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坂本真綾『新たな挑戦を重ねた“7年間”を凝縮した1枚が完成!』
チャレンジを繰り返してきた7年間
坂本真綾そうですね。2005年にいろんな方と楽曲作りを始めて、そこからの歴史が収録されているので。前2作とはまた違った意味合いのあるコレクションアルバムになったかな、と。1曲1曲カラーも違うし、すごく幅広い感じになっているんですけど、私のなかではすべてが繋がっている感覚もあるんですよ。
――シンガー、アーティストとしての個性を確立できた、という手ごたえもありますか?
坂本うーん……。デビューから長い間、ひとりのプロデューサー(菅野よう子氏)としか組んでこなかったから、いろんな方とコミュニケーションを取りながら曲を作っていくのは想像以上にエネルギーが必要だったんですよね。その時点でもう9年くらい(音楽活動を)やっていたんですけど(笑)、ゼロからもう1回始まった感じもあって。
――当然、いろんな試行錯誤も……。
坂本そうですね。レコーディングが終わってからも、「こんなふうにすれば良かったかな」とか「こういう方法もあったかも」みたいなことを考えることもあって。そういうことを積み重ねていくうちに少しずつ何かが掴めて楽しめるようになってきたし、ふと気づいたら「どんな曲であっても、歌うのは私だから」という自分への信頼感も出てきて。そういう意味では、“確立”って言えるのかも。
――作詞についてはどうですか?
坂本まず、自分で書くことがさらに増えてきましたね。「ループ」以前は自分で作詞したシングルはほとんどなかったんですけど、こうやって並べてみると、かなり自分で書いていて。自分で歌詞を書いて歌うのは好きですからね、やっぱり。タイアップ作品のストーリーや世界観とのシンクロも必要だし、監督さん、原作者からのオーダーもあるんですけど、そういう要素も自分なりに消化して書けるようになってきたし。もちろん、そのときどきで「これが私の最新シングルです」ということになるので、自分の表現したい歌、聴いてほしい音は反映されてるんですけどね。「これが大人になるということか」と思うのは、1曲のなかで1行か2行、「これが自分自身だな」という言葉があればいいと思えるようになったことなんですね。そう思えるようになってからは、ずいぶんラクになったというか。
――なるほど。
坂本以前は、最初から最後までぜんぶ自分じゃないとイヤだったんです。“てにをは”のひとつが違っていても、“歌いたくない”ってなるくらい(笑)。いまは“遊び”があるんだと思いますね、いい意味で。“大事な部分はここ”というのがハッキリしていれば、前後の歌詞は景色で埋めてみる、とか。そうすることで、重要なところがより明確になることもあって。余裕というわけではないんだけど、少しだけ不真面目なところがあってもいいっていう。
前進してる実感があるから続けてこれた
坂本本当にそうですよね。だから私、最近、川柳に興味があるんですよ(笑)。何でもない言葉の連なりで、文字数も決まっているのに、すごく揺さぶられたり、映像が浮かんできたり……。あれは究極ですよね。私にはとても無理ですけど。
――(笑)。『ミツバチ』に収録されている新曲「猫背」についても聞かせてください。デビュー以来、真綾さんの作品を数多く手がけてきた岩里祐穂さん(作詞)、菅野よう子さん(作曲)による楽曲ですね。
坂本この曲は「モアザンワーズ」を作っていたときに偶然出来たんです。岩里さんが「書けちゃった」って歌詞を持ってきてくれて、それに菅野さんがメロディーをつけて、その場で歌って。デビューのときから一緒にやってきた親戚みたいな2人だからこそ、こういう曲が出来たんだと思います。何ていうか、「ループ」からの日々は私にとって激動だったんですよ。“故郷を離れて、上京してきた”みたいな感じもあったし(笑)。その日々をまとめたアルバムの最後に岩里さん、菅野さんが作ってくれた曲が入るというのは、すごく感慨深いものがありますね。あと、特に目的もなく、どこに発表するつもりもなく出来たっていうのも良かったのかも。
――真綾さんは幼少の頃からプロとして活動してるので、趣味で音楽を作るということはほとんどないですよね?
坂本ないですねー。もしかしたら、いまが一番趣味っぽいかもしれない。
――え?
坂本(笑)。もう来年のことを始めてるんですけど、それはかなり趣味に近いんですよ。趣味というか、無邪気にやってる感じかな。ちょっとアマチュアの気分というか……。いいのか悪いのかはわからないですけど。
――いまも新しいことにトライしている、と。
坂本そうですね。経験を積んでいくうちに出来ることは増えていくんですが、それを壊して、新しいことを始めるのが怖くなることもあって。いろいろ考えちゃう感じというか……。私の理想としては、恐れず、いろんなことをやってみたいなって思っているので。
――そういう前向きな姿勢も、この7年間で得たものかもしれないですね。
坂本……よく続けてきたなって思いますね、自分でも。あのときに環境を変えていなかったら、もっと早く煮詰まっていたかもしれないし、「いま頃は歌ってなかったかもしれないな」とさえ思うんですよ。この7年間のことを振り返ってみると、自分のなかで少しでも成長している手ごたえだったり、前進している実感があるから続けてこれたんだなって思うし。ずっと同じ環境にいたら、いまの感覚は味わえなかったでしょうね、きっと。
(文:森朋之)
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