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岸谷五朗&寺脇康文、24回目のエイズ啓発 活動継続に葛藤も「本当はない方が…」

 俳優・岸谷五朗の呼びかけで1993年からスタートし、今回で24回目を迎えるエイズ知識啓発ライブイベント『Act Against AIDS 2016「THE VARIETY 24」〜魂の俳優大熱唱!助けてミュージシャン!〜』が、今年も世界エイズデーの12月1日に東京・日本武道館で開催される。ORICON STYLEではこのほど、岸谷と盟友・寺脇康文の2人にインタビューを敢行。「Act Against AIDS」(以下AAA)を立ち上げたきっかけ、約四半世紀にわたる活動の手応えと課題、今後の目標などに迫った。

今回で24回目を迎えるエイズ知識啓発ライブイベント『Act Against AIDS』(通称AAA)への思いを語った(左から)岸谷五朗、寺脇康文 (C)ORICON NewS inc.

今回で24回目を迎えるエイズ知識啓発ライブイベント『Act Against AIDS』(通称AAA)への思いを語った(左から)岸谷五朗、寺脇康文 (C)ORICON NewS inc.

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■きっかけは14歳の少女からの手紙 岸谷の心配りが広げた“支援の輪”

 毎年12月1日の「世界エイズデー」に合わせ、1993年からエイズの現状や正しい知識などを伝えることを目的に開催している同イベント。岸谷は、自身のラジオ番組にHIV患者の14歳の少女から“ある手紙”が寄せられたことがきっかけだと明かす。「エイズは、人間同士の絆を壊す病気で、当時は『空気感染する』や『手をつないだら感染するとか』など、めちゃくちゃな情報が発信されていた。その女の子の手紙にも『病気そのものではなくて、怖いのは差別』と書いてあって、これは早く何とかしなきゃなと思いました」。デリケートな問題だからとフタをせず、お茶の間でも話せるような環境を作りたいとの思いでスタートしたが、岸谷は最初のイベントで痛感したことがあったという。

 「ドクターやHIVの患者さんを呼んで、シンポジウムをやったのですが、10代とか20代とか、オレたちが伝えたかった人たちが観客として全く来なかった。そこで、『THE VARIETY』という面白いタイトルにして、若い人に集まってもらって、そこから啓蒙・啓発をしないとダメだなと。バラエティーにしてショーを楽しんでもらって、チケット代は全部チャリティーになります、その時に配った小冊子でエイズの勉強もできますっていうことからやっていこうと思いました」。こうしてエイズと向き合う契機を与える、年に一度の豪華なエンターテインメントショーが幕を開けた。

 そんな岸谷の考えに賛同し、ともに活動を続けてきた寺脇は「はじめの10年は、特に出演者を集めることが大変だった。あらゆる人がノーギャラでスケジュール合わせて来てくれるのだから、やらないと失礼にあたるということで、本来は五朗の仕事じゃないんだけど、彼が直接アーティストとしゃべって、出演交渉をしていましたね。今でも、それは続けています」としみじみ。岸谷の“心配り”が支援の輪を広げていき、今年で24回目を迎える一大イベントとなったが、寺脇は自らを律するかのようにこう語る。

 「何年か前、AAAのチケットの売れ具合が遅いときがあって、これでは支援のためのお金が生み出せないという危機感を覚えた。そこで、ファンの方に理由を聞いてみると『今回は宣伝がなかったら…』という答えが返ってきて、自分たちの中に『もう長年やっているから、大丈夫だろう』という慢心があったのだと気づいたんです。運転免許も更新の1ヶ月前には、きちんとお知らせが来ますよね? それと同じで、僕らがしっかり宣伝していくことが大事なんだなと改めて思いました」。

■24年の成果と課題 後輩たちへ受け継がれる熱意のバトン

 AAAの収益金は全額、国内外のHIV感染者・エイズ患者への支援やエイズ基礎知識の啓発資料の制作費、ラオスのHIV感染孤児たちの生活費・治療費、病院建設の支援のためにあてられているが、岸谷はひとつの地域に寄付を集中させる理由を次のように説明する。

