには興奮。まずはニューアルバムからの楽曲たちが会場を温め、巨大なフロアの隅々にまで熱を行き渡らせる。

 次のブロックは土着的なビートの曲たちが目立つ。縦横無尽に飛び回るレーザーやムービングのなか歌われた「アイデンティティ」では、ドラムの江島啓一が放つラテンビートの高揚感が会場を襲い、「ルーキー」では、岡崎英美の重厚なシンセ音とベースの草刈愛美とギターの岩寺基晴、そして山口の3人によるパーカッションが無機質さに生命力と躍動感を寄与していく。

 ニューアルバムからの楽曲ゾーンに入ると、彼ら独特の寂寥感(せきりょうかん)が溢れた「mellow」、不思議な符割も斬新な「ボイル」、彼らのファンキーな部分を堪能させてくれた「アルデバラン」、そして春独特のセンチメントを会場に呼び込んだ「なんてったって春」が会場を各々の歌世界へと誘い、「ホーリーダンス」では、ポリリズムを刻む岩寺のギターも冴え、ステージ上のニンジャ―ライトが、まるで生き物のように運動を繰り広げていく。

 何もこの日は、テクノロジーをひけらかし、最先端ばかりがアピールされたわけではない。中盤のスクリーンやアンコールでのステージバックの装飾物に映し出されたオイルアートはリアルタイムで人が動かしていたものだし、ほかにも風力でうごめくブルーの長い筒や、ハッとした美しさを演出したスノーマシーンが、高度なテクノロジーや先鋭的な演出とは対象的なハンドメイドさにて、技術では表し切れない美しさや計算では測りしれない無軌道(むきどう)さを会場にもたらし、なおのこと“ライブ感”を助演していた。

これからも新しい体験を与えていきたい(山口)

 加えて驚いたのは、例えば6.1サラウンドにしても、これほど大がかりなシステムを導入しながらも、それに頼り切っていないところ。普通、“使わなきゃ損”とばかりに駆使しそうなものだが、終始適材適所/効果てき面にそれらを活用。そのメリハリが時にハッと、時にドキッと、時に美しく、時に儚げへと導き、はたまた真正面から飛んでくるものは、よりダイレクトに、ストレートに心を直撃してくる効果を生んだ。

 しかし、この日の圧巻は中盤にあった。「僕と花」、「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」、「ネイティブダンサー」は、それぞれに「―SAKANAQUARIUM 2013 VERSION―」をつけていたように、このツアーならではのスペシャルさが楽しめた。と同時に、彼らが“ライブバンドである”という強い自負も。特にライブならではのインタープレイを繰り出すことで高揚感をあおり、いくつものピークを生み出した「僕と花」、再び5人が横一列に並び、ゴーグルを装着しプレイした「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」では、無数のレーザーパルスが会場を飛び回るなか、あえて主体の歌フレーズは歌わずに、<気まぐれな君の色 部屋に吹くぬるいその色>を切り取り、デフォルメすることで作品とは違った意味合いを歌にもたらせた。

 そして、“フィジカルなロックバンド・サカナクション”が目を見開き、我々を飲み込みにかかった後半。会場中にバウンスを生んだ「アルクアラウンド」、ディストーションギターと重厚なコーラスが感情を騒ぎ立て、疾走感のあるサウンドが会場を前のめりにさせた「Aoi」、そして本編ラストの「夜の踊り子」では、ミュージックビデオにも登場した日本舞踊の舞い手も登場。曲に合わせて演舞し、彼らの楽曲が実はみやびさや優雅さ、叙情性を兼ね備えていることが立証されていく。

 アンコール待ち。先のサラウンドを用い、大型飛行機が上空を駆け抜けていく。再びステージに現れた5人。アンコールでは3曲がプレイされた。「ストラクチャー」は、山口の指揮の下、みんなのハミングで楽曲を成立せしめ、「ナイトフィッシングイズグッド」での拭い切れない独特の寂寥感(せきりょうかん)は、彼らの変わらない根本を改めて教えてくれた。そして、ラストは「朝の歌」。ゆっくりと夜が明けていく雰囲気が会場全体を浄化し、徐々にみんなを海面へと導き、この日の幕は引かれた。

 「これからも新しい体験を与えていきたいし、より多くの人に聴いてもらえるバンドになりたい。“大きい会場でやる際には、何か新しいことをやってくれるんだろう?”と常に期待されるバンドでいたい」と山口はラストのMCで語った。サカナクションは、これからも自分たちの音楽を、都度最も幸せな形で我々に伝えてくれることだろう。その為の、このシステムであり、この演出だったのだ、とライブ中、彼らの音楽に包まれ、何度も強く思った。最新鋭のステージ演出を魅せてくれた、この日のライブは、同時に“フィジカルなロックバンド・サカナクション”を私の中で浮き彫りにしてくれたのだった。
(文:池田スカオ和宏/撮影:石阪大輔(hatos))

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サカナクション SAKANAQUARIUM2013 sakanaction
【放送日時】7月28日(日) 午後9時〜 [WOWOWライブ]

サカナクションがこの夏出演するフェスも続々放送!
「現地より生放送!ROCK IN JAPAN FES.2013」
【放送日時】8月2日(金)〜4日(日) 午後3時〜
「現地より生放送!SONICMANIA 2013」
【放送日時】8月9日(金) 午後10時〜


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