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「演歌男子」ブーム火付け役に聞く、最新の演歌男子事情

 20代・30代の若手歌手の活躍が目立っている演歌・歌謡曲。なかでもその人気をけん引しているのが、歌い手としての実力はもちろん、端正なルックス、親しみやすいキャラクターで女性を中心に多くのファンを虜にしている「演歌男子」だ。昨年の『NHK紅白歌合戦』に山内惠介、三山ひろしが初出場を果たしたことをはじめ、各地で演歌男子にフォーカスしたイベントなどが行われており、ますます盛り上がりを見せている。そこで今回、ORICON STYLEでは、ジャンルとしての「演歌男子」の火付け役であるCS番組『演歌男子。』プロデューサーの話をもとに、最新の演歌男子事情に迫っていく。

昨年、『NHK紅白歌合戦』に初出場した山内惠介、三山ひろし

昨年、『NHK紅白歌合戦』に初出場した山内惠介、三山ひろし

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■若者にも訴求した「演歌男子」という言葉

 かつての流行歌からいちジャンルとして独立した演歌、歌謡曲だが、何年かに一度、大きなヒットが出るくらいで、多くの若者にとっては“主に中高年層が聴く音楽”というイメージが定着していた。しかし、氷川きよしがブレイクした2000年代以降は10〜30代前後の若い歌手の活躍が目立つようになってきており、若手だけで構成されたイベントや、ユニット企画なども増加。従来の演歌・歌謡曲以外のファンを取り込むことで、CD、カセットテープが大御所にひけをとらない好セールスを記録する歌手も現れるなど、少しずつ人気を伸ばしてきた。

 そしてそんな“点”で盛り上がっていた若手の演歌・歌謡曲歌手をつなぐきっかけとなったのが、2014年にスタートしたCS番組『演歌男子。』(歌謡ポップスチャンネル)だ。もともと演歌・歌謡曲専門チャンネル「歌謡ポップスチャンネル」の公式Twitterを通じて“若手の演歌・歌謡歌手”という括り自体に固定ファンがいると感じていたプロデューサーの石田翼氏(IMAGICA TV)は、その括りに特化した番組を企画。「若者ならではの目線で同年代の歌手の魅力を伝えていく」ことをポイントに、若手の男性歌手が普段着を着ておしゃれなカフェでフリートークをしたり、最新シリーズでは料理、手品など様々なことに挑戦。従来の演歌・歌謡曲の番組とは異なるアプローチで歌手の魅力を伝えている。

 同番組の一番の功績は、やはり「演歌男子」という訴求力の高い言葉を生み出したことだろう。演歌男子に明確な定義はないが、概ね歌い手としての実力はもちろん、端正なルックスやユニークなキャラクターなど、様々な魅力を兼ね備えた若手の男性演歌・歌謡曲歌手といったところだ。昨今、多くの「○○男子」がある中でも、“演歌×男子”という言葉には簡潔でありながら絶大なインパクトがあるし、若い男性演歌・歌謡曲歌手を形容するには一番わかりやすい表現。様々なメディアがこの「演歌男子」を取り上げたことで、演歌男子という枠自体が従来の演歌・歌謡曲のファンよりも若い人から注目を集めるようになった。

■切磋琢磨する中での演歌男子の成長 ジャンル化が好影響

 イベントなどでも変化が起こっている。石田氏は、「番組では1年目からライブイベント『演歌男子。LIVE』を開催したり、私自身も演歌・歌謡曲の現場に足を運ぶ機会が増えたのですが、確かに歌手によっては小さな子どものファンがついていたりと、ファン層が幅広くなっているのを感じます」と話す。また、長年、若い演歌・歌謡曲の歌手を応援している東京・浅草の老舗レコード店「ヨーロー堂」の店主・松永好司氏も、同店で実施するイベントで「以前より若いファンが増えている印象があります。特に“演歌男子”と呼ばれる若い男性歌手は顕著なのですが、20代・30代のお客様が増えているんです。お店の売上も増えていますよ」と変化を実感しているようだ。

 では、他のジャンルのアーティストにはない、演歌男子ならではの魅力とはどんな部分なのだろうか? 一番の理由は、今どきの若者らしい、ファンとの距離感の近さにある。演歌・歌謡曲の歌手は昔から店頭でキャンペーンを行い、ファンと交流を図ってきたものだが、やはり世間的には大御所が彩鮮やかな着物を身にまとい、コブシをきかせて中高年のファンを魅了する――そういったイメージが大きかったように思う。しかし、“会える”アイドルグループの台頭もあって、若手歌手の“神対応”が握手会の原点としても注目。そのギャップもあって、ネットなどで大きなバズを起こした。

 これまで以上にファンとの距離感が縮まった要因としては、本人たちの“自己プロデュース能力”の高まりがあるように感じられる。SNSで自ら発信する歌手が増えたことで“自分の見え方”を意識するようになったことや、演歌男子として同年代の歌手と切磋琢磨する機会が増えたことがプラスに働いているのだ。「『演歌男子。』の台本は大まかな骨子だけ用意して、細かい部分は本人たちに任せているのですが、初期の頃と比べると、トークなども成長したように感じています。複数の歌手がいるなかで役割を考えて発言しているというか、ここでこうしたら自分や他の人のいいところを引き出せる、というのを理解してきたんです」(石田氏)。

 イケメンで、歌がうまくて、個性があって、なおかつ距離感が近い――とあれば、ファンが夢中になるのもうなずける。互いに切磋琢磨し、魅力を磨いている中で、次はどの歌手がブレイクするのだろうか? 引き続き動向に注目していきたい。

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