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サカナクション、革新的な演出とロックバンドとしてのダイナミズムで魅せた日本武道館2days公演

 約1年半ぶりとなるサカナクションの全国ツアー「SAKANAQUARIUM 2015−2016“NF Records launch tour”」、10月27日、日本武道館2days公演の2日目。照明、映像、演出はさらにバージョンアップされると同時にロックバンドとしてのダイナミズムも強烈に伝わってくる、本当に素晴らしいカムバック・ライブだった。

クリエイティブ面での様々なトライアルが強く反映されたツアー

 ベーシストの草刈愛美(Ba)の妊娠・出産に伴い、ライブ活動を休止していたサカナクションは、この期間も止まることなくクリエイティブな進化を続けていた。まずはQrion、agraphといった気鋭のトラックメイカーも参加したカップリング&リミックス集『月の波形 〜Coupling&Unreleased works〜』を発売。また、クラブイベント「NIGHT FISHING」を開催し、山口一郎(Vo&Gt)がDJとして登場したほか、真鍋大度氏(クリエイター/プログラマー)をはじめアート、ファッションのクリエイターが多数参加し、刺激的な創造性に満ちたコラボレーションが繰り広げられた。さらに山口がファッションデザイナーの森永邦彦によるブランド「ANREALAGE」のサウンドディレクターとしてパリコレに参加することも話題に。また、サカナクションは新レーベル「NF Records」を立ち上げ、待望のニューシングル「新宝島」を発表。この1年半における様々なトライアル、幅広いジャンルとのコラボレーションは、今回のツアーにも強く反映されていた。

 まずは和太鼓奏者を中心とした“GO COO&GORO”のパフォーマンスから。ステージ前方に12台の太鼓が並び、プリミティブなリズムセッションが繰り広げられる。さらにディジュリドゥ(オーストラリアの先住民、アボリジニの伝統楽器)、銅鑼なども加わり、エキゾチックな空間を演出。そのまま会場の照明が落とされ、凄まじい歓声のともにライブがスタートした。ステージ上の高さ3〜4mほどの位置に設置された四角形の白い幕にツアータイトルが映された後、正面にひし形(◇)の窓が開き、メンバー5人の姿が見える。オープニングは5人横並びのDJ仕様による未発表曲「N.F.I.G REMIX」。近未来的のトライバル・ミュージックと形容したくなるビートが鳴らされ、アリーナ(オールスタンディング)のオーディエンスが気持ち良さそうに身体を揺らす。

ロックバンドとしての本質を改めて示した武道館ライブ

 そのままバンドスタイルに移行、いきなり「アルクアラウンド」「セントレイ」といったヒットチューンを連発し、観客の興奮は一気に頂点へと達する。印象的だったのは、メンバーの演奏、出音がさらに向上していたこと。正確さを増し、より繊細なリズムを描き出していた江島啓一(Dr)、エッジの効いたサウンドと鋭角的なフレージングを繰り出す岩寺基晴(Gt)、しなやかなベースラインで楽曲のグルーヴに深みを与える草刈愛美(Ba)、キャッチ―な音色と美しいメロディで楽曲を彩る岡崎英美(Key)のアンサンブルがこれまで以上に充実していた。最新鋭のダンスミュージックを取り入れることで2010年代の音楽シーンをけん引してきたサカナクションだが、この日の彼らはエモーショナルなロックバンドとしての本質を改めて示していたと思う。

 「みんな、ただいま! 自由に、自分のステップで踊ってください。僕も今日はめちゃくちゃ踊ります」という山口のMCのあとは、「蓮の花」「壁」などのダークかつシリアスな雰囲気のナンバーが続く。サイケデリックなイメージのCG、オイルアートを使った映像、楽曲の世界観とリンクしたライティングも素晴らしい。これまでに築き上げてきた演出、ステージングをひとつひとつ精査し、バランスを変化させることで斬新な音楽空間を作り出す。
 「ネイティブダンサー」「ホーリーダンス」などのダンスチューンによってライブはクライマックスへと向かう。「夜の踊り子」では和服に身を包んだ女性の踊り子ふたりが登場、さらに“GO COO&GORO”とのセッション(原始的なリズムと先鋭的クラブミュージックの融合!)を挟み、代表曲「アイデンティティ」へ。原点回帰と新しいトライを共存させたステージングからは、現在のサカナクションのモードがはっきりと伝わってきた。そしてラストは「改めまして、僕達、私達、サカナクションです」という山口の挨拶に導かれた新曲「新宝島」。独特のノスタルジーを感じさせるサウンド、“次の目的地を描くんだ”という歌詞がひとつになったこの曲は、彼らの新たなスタートを端的に象徴していたと思う。

山口「必ずみんなに音楽で恩返しします」

 アンコールではメンバー全員が“今日のセットリストで好きだったところ”をコメント。「わかる! あそこってさ…」と嬉しそうに解説する山口の姿も印象的だった。さらに産休明けの草刈が「子供が生まれて母さんになれたように、みなさんがいるからミュージシャンでいられるんだなって改めて思いました」と語ると、それを受けて山口も「これからどんなことをやるかわかないけど、必ずみんなに音楽で恩返しします。いい曲を作るのは当たり前。それだけじゃなくて、みんなに音楽で何かを伝えられるように、これから真面目に堅実に誠実にがんばっていきます」と発言、会場から大きな歓声が起きた。

 2010年10月以来、約5年ぶりの日本武道館ライブで見事なカムバックを遂げたサカナクション。「SAKANAQUARIUM 2015−2016“NF Records launch tour”」は2016年2月からホールツアーに入る。このツアーで得た経験は必ず、次の作品につながることになるだろう。

(文/森朋之 写真/山本マオ)

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