 「ラオスを選んだ理由は『ほかの場所は、アメリカの団体が寄付をしている。じゃあ、ここじゃなくてここが弱いな』という考え方からです。そうすると、別の団体が寄付しようという時に『ラオスはAAAがやっているから、我々はタイで寄付しよう』という風になるかもしれない。だから、ひとつの箇所に集中して寄付することも、全体を考えるとバランスになるんじゃないかな」。昨年2月11日にはラオスに小児病棟が開院、現在は訪問看護や現地での啓蒙など多岐にわたる活動が行われている。

 約四半世紀にわたるAAAの活動の成果について、岸谷は「24年前より、世の中の人たちのHIVに対する恐怖は薄れました。あとは、ワクチンができてHIVを発症しなくなったり、発症したとしても、目の前に死が待っている訳ではなくて、しっかり治療していけば克服できる病気になっていったということは、スゴく大きなことですね」と力説。「やっぱりAAAは、実際にお金を作らないといけないチャリティーだから、ギリギリでも継続できることが大事ですね。そのために一回一回を頑張って、気付いたら『あぁ、もう50年目だね』ってなったらスゴいなって思います」と意欲をにじませた。

 今後の課題については、寺脇が「エイズに苦しむ人たちがいなくなればいいんですから、本当はこんなライブはない方がいいんです。だけど、苦しんいでる子どもたちがいる限りは、まだまだ続けていかないといけない」と複雑な心境を吐露。それでも、イベントでは毎回、岸谷と寺脇のトップ2人が率先して“全力でふざける”姿を披露している。この日も、その一端を感じさせるような、息の合ったかけあいを見せてくれた。

岸谷「今年のテーマは『俳優大熱唱』と書いてある通り、俳優たちが倒れるくらいまで歌って『助けて』というキーワードを言うと、ミュージシャンが出てくる感じにしようかなと」

寺脇「そういう意味だったんだ!だったら、会場を設営している時から僕らがずっと歌い続けておかないと(笑)」

 自らも第一線で活動を続ける傍ら、岸谷は「本当にオレたちだけの力じゃなくて、たくさんの人が協力してくれています。特に三浦春馬なんかは、本当に一生懸命にやってくれていますね。ちょっとでも自分が背負おうと思ってくれた後輩は、春馬が初めてかもしれない」と後輩の熱意にも目を細める。その上で、改めてAAAにかける思いを語ってくれた。「イベントをやるのは、すごく勇気が必要。だけど、人の前に立つということを神様が我々に与えてくれた唯一の力だとするならば、本当に一年に一回だけど、その力をエイズと戦っている子どもたちに使いたいですね」。エイズに苦しむ人が世界にいる限り、2人の活動はこれからも続く。

■『Act Against AIDS 2016「THE VARIETY 24」〜魂の俳優大熱唱!助けてミュージシャン!〜』
日時:12月1日(木)18:30〜
会場:日本武道館
出演:岸谷五朗、寺脇康文、三浦春馬/中川晃教柿澤勇人平間壮一松下洸平柚希礼音植原卓也水田航生岸谷香サンプラザ中野くんパッパラー河合、武田と哲也、藤原さくら

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  • 今回で24回目を迎えるエイズ知識啓発ライブイベント『Act Against AIDS』(通称AAA)への思いを語った(左から)岸谷五朗、寺脇康文 (C)ORICON NewS inc.
  • エイズ知識啓発ライブイベント『Act Against AIDS 2016「THE VARIETY 24」〜魂の俳優大熱唱!助けてミュージシャン!〜』を開催する(左から)岸谷五朗、寺脇康文 (C)ORICON NewS inc.
  • エイズ知識啓発ライブイベント『Act Against AIDS 2016「THE VARIETY 24」〜魂の俳優大熱唱!助けてミュージシャン!〜』を開催する(左から)岸谷五朗、寺脇康文 (C)ORICON NewS inc.
  • 『Act Against AIDS 2016「THE VARIETY 24」〜魂の俳優大熱唱!助けてミュージシャン!〜』出演者

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