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【SMAP連載22】逆境が生んだベスト盤、“SMAPとは何か?”の答えがここに

“SMAPとは何か?”を伝える、逆境の中で生まれたベスト

 ところで、SMAPのアルバムの中で最高のセールスを記録しているのが、2001年発売の『Smap Vest』である。本作は、シンプルにデビューからのシングルを集めたベスト盤(収録順は発売順とは逆で新しいものから始まる)で、それまでずっと単一パッケージで発売してきたSMAPが、初めてジャケットの色を変えた12種類の初回盤(+通常盤1種類)で展開することでも話題になった。これは、SMAPのファン以外も積極的に購入したという現象も含め、“キラキラしたアイドル”としてのSMAPの存在感を決定づけるアルバムと言える。

 現時点で『SMAP 25 YEARS』は、SMAPのアルバムとしては2番目に高い累積売上となり、その次につけているのが95年に発売されたSMAP初のベスト盤『Cool』だ。このアルバムでは、「笑顔のゲンキ」「かなしいほど青い空」などをリアレンジ。ニューヨークで活躍するジャズミュージシャンによる演奏で、SMAPの6人も何曲かはレコーディングをし直していた。個人的にもこのアルバムはとても好きで、それまでの洋楽至上主義だった自分の邦楽に対する劣等感を覆し、もっと自由な音楽世界を受け入れるきっかけをくれた、狭い世界と広い世界を繋ぐ“窓”のようなアルバムだった。

 他にも、SMAPのベスト盤は企画性に富んだものが多く、97年発売の『Wool』はしっとり系と元気系の名曲をアルバム・シングル両方から集めた2枚組。2001年発売の『ウラスマ』(表記はSmapの文字全体を裏返し)はアルバム曲とカップリング曲をメインに、シングル曲にもアレンジを加えたいわゆる“裏ベスト”。2011年には、“みんなを勇気付けるSMAPの曲”というテーマでインターネット投票がなされ、ランキングの上位15曲を収録した『SMAP AID』が発売された。でも、そんなにバラエティに富んだベスト盤の中でも、今回ほど“SMAPとは何か”を伝えてくれたものはない。それは多分、ファンにとってもSMAPにとっても、2016年の逆境の中で生まれたアルバムだったからなのだと思う。本当に皮肉なことだが、そう思う。

つらく厳しい1年を過ぎ、2017年は“究極の保存食”を手に

 昨年11月、10年ぶりに“スマスマ”の「S-Live」に登場した松任谷由実が、放送後、「1度でも成功を手にしたアーティスト、ましてやスターは、栄光と同じだけの不条理も受け入れなければならないのだ」とツイートしていた。番組で歌われたのは、「守ってあげたい」と「Smile for me」。どちらも“他者を心から思いやる歌”で、SMAPの歌の世界観と深く通じるものがあった。

 2016年は、SMAPの5人にとってもファンにとっても、たくさんの“不条理”がのしかかり、つらく厳しい1年だったけれど、年が明けた今も不思議と“絶望”はない。この、栄養価が高くて美味しくて、保存の効く“究極の保存食”のようなアルバムがあれば、いつか彼らがさらにパワーアップしてから再び“集合”する時を、信じて待っていられる気がするからだ。
(文/菊地陽子)

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