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KinKi Kids、東京ドーム19年連続の覇者は紅白でどんな爪あとを残すか?

 今年のツアーで、東京ドーム19年連続公演という前人未到の記録を打ち出したKinKi Kids。31日には、デビュー20周年を前に初の『第67回NHK紅白歌合戦』への出場も決めた。“硝子の少年”だった頃を経て熟成期を迎えた彼らが、たった二人だけで魅せる日本のエンタテインメントの粋とは? 22日に行われた東京ドーム公演の様子から、その魅力を考察する。

◆19年連続のホームグラウンドでKinKi Kidsが魅せたもの

 “アイドル”と“アーティスト”の境界はどこにあるのか。“若手”と“ベテラン”はどこで線引きされるのか。自らソングライティングをしていなければ、“ミュージシャン”とは呼べないのか。“芸能”はどこまでいっても“芸術”にはなり得ないのか。KinKi Kidsのライブを観て毎回思うことは、“アイドルとはこうあるべきだ”という先入観で、アイドルのライブを食わず嫌いしている人たちや、“実力派といっても所詮アイドルなんでしょ”という偏見を持った人にこそ、観て欲しいライブだということだ。

 97年のCDデビューの翌年、98年から99年の年越しから始まって、19年連続となる東京ドームでのコンサート。セットリストとしては9月から日本武道館を皮切りに始まったアリーナツアーのものとほぼ同じで、普通なら、「同じ内容なら武道館のように小さい会場で観た方がいいに決まってる」となるところを、東京ドームを“ホームグラウンド”とする彼らのパフォーマンスには、“ドームで観るKinKiの華やかさ、スケール感は格別!”と感動させてくれる輝きとパワーに溢れる。

◆日本のエンタテインメントの最高峰、その音楽と美と漫談

 ベースが吉田健、ギターが堂島孝平という、それだけでも豪華なバンドに、ストリングス隊からホーンセクション、コーラスなど、メンバーの層の厚さ、腕の確かさは特筆もので、生音の響きの良さは、そこが東京ドームであることを忘れさせるほどだ。1曲目の「Kissからはじまるミステリー」は、彼らがデビューする前年の96年に、堂本剛主演ドラマ『金田一少年の事件簿』(第2シーズン)の主題歌となった曲で、作詞は松本隆、作編曲は山下達郎。“ミステリーがはじまってゆく”というその妖しさは、確かに、KinKi Kidsの音楽世界を象徴しているようで、コンサートの幕開けに相応しい。山下はかつて、KinKi Kidsに対して、「二人の声はマイナー(哀調)だ」と感想を漏らしたというが、この世に二つと無い音を出す2種類の楽器があって、その特性を最大限に生かせる楽曲と演奏者と音響とが揃い踏みしているところは、やはりKinKi Kidsのライブは、日本のエンタテインメントの最高峰といっていいだろう。KinKi Kidsというデュオは、演歌や民謡とはまた違うところで、日本人の心の琴線に触れるような音楽を奏で、歌舞伎や宝塚とはまた違う音楽に特化したアプローチで、視覚的に強烈に訴える“美”を発信する。それも、絶妙に憂いや陰影のある“美”を。

 KinKi Kidsを“アイドルグループ”と表現するのは若干躊躇われるが、とにかくジャニーズ事務所に所属するグループは、ライブでの“戦い方”がそれぞれ異なる。本人たちに他グループと競い合ってる意識はないと思うけれど、それでも毎年ライブを鑑賞するたびに、“KinKi色”が濃くなっていることに気づかされるのだ。それを成長と呼ぶか進化と呼ぶか熟成と呼ぶかはわからない。でも、とにかく彼らはどんどん“面白く”なっている。今回のライブでも、ダンスのパートはかなり多く、緻密で大きくてスピーディな光一の動きと、どこかアンニュイでグルーヴィな剛の動きが、絶妙に調和していた。MCでも光一が、「歌とのギャップをお楽しみください」と話していた通り、“哀調”を感じさせる音楽から一転、漫談としか思えないその話術は、年々テンポやリズムやハーモニーが多彩になり、これもKinKi Kidsのコンサートでしか味わえない“妙なる調べ”の一つとして、回を追うごとに爆笑を誘っている気がする。

◆アリーナより増す難しさ、ソロで5万5千人をまとめ上げる

 アリーナツアーでは、それぞれのソロコーナーを設けていたが、今回も、曲目を若干変えて、堂本光一は魅せるダンスを中心とした、堂本剛はバンドとのファンクセッションをメインにしたソロコーナーを継続。ダンスでは、5万5000人の目をステージ上で踊る光一という、その一点に集中させなければならないし、ファンクセッションでは、インストゥルメンタルという極めて感覚的な音楽で、5万5000人の感情に揺さぶりをかけなければいけない。これが1万人の、肉眼で彼らの汗や指先の動きを確認できる規模ならともかく(1万人でももちろんすごいが)、どうしたってステージとの距離が開き、空気中の張り詰めた緊張感が薄まりがちなドームで成立するのか。セットリストを観たときに湧き上がったそんな懸念も、すっかり杞憂に終わった。

 光一のダンスは、光一にしかできない観客を巻き込んだインスタレーション(空間を作品として体験させる芸術)だったし、剛本人のベース演奏から始まるファンクセッションは、誰もが固唾を飲んでステージを見つめた光一との緊張共有体験の真逆の、自由に体を音楽に委ねるという緩和体験で、いずれにせよ二人は、正反対のやり方で東京ドームを一つにまとめ上げたのである。剛が、セッションの最後に、空に向けて示した指の本数だけジャンプするという、ファンク&ジャンプセッションは、一瞬、東京ドームが屋外に感じられるほどの開放感が炸裂していて、爽快だった。

◆“KinKi Kids”という音楽ジャンルが、紅白にどんな爪痕を残すか

 あらゆる意味で、KinKi Kidsのライブに“境界”はない。デビュー20周年イヤーを前に、初めて『NHK紅白歌合戦』に出場する彼らは、「硝子の少年」を歌うといっても最早“少年”ではないし、その音楽の極め方は、世間が考える“アイドル”の範疇を超えている。勇気や夢や元気とは違うエネルギーを届けながら、でも、ジャニーズの伝統のようなものは強く感じさせてくれる。

 アーティストで、ミュージシャンで、歌手で、優れたダンサーで。パフォーマンスでは妖しさや刹那の雰囲気を醸しつつも、MCでは漫談上手。そんな“KinKi Kids”という音楽ジャンルが、紅白にどんな爪痕を残すのか。彼らの武器は、なんと言っても聴覚と視覚の両方に訴えるそのハーモニー。珠玉の“Harmony of December”が、一人でも多くの人に届くことを願う。
(文/菊地陽子)



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