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WANIMAと西野カナの共通点

 昨今、アーティストの人気は、CD売上のみでは測れないものがある一方で、ロング・セールスを記録する若手アーティストが増えてきている。これは、その音楽性が確実にリスナーに伝わっている証拠でもあり、中でもブレイク真っ只中のWANIMAの動向には注目だ。

好セールスを記録中のWANIMAのシングル「JUICE UP!!」。ニベア花王「8×4ボディフレッシュ」CMソング「ともに」が収録されている

好セールスを記録中のWANIMAのシングル「JUICE UP!!」。ニベア花王「8×4ボディフレッシュ」CMソング「ともに」が収録されている

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 WANIMAは、2010年に結成された3ピースバンド。その音楽性はもとより、早くからファッションブランドとコラボレーションを行うなど独自の活動を展開し話題に。14年10月には、Hi-STANDARD横山健が社長を務めるレーベル「PIZZA OF DEATH RECORDS」がマネジメント契約を決めた初のアーティストということも、大きな話題となった。

「新宿店では、以前からWANIMAに注目をしていて、そこに「PIZZA OF DEATH RECORDS」からのリリースが決まったことで、スタッフ間のザワザワ感がものすごかったです。期待のバンドが、パンク界の信頼できるレーベルから出るということで“これは間違いなく売れる”と感じました」(タワーレコード新宿店チーフ・石黒大貴氏/以下同)。

 同店舗では、担当者による全曲解説が手書きポップでディスプレイされるなど、WANIMAを猛プッシュ中。その状況は、WANIMAの紹介から、既に間口を広げる段階へと移行しつつあり、展開に力を入れるほどに売上が伸びるという結果が伴うことで、「推し甲斐があるバンド」(石黒氏)となっている。

 実際、8月3日に発売されたシングル「JUICE UP!!」は初動3万6412枚を売り上げ、今なお累積売上が伸びているなど、若手バンドのシングルとしては久々のヒットを記録している。ニベア花王「8×4ボディフレッシュ」のCMソングに起用されたこともあり、この記録はWANIMAの支持がコア層を突き抜けていることを意味していると言えよう。

 そのために重要な役割を果たしたのが、7月29日放送の『ミュージックステーション』(以下、Mステ)への出演だ。石黒氏は、約1年間前に、まず先に横山自身がMステに出演したことが大きな布石となったと推測する。

「横山さんがMステに出演したこと自体が大事件でしたが、そこで終わらせなかったことが大きいと思います。横山さんが露出への道を作り、次にWANIMAを登場させた。しかもそれが、バンドのキャラクターを活かす最善な方法だったということが、とても大きかったと思います」

 もちろん、WANIMAのMステ出演はあくまでも“着火点”であり、それまでにしっかりと下地を作ってきていたことも見逃せない。彼らはまず、バンドの基盤であるライブ活動を精力的に行い、その中で、さまざまなJ-ROCKバンドと対バンを組むことで、横の繋がりを強める。結果、“早耳”のパンク・ファンから始まり、次第に10代、20代のJ-ROCK好きに自分たちの存在を広めていったのだ。加えてSNSの活用で、ロックを聴かない層にまで人気が広がったと石黒氏は分析する。

「彼らはSNSの使い方も上手で、真面目さだけでなく、ちょっとユーモラスな感じの投稿も多く、雲の上の存在ではない親しみやすさを感じさせます。とにかく賑やかなメンバーで、純粋に投稿内容が面白いので、人間性に惹かれたフォロワーも多い。そうした“身近な人”が頑張ることでファンは応援したくなり、その気持ちが、Mステ出演で一気に火が点いたように感じています」

 一方で、彼らの本質である音楽的な魅力は、聴けばすぐに口ずさめるキャッチーなメロディーと、共感を呼ぶ日本語詞にある。

「とても個人的な内容を歌詞にしているので、自分に重ねて聴くリスナーが多いと思います。そういう歌詞は、実はロック界隈にはあまりなく、意外と、メインストリームの西野カナさんらに通じるものがあるのかもしれません。西野さんの詞は、強く共感できるからこそ、“この曲を聴いてこう思った”と感想を言いたくなる。WANIMAの詞もそういう要素が強く、そこに10〜20代が共感し、曲の魅力を拡散したくなるのです。しかも、その詞にしっかりとしたメロディーが乗り、サウンド的にはHi-STANDARDやMONGOL800を感じさせる懐かしさがあるので、そこから30代のファンも増えています」

 加えて、間口を広げているのが、メンバーのキャラクターだ。聴き手をポジティブな気持ちにする明るさによって、普段はロックを聴かないという層にまで、彼らの歌が届き始めている。そうしたバランスがとてもいいのだと、石黒氏は続ける。

「パンク・バンドとして王道のスタイルでありながら、歌詞は日本語で共感しやすく、曲がわかりやすい。難しい曲ではライトなリスナーは入りにくいし、わかりやすすぎればパンク好きのコア層からは敬遠される。WANIMAのサウンドはその落としどころが絶妙で、自然と“他の曲も聴いてみたい”、“次はどんな歌なのだろう”と、新作だけでなく、旧作にも手が伸びるのだと思います。また、定期的に新曲がリリースされるので、ファンの関心も持続されます」

 リスナーに伝わるわかりやすさの奥に、玄人をも唸らせる高い音楽性と演奏力を忍ばせ、埋もれないキャラクターを際立たせる。「分かりやすさ+高い音楽性」というバランス力が長けており、ファンのすそ野を広げているのだ。
文/布施雄一郎

(コンフィデンス 16年9月12日号掲載)

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提供元:CONFIDENCE

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