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村松崇継『スタジオジブリ最新作『思い出のマーニー』音楽制作の舞台裏』

スタジオジブリ最新作『思い出のマーニー』が7月19日より全国で公開される。西村義明プロデューサーや米林宏昌監督など、次世代を担うスタッフが集結したことも話題を集めており、音楽にも映画やドラマなどで活躍する若手の気鋭作曲家・村松崇継氏が起用されている。長編アニメーション映画を手がけるのは初めてという村松氏に、楽曲制作の裏側やジブリ作品に関わることへのプレッシャーなどについて聞いた。

閉ざされた杏奈の心にそっと寄り添う音楽

――今回、『思い出のマーニー』の音楽を担当することになった経緯を教えてください。
村松崇継去年の5月頃、遅ればせながら(笑)僕がFacebookを使い始めたんですね。それから1〜2週間経ったころ、スタジオジブリの西村(義明)プロデューサーから突然友達申請が届いたんです。まったく面識はなかったのですが、お友達になったところ(笑)、会うことになりました。待ち合わせ場所に西村プロデューサーと米林(宏昌)監督が迎えに来てくれて、なぜか近くの居酒屋で飲むことになり(笑)、いろいろお話をさせていただくなかで「実はお願いしたい作品がある」と、『思い出のマーニー』の企画を聞かせてもらったんです。

――居酒屋で初めてジブリさんの意図がわかったわけですね(笑)。
村松ええ、びっくりしましたよ(笑)。過去の作品も聴いて下さってましたし。初めてお会いしてから1週間後に「アトリエに来ませんか?」というお誘いを受けて、西村さん、米林監督をはじめ、スタッフの方々とお会いしました。そこで、まずは米林監督からマーニーと杏奈の設定のメモをいただき、イメージ曲を作ることになりました。もちろん、その時は映像はまだなかったのですが、メモにはふたりの生い立ちからマーニーに会って凍っていた心がだんだん溶けていく杏奈の成長などがこと細かく描写されていたので、イメージは膨らませやすかったですね。最初にイメージソングを作ったことで、その後の音楽の世界観も固まっていきました。制約もあまりなく、自由に書けたので、楽しんで作ることができましたね。

――ジブリ作品の音楽を担当することに対して、プレッシャーはなかったのでしょうか。
村松プレッシャーが全くないと言ったら嘘になります。しかも今回に関しては“新生ジブリ”“世代交代”と、大きな注目を集めている作品でしたから。ただ、それよりも『思い出のマーニー』の世界観を音楽で表現したい、作品として良いものを作りたい、という思いのほうが強かったですね。ジブリ作品の音楽を手がけることは夢でもありましたし。

――村松さんはこれまで多くの映画やTVドラマ、舞台等の音楽を手がけられていますが、意外にも長編のアニメーション映画は今回が初なんですね。
村松それこそスタジオジブリの作品ですとか『ドラえもん』とかは観ますけど、普段ほとんどアニメを観ないですから、実写作品以外のお仕事は意図的にやってこなかったんです。ただ、個人的にジブリの作品はこれまでアニメというよりも実写ドラマ、実写映画と似たような感覚で観ていたので、今までと同じような感覚でできましたね。

――そのなかで、今回の作品ならではのご苦労などはありましたか。
村松音楽の入り方やフェードアウトのタイミング、楽器の編成などを、1ロールごとに1、2ヶ月かけてディスカッションしながら作り上げていったんですけど、杏奈がマーニーに出会うまでが一番難しかったですね。最初はもっと様々な楽器を入れてドラマチックな作りにしていたんですよ。でも、監督から「音楽は語らなくてもいい。もっと杏奈の心に寄り添ってくれ」と言われて、閉ざされた杏奈の心にどうしたらもっと寄り添えるのかと考えた結果、余計な音をそぎ落としたシンプルな編成になりました。マーニーと出会ってからは、杏奈の変化とともに音楽も少しずつ音が加わり、表情豊かになっていくのですが、それでも全体を通して音楽は主張しすぎず、なるべく後ろからそっと寄り添うような楽曲に仕上げることを心がけています。普段はどちらかというと音楽で語って表現するタイプなので、そのバランスはけっこう難しかったですね。

子どもである一方で大人の部分も持っている 今の子どもたちが共感できる映画

――実際に完成した映像を観て、いかがでしたか。
村松もう、試写を観終わったあと、ぼろ泣きだったんですよ(笑)。大人の男の心にも響く映画です。最近の子どもたちってある部分で大人化していて、本当に子どもなの?と思うこともあって、子ども騙しがきかなくなっているじゃないですか。杏奈も年齢的には子どもなんだけど、一方で大人な部分も持っていて、自分のなかで葛藤している。そういう意味では、今の子どもたちが共感できる映画なんじゃないかなと思います。

――ここからは村松さんご自身のお話をお聞かせ下さい。作曲家になったきっかけは?
村松もともと映画が好きで、中学生のときは映画のサウンドトラックばかり聴いていたんですよ。ピアノも幼少の頃から学んでいたので、自然と映画音楽を作りたい、と思うようになったんです。それで、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の音楽を手がけたアラン・シルヴェストリ氏に、弟子入りを懇願する手紙を送ったんです。けっきょく返事はこなかったんですけどね(笑)。音大卒業後は苦労した時期もあったのですが、『天花』(NHK連続テレビ小説)をきっかけに様々なお仕事をいただくようになりました。

――多くの作品を手がけるなかで、曲のインスピレーションを枯れさせないコツはありますか?
村松景色を見ることです。常日頃から意識して旅行に出かけているので、例えば草むらのにおい、鳥の鳴き声などを聞いて、旅先で音が浮かぶこともありますし、ドラマや映画のシーンでそのイメージを思い浮かべながら書くこともあります。基本は普段の生活で蓄積していってますね。メロディーが浮かんだら忘れないうちに書けるように、仕事部屋だけでなく寝室、お風呂、トイレと、全部の部屋に五線紙を置いているんですよ。『思い出のマーニー』では、舞台の北海道まではいけなかったんですけど、湿地や大岩家の雰囲気をつかむために長野に行きました。

――最後に、今後の抱負を教えてください。
村松先ほどもお話ししたように、これまで実写にこだわってきたんですけど、今回の作品でアニメーション作品の魅力を改めて感じたので、アニメーションの音楽にももっと挑戦していきたいと思いました。米林監督も西村プロデューサーも僕と同世代なんですけど、本当に楽しく曲作りができたので、また機会があったら一緒に新しいものを作りたいなと思っています。
(文/河上いつ子)

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