希望、勇気をもらった加藤和彦さんからの言葉

──デビュー5年目の頃にはすでにトップアーティストの仲間入りを果たしたわけですが、何か実感はありましたか？
木村その少し前なんですけど、3rdアルバム「Scratch」（2007年）で初めてオリコン１位を獲らせてもらって、アルバムで認められたということがすごく嬉しかったんです。それと、その時期あたりから関わってくれるスタッフの方が増えたことも、自分の中では大きな転機でした。それまでは自分の世界観のことばかりに集中してたけど、自分だけの満足で終わっちゃいけない。もう少し歌手として大きくならなきゃいけないという気持ちになったのもその頃のことでした。

──ところでカエラさんは、コラボレーションやプロデュースなどでたくさんのアーティストと交流されてきましたが、“恩人”はいらっしゃいますか。
木村一人だけ挙げるとしたら、サディスティック・ミカ・バンドのボーカルとして誘って下さった加藤和彦さんです。デビューから3年目のことだったんですけど、当時かなり奇抜な髪型や格好をしていたせいか、けっこういろんなことを言われていて……。そういう格好をするのも真面目に自分の世界を追求してのことだったんですけど、あまりにもいろんなことを言われて、「これでいいのかな」と迷ってた時期だったんです。そんなときに加藤さんが「今、ミカバンドで歌えるのはカエラしかいない」とおっしゃってくれたんですよ。

──それはもう、女性シンガーとしては最大の賛辞ですね。
木村本当に。しかも「カエラは正しい日本語で自分の歌を歌ってる」っておっしゃってくれたんです。「リルラ リルハ」とか歌ってる私がなんで!?　って思いましたけど、その言葉が自分の中ですごく大きな希望になって。迷いもすべて晴れて、やっぱり自分がやってることは間違いじゃない。自分に嘘のない活動を続けていこうという勇気をいただけました。

──加藤和彦が認めたシンガーとして、世間からの見方も変わったのでは？
木村それは確実にあったと思います。50代、60代の方にも興味を持ってもらえるきっかけにもなりましたしね。でも何より、日本にロックという表現を持ってきた人たちと一緒に音楽を作る機会をいただけたことはとても大きくて。活動初期にそういう大切な時間をいただけたことに、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。

10年を機にもっと世界を広げていきたい

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  『MIETA』通常盤

──アルバム『MIETA』は、昨年６月に設立したプライベートレーベル「ELA」からの第1弾オリジナルアルバムですが、改めてプライベートレーベルを設立した意味を教えてもらえますか。
木村さっきも言ったように、デビュー当時から私は自分のカラーややりたいことを追求してきたので、基本的なことはこれまでとは変わらないと思うんですね。ただ、プライベートレーベルを持つことで、これまで以上に自分の世界を突き詰めていくことができる。そこが、10年目以降の自分にとって大きいことだと思っています。それとある意味、好き勝手できる場ですが、一方で私のためだけに動いてくれるスタッフへの責任もある。そういう覚悟を持つのもいいことかなと。

──プライベートレーベルだからこそできる、これから実現していきたい活動はありますか？
木村デビューした頃は歌以外の活動はしたくなかった、と言いましたが、目標だった10年目を迎えることができたので、これからはもっと自分の好きな世界を広げていきたいと考えています。もちろん音楽が柱にはなるんですが、絵を描くことも好きだし、写真も好きだし、映像アートも興味があるし。音楽もCDやライブとは別の表現の方法があるかもしれないですしね。あとは、もし私が「この人たちステキ！」というアーティストと出会って、もしも運良くレーベルが決まってなかったら、「ELA」に誘うこともできますよね。いい音楽をやってる新しい人を探すのは大好きなので。

──カエラさんが紹介したことをきっかけにブレイクしたアーティストも多いだけに、目利きに期待しています！
木村もちろんやりたいことすべてを一気にはできないんですけど、タイミングを見ながら、その都度、自分のやりたいことを一つひとつ実現していきたいなと思っています。

──では最後に、5年ぶりのライブハウスツアーの抱負をお願いします。
木村私の一番大好きな場所であるライブハウスで、10周年企画の締めくくりができることが楽しみで仕方がないですね。アルバムもこのツアーに向けて、バンドサウンドで盛り上がれる曲を意識して作りましたし。とにかくこの10年やってきたことを、このツアーですべて出します。ぜひみなさん遊びに来て、一緒に楽しみましょう！

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（文／児玉澄子）

★PROFILE★
木村カエラ
1984年10月24日生まれ、東京都出身。2004年6月にシングル「Level42」でメジャーデビュー。2004年12月8日発売のアルバム『KAELA』で初TOP10入り。2005年3月30日発売のシングル「リルラ リルハ」はシングルでは初のTOP10入りとなっただけでなく、最高3位、累積11.7万枚のヒットを記録。その後もコンスタントにヒット作を送り出し、2007年2月7日発売のアルバム『Scratch』で自身初となる1位を獲得した（累積売上36.0万枚）。2014年から2015年にかけて10周年イヤーとして、ベストアルバム『10years』発売や記念シングル「OLE！OH！」の発売、横浜アリーナ2days公演など精力的に活動中。

木村カエラのプロフィール
【特集】木村カエラ『Sync』インタビュー
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