5人組バンド・サカナクションが9月30日と10月1日の両日、千葉・幕張メッセ 国際展示場9-11ホールでデビュー10周年を記念したライブ『SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY Arena Session 6.1ch Sound Around』を開催した。2013年5月に世界初の試みとして採用した立体音響「6.1chサラウンドシステム」を4年半ぶりに導入。ボーカルの山口一郎が「普通のイベントの3〜4倍くらいの経費がかかった」と明かすほどのぜいたくな音響システムと、観たこともないような演出の数々で極上の音楽体験を提供し、2日間計4万8000人を熱狂させた。

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　音、映像、照明のアートのような革新的な演出で音楽ファンをとりこにしてきたチームサカナクション。本公演では4年半ぶりに立体音響システム「6.1chサラウンドシステム」を導入した。ステージ両脇のメインスピーカーに加え、両サイド、後方左右と、会場全体をぐるりと取り囲むように設置されたスピーカーの数は、実に242本。前後左右から包み込むように音が聴こえ、さらに、アリーナ中央に設置されたディレイスピーカーにより、最後列にも最前列と同等のサウンドが届けられた。

　開演前から海底にいるような幻想的な空間が暗転すると、会場全体に設置された511本ものLED BARが赤く光ってウェーブ。四方八方から聴こえてくる音にどよめいた観客の拍手は手拍子に変わり、これから始まる未知なるエンターテインメントに胸を高鳴らせた。

　山口一郎（Vo／G）、岩寺基晴（G）、草刈愛美（B）、岡崎英美（Key）、江島啓一（Dr）の5人が登場すると、オープニングから2万4000人が体を揺らして飛び跳ね、会場が巨大なダンスフロア化。「シーラカンスと僕」からはオイルアートなどを投射した映像や照明による総合芸術のようなステージで目を釘付けにし、耳元や耳の後ろから聴こえてくるような臨場感あふれるサウンドに、思わず後ろを見上げる観客の姿もあった。

　「SORATO」ではアイリス幕が使用され、幕の中央部分が開くと、ゴーグルをかけた5人がリフトアップしたステージで横1列に並んで演奏する。メンバーの周囲の幕には天体ショーのようなCG映像が映し出され、盛大に飛び交うレーザービームが相まって、フロアは狂騒のパーティーに。体の表にも裏にも壮大なコーラスやド迫力の重低音が波打ち、重厚な音に抱え上げられているような感覚にも陥って身震いした。

　アンコールで新曲を披露後、ようやくサラウンドシステムについて触れた山口は「後ろにもしっかりスピーカーを仕込ませていただきました。サラウンド、実験してみる？」と投げかけ、山口の話し声をメイン→ディレイ→上手サイド→下手サイドのスピーカーで順番に出すプレゼンも。歓声が上がると、山口は「ステージの上からだとまったくわからない。君たちずるいね！」とうらやましがった。実際にこのライブをステージ中央付近と最後方で観覧してみたが、最後方でも驚くほどクリアで深みのある音が届いた。

　バンドは5月にデビュー10周年を迎えたことから、山口はメンバーの変化についてもトークした。「ベースの（草刈）あみちゃんが結婚して、（2015年に）ママになりまして。バンドを結成した当初、女子メンバーが結婚するなんて想像もしてなかった」としみじみ。また、9月に37歳の誕生日を迎えた山口は、高校1年から21年の付き合いになる岩寺が初めてお祝いメールをくれなかったことを根に持ち、「友達じゃなくて仕事仲間になりました。バンドの危機だな」と言いながらアハハと笑っていた。

　13年3月発売の『sakanaction』以来となるニューアルバムにも言及した。山口は「僕ら5年くらいアルバムを出していないんですが、そろそろメドが立ちました。来年春…初春…シングルを挟むかもしれませんが…」と歯切れは悪かったものの「アルバムを“出す出す詐欺”を行い、申し訳ございませんでした。今度こそアルバムを出して、新しいツアーをやりたいと思います。サラウンドライブも僕たちの一つのレギュラーライブとしてやっていきたい」と宣言し、喝采を浴びていた。

　このライブの模様は、NHKが「8K映像22.2ch立体音響」で収録。2万人以上の観客が参加する大規模なロックコンサートを8K映像22.2chで収録し、番組にするのは世界初の試みとなる。8Kでの放送は12月以降、全国のNHKに設置された専用受信機などで行われる予定。サラウンドライブは10月17・18日に大阪城ホールでも開催される。