2月26日（現地時間）、米国で発表された『第89回アカデミー賞』でディズニー・アニメーション『ズートピア』（2016年）が長編アニメーション賞を受賞。同賞は『アナと雪の女王』（13年）、『ベイマックス』（14年）、『インサイド・ヘッド』（15年）と4年連続で、ジョン・ラセターが率いるディズニー・アニメーションとディズニー・ピクサー作品が受賞している。1937年に公開されたディズニーの長編映画第1作『白雪姫』（世界初の長編、しかもカラーアニメーション映画でもある）から80年。今なお進化し続けるディズニー・アニメーションの求心力を、つくり手たちの話からひもとく。

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■『リトル・マーメイド』『アラジン』の監督コンビによる最新作

　アンデルセンの童話、思春期に入った娘、野生動物など、さまざまなものからインスピレーションを受け、「ありのままの自分」、「子どもの成長」、「不正や差別の存在」といった深いテーマを盛り込み、練り上げられたストーリーを、奥行きのある魅力的なキャラクター、革新的なアニメーション表現、エモーショナルな音楽とともに届ける――ディズニー・アニメーションには、人々の心を引きつける要素がそろっている。

　3月10日より公開中の『モアナと伝説の海』は、昨年11月に米国ほか世界各地で公開され、『第89回アカデミー賞』長編アニメーション賞にノミネートされた最新作。ポリネシアの人々の考え方や海との強い絆、島々で語り継がれる伝説にインスピレーションを受け、美しい海と、ひとりの少女の心の成長を描く冒険ストーリーだ。

　『モアナと伝説の海』の監督を務めたのは、『リトル・マーメイド』（1989年）でディズニー・アニメーションの歴史を変えたジョン・マスカー氏（63）とロン・クレメンツ氏（63）。『リトル・マーメイド』では、人間の世界に憧れ、悩み傷つきながらも自分の力で道を切り開いていく人魚姫アリエルを描き、新たなデズニー・ヒロインの姿を打ち出した。2人は『アラジン』（1992年）でも、新しい世界へ飛び出していく等身大のヒロインを描き、女性たちから絶大な支持を得る。

　このマスカー＆クレメンツ監督が道を開いた新しいディズニーのヒロイン像は、『塔の上のラプンツェル』（10年）のラプンツェルや『アナと雪の女王』のエルサとアナへと受け継がれ、『モアナと伝説の海』で「アリエルから一周回ってモアナへ帰ってきたと言えるかもしれません。海の中で暮らすアリエルは、陸で暮らすことを夢みます。一方、島の外に出ることを禁じられたモアナは、大海原に出ることを夢みます」（クレメンツ監督）

　アリエルからモアナへ。1周回った間に、2人のヒロインには決定的な違いが生まれた。アリエルは、新しいヒロイン像といっても、最後は王子様と結婚して幸せに暮らす。ところがモアナは、まるで英雄伝説の主人公のようだ。

　「モアナは、崖から飛び込んだり、海の真ん中で船の舵を取ったりすることができるアクション・アドベンチャー・ヒロインにしたいと思っていました。『モアナと伝説の海』は“ヒーローの旅”を描いた映画です。ロマンスの上に築かれた映画ではありません。モアナが日本の若い女性たちの共感を得られることを願っています。もちろん若い男性たちにもね」（マスカー監督）

■『モアナと伝説の海』ストーリー

　“海から愛される”という不思議な力を持つ少女、モアナ。彼女は16年間、両親 から島の外に出ることを禁じられていたが、「海に出たい。その先に何があるのか見てみたい」という気持ちを募らせていた。ある日、島のココナツが枯れ、魚が獲れなくなるという異変が起こり始める。モアナは島を守るため憧れていた海の外に行くことを決めるが、海の恐ろしさを知り島に残ると決める。しかし、モアナの良き理解者であるタラおばあちゃんは「お前は海に選ばれた」と、モアナに島を出るよう告げるのだった。海への憧れや愛する島の人々を守りたいという葛藤の末、両親の反対を押し切って大海原へ飛び出すモアナ。しかし、彼女にとってあまりにも大きすぎる世界が待ち受けていた…。