「スター・ウォーズ」シリーズ最新作、『ローグ・ワン／スター・ウォーズ・ストーリー』（12月16日公開）のメインキャストの中には、アジア系俳優が2人いる。主人公のジン（フェリシティ・ジョーンズ）とともに、デス・スターの設計図を奪う過酷なミッションに挑む反乱軍の寄せ集め極秘チーム＜ローグ・ワン＞のメンバー、チアルート・イムウェ役のドニー・イェンと、ベイズ・マルバス役のチアン・ウェンだ。実は、アジア系の俳優が同シリーズの映画で主要なキャラクターにキャスティングされるのは、今作が初めてだ。

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　巨大な中国市場を無視できない、というのもあるだろうが、2人とも映画人としてのキャリアは十分にある。

　ドニーは、1963年中国広東省広州市生まれだが、2歳で香港に渡り、11歳で米ボストンに移住。4歳の時から武術を習い、16歳の時に中国の北京業余体育学校（在学時の名称）に入学。ジェット・リーの師匠として知られるウー・ビンのもとで技を磨いた。その後、スタントマンとして映画に出演したのをきっかけに、本格的に演技を学ぶ。1995年にツイ・ハーク監督作品『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ　天地大乱』で見事なアクションを披露し、ブルース・リーの『ドラゴン怒りの鉄拳』のテレビリメイク版『精武門』にも主演して、注目された。

　チャン・イーモウ監督の『HERO』（02年）やジャッキー・チェンのハリウッド映画『シャンハイ・ナイト』（03年）にも出演。役者・アクション監督として活躍し、08年の『イップ・マン　序章』では、ブルース・リーの師匠イップ・マンを熱演。続編の『イップ・マン　葉問』（10年）が前作を越える大ヒットを記録して名実ともにアジアのトップへと躍り出た。

　チアンも1963年生まれで、中国河北省唐山市の出身。6歳のときに北京に移った。演技に興味を抱き、80年に中国の名門演劇学校、中央戯劇学院に入学。卒業後は中国青年芸術劇院に役者として参加した。

　『紅いコーリャン』（87年）などに出演し、映画俳優として注目される一方、94年には初の監督作、文化大革命下での青春を描いた『太陽の少年』を発表。2000年には監督２作目となる『鬼が来た！』を製作。日中戦争下で繰り広げられる中国人と日本兵の奇妙な関係を描きカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した。監督・脚本・出演をこなした娯楽アクション『さらば復讐の狼たちよ』（10年）が中国でその年のナンバーワンヒットを記録するなど、非常に多才な才能の持ち主だ。

　『ローグ・ワン』で、ドニーが演じるチアルートは、予告編等でも確認できるように、ブルーの瞳が特徴的。その瞳は何も映さないが、厳しい修行のすえに棒術をマスターし、盲目とは思えない滑らかな動きと確かな攻撃力を体得。その技で敵を一網打尽にする。ジェダイが滅びてしまったこの時代において、その存在とフォース、思想を頑なに信じている。本人にはフォースがないという設定らしいが、果たして…。

　チアンが演じるベイズは、チアルートと常に行動をともにしている相棒。フリーランスの暗殺者という説もあり、デス・スター設計図強奪作戦に参加する。チアルートの青い着物のような服装に対し、ベイズは常に重装備。重そうな赤い甲冑を着け、背中には同じく赤い武器を抱えている。チアルートはフォースを盲信しているが、ベイズはスピリチュアルなパワーより、重装備とブラスターのほうを信じるタイプ。ベイズのチアルートに対する友情は非常にあつく、彼のためなら命を差し出すこともいとわないほどだという。

　プロデューサーのキャスリーン・ケネディ氏は「彼らは物語の中でとても大切な役割を担っています。ドニーが演じたチアルートはジェダイではありませんが、とても深くジェダイと関わりを持っている。彼には信じるものがある“信じる者”です。チアルートとベイズの関係性が、物語の中で最も感情的なものだということも、作品を観ていただければわかってもらえると思います」と話し、ただのお飾りではないことを強調。

　ドニーも「長い間アクション俳優としてやってきましたが、似た役をあてがわれることも少なくありませんでした。『スター・ウォーズ』のようなメジャーな映画に出ることは、それを打ち破ることにもつながると思うので、とてもうれしく思っています。アジア系の俳優すべてにとって、これは良いことだと思います」と語っていた。

　※初出時にドニー・イェンの経歴に「少林武朮学校」の記載がありましたが、「北京業余体育学校」（在学時の名称）の誤りでしたので、訂正してお詫び申し上げます。