ORICON NEWS

コブクロが結成20周年を前に過去を清算、“活動休止”がもたらした効果も語る

 人気デュオ・コブクロが、かつてサラリーマンだった小渕健太郎の実体験を踏まえた新曲「心」を発表。働きながらストレスを吐き出したストリートライブ時代、そして、コブクロとして走り続けた二人が、2011年の活動休止を経て得たものとは? 来年結成20周年を迎えるコブクロは今、ある意味で過去を清算し、新たなトライへの期待に満ち溢れている。

来年、結成20周年を迎えるコブクロ

来年、結成20周年を迎えるコブクロ

写真ページを見る

【写真】その他の写真を見る


◆仕事のストレス吐き出すストリート時代、「桜」で得た喜びも

――新曲「心」は、映画『ちょっと今から仕事やめてくる』(5月27日公開)の主題歌としても、ブラック企業に翻弄されながら自分と向き合う主人公の気持ちとリンクしますね。
【小渕健太郎】僕は以前サラリーマンをしていたんですが、今思えば、なかなか経験しないようなことがたくさんありました。それもあってこの映画の主題歌のお話を受けましたし、自分にしか書けないかもしれない、という気持ちがあったんです。僕の働いていた会社は、朝の掃除からやってましたし、しかもうちの営業所はなぜか、朝みんなで本気の野球をしてから仕事を始めるという。しかも、支店長が野球で負けたらめっちゃイライラするから、なんの気分転換にもならず(笑)。でも、当時はSNSもなく、メールもままならない時代ですから、他の会社がどうしているのかなんて全然知らなかったし、自分のいるところの規律が当たり前だった。もちろん今でも、会社や学校という組織が自分の全世界だと感じることってあると思うんですよね。そこでダメなら自分はもうダメなんだって、自己否定に入ってしまう。そういう、この映画が伝えようとしていることと、僕が味わった4年間、自分自身をズタズタにしてダメにしてしまいそうだった瞬間をひとつにした結果、この「心」のテーマが浮かんだんです。

――黒田さんはいかがですか?
黒田俊介】僕は社会人経験がゼロなんです。だから小渕に会ったときに、毎日しんどそうだなって思っていましたね。20、21歳くらいの頃、朝までストリートライブをしていたんですけど、小渕はほとんど憂さ晴らしなんですよ。俺は、数いるストリートミュージシャンの中で“俺が一番歌が上手いな!”と思いながらやっているけど、小渕はただストレスを吐き出して、しゃにむに現実逃避してる、そんな感じでした。お客さんが誰もいないのに朝まで歌っているから、「おまえ何に向かって歌ってんの! 明日は仕事?」って聞くと、「うん、6時に起きないと」って。もう5時ですけど!っていう(笑)。
【小渕健太郎】吐き出さないと、バランスがとれなくなっていました。好きで始めた仕事だとしても、そこには人知れず辛さもあって、もう辞めそう!みたいなのって、どんな仕事にもあると思うんですよね。そんななかでも、ストリートでお客さんが「桜」のCDを買ってくれたときは、本当に嬉しかったなぁ。僕は営業だったんですけど、会社では前月の売上成績は翌月になるとリセットされちゃうじゃないですか。でも、この「桜」を買っていただいた分は、月が替わってもゼロにはならない。半永久的にみんなの心に残るんだって。まぁ、「桜」の次に作った社会風刺的な曲は、全然売れなかったんですけどね(笑)。

◆活動休止を経て「うまくガス抜きができるような状態を作れている」

――ちなみに、コブクロは2011年に一度休止していますが、それにも通じる部分はあったんでしょうか。続けていたことを休むことはとても難しいことですが、それでも休止した結果、得たものとは?
【小渕健太郎】休む前の自分は、これをやるしかない、こうあるべきだとすべてを決めつけて進んでいました。一番分厚い壁が破れていない状態を破ったのが、まさに休んだときなんですよね。壁もなくなり、ただの黒田俊介と小渕健太郎になった。そして、もう一度集まったからコブクロが始まり、お互いリハビリのように歌ったり曲を作ったりしている中で、“どんな自分たちでもいいんだ”という、コブクロになれたんです。そうさせてくれたのは、お客さんでした。5万人くらいの人がフリーライブに来てくれたのを目の当たりにして、そこからコブクロの在り方が変われたんですよね。そんな経験を経て、今は日々の中に休みも取り入れて、うまくガス抜きができるような状態をふたりとも作れているんだと思います。一気に大噴射するくらいなら、常に少しずつ抜いておかないとっていう。

――なるほど。
【黒田俊介】当時の俺たちは、ちょっと足を止めるなんて、そんな生ぬるい感じじゃなかったもんな。それくらいまでやったからこそ、“これ以上行ったらいけない”という線がわかったというか。僕らみたいな仕事をしていて、イマジネーションがなくなったら、やってる意味がない。遊び心を持って楽しみながらできる、ちょっとした心のゆとりも必要だというのが、今はよくわかってるんですよね。

◆前回のツアーに後悔?「結成20周年の来年まで置いといたら良かった」

――昨年のツアー『TIMELESS WORLD』は、これまでの楽曲と今の楽曲のつながりを辿っていて、コブクロの歴史を一度コンプリートできたのかなと思ったんですが、今作にはその影響もありますか?
【小渕健太郎】10年前とか10年後ということの素晴らしさをあのツアーですごく感じましたし、あれで完結したんですよ。だからこそ、今はまったく違うことをやっていて……『TIMELESS WORLD』から走って逃げていますね(笑)。そこにまた戻るのはまた10年後でいいので、今は今しかできないことを歌いたいんです。
【黒田俊介】『TIMELESS WORLD』でそのときやりたいことを全部やったし、過去も清算したような感覚になった。だからこそ今回のシングルは新しい一歩だなと思うし、とにかく今はやってて楽しいこと、新しいと思えることをやろうという気持ちになっています。『TIMELESS WORLD』のツアーって、当時の新曲の「未来」もあれば、「蕾」もあったり。僕らはコブクロという列車に乗っていて、曲たちがひとつずつ停車駅になっていたんだなと実感するツアーだったんですよね。ところが、今考えてみれば、来年が結成20周年なわけで…。そのネタ、来年まで置いといたら良かったなぁ、と(笑)。
【小渕健太郎】いやぁ〜、本当そうなんですよ(笑)。
【黒田俊介】“どう考えても20周年にやるべきツアーだった!”と、日々すごく後悔しているんです(笑)。なんで誰も注意しなかったのか、と。だから、今年と来年で新しいことをたくさんやらないととは思いつつ、堂々とトライできるのがおもしろいんですよね。“さすがにこれはムリかなぁ”と思うことでも、小渕に言うと「めっちゃおもろいやん!」と返ってくる。「おまえそんなとこに食いついてくんの!?」という驚きもありますね(笑)。でも、ゴールが見えているものよりも、どうなるかわからない、ハラハラドキドキすることを常に味わっておきたいんです。その繰り返しで10年後、20年後もさらに楽しいことになってるんじゃないかという気がしているので。
(文:川上きくえ)

関連写真

  • 来年、結成20周年を迎えるコブクロ
  • ミュージックビデオでEXILE/三代目JSBのNAOTOとコラボ

オリコントピックス

あなたにおすすめの記事

>

メニューを閉じる

 を検索