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【編集長の目っ!】曽根由希江に感じる“優しい距離”

■語りかけるように、寄り添うように、聴き手に届く歌

 東日本大震災後、被災地ではラジオの役割が見直されたという。停電時でも即時性のあるラジオは情報供給源として重宝され、震災直後はそれぞれの地域情報や、安否情報を伝え続けたが、しばらくすると、通常の“しゃべり”や音楽を流して欲しいというリクエストがリスナーから届いたという。コミュニケーションを必要としたのだと思う。被災地だけではなく、最近はradikoの普及で、パソコンやスマートフォンでもラジオを聴くことができるようになり、ラジオの“良さ”が再認識されてきているのではないだろうか?

曽根由希江

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 その良さとは、ラジオの魅力とは、やっぱりパーソナリティーとリスナーとの“距離の近さ”なのではないだろうか?例えば、アーティストが不特定多数の人に歌を届けようとすること、不特定多数だけど、聴き手1人ひとりの心に近づくためにどうすればいいかを日夜考え、パーソナリティーも、番組をリスナーに届けようとする気持ちが強く、その部分はすごく似ているんじゃないかと思う。

 注目のシンガー・ソングライターの曽根由希江は、ラジオパーソナリティーのオーディションを受け合格し、FM、AM局でその活動をスタートさせた。その後、テレビへその活動の場を広げ、2010年にCDデビュー。その等身大の女性のリアルな気持ちを描いた歌詞は、一躍10代、20代の女性の共感を得た。

 去年の5月に、一度ここで彼女のことを取り上げている。2ndシングル「HOME」の発売タイミングで、その時は「シンプルな言葉で、変な言い方かもしれないが、決して特別なことを言っているわけじゃない。でも、耳にスッと入ってくる。人は絶対1人じゃない、誰かとつながってるんだよ、ということを切々と歌ってくれている〜」と彼女の作品について触れている。

 ラジオからそのキャリアをスタートさせた彼女は、聴き手との距離感の感じ方が、やはりほかの人とは違うのかなと、6月27日にリリースされた1stフルアルバム『to You』のライナーノーツの歌詞を読みながらそう感じた。「君のとなりに」、「私の知らない君」、「キミだけ」とタイトルに“君”が付いている曲が3曲もある。もちろんこれ以外の曲も、すぐそばにいる“君”に向かって歌っている。非常にリスナーとの距離が近いラジオで、パーソナリティーとして、“想いのやりとり”を経験している彼女ならではの“語りかけ”だと思う。<ねぇ>という言葉がよく出てくるのも、自然とそういう気持ちが滲み出ているからだと思う。

 彼女が創り出すメロディーもそうだ。どの曲も非常に分かりやすく、耳なじみがよく、彼女が言葉に詰めた想いがそのまま、伝わってくるようだ。

 自分が思っていること、感じていること、訴えかけたいことを、素直に分かりやすく伝えようとし、そして誰もが言いたいけどなかなか口に出して言えないことを、代弁してあげているような、聴き手との心の寄り添い、そっと手を差し伸べているような優しさが彼女の歌だと思う。こう書くと簡単なことのように思うかもしれないけど、そう簡単にできることではない。骨身を削って、そこから出てきている言葉だから、メロディーだからこそ、聴き手にきちんと伝わるのだと思うし、そういう歌じゃなければ伝わらないと思う。

 曽根由希江が描くリアルな世界=『to You』で、“やさしい距離”を感じて欲しい。そして、それに癒され、励まされて欲しい。

⇒ 『編集長の目っ!!』過去記事一覧ページ

関連写真

  • 曽根由希江
  • 1stアルバム『to You』(初回生産限定盤A)
  • 『to You』(初回生産限定盤B)
  • 曽根由希江の1stアルバム『to You』(通常盤)

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