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洋楽の訴求に欠かせない、“パロディMV”の進化と歴史

 洋楽の日本版ミュージックビデオ(MV)の話題が続いている。NON STYLE井上裕介メーガン・トレイナー「NO」日本版MVでモテモテのナル男に。渡辺直美リアーナカニエ・ウエストポール・マッカートニーによる「フォー・ファイヴ・セカンズ」MVを、2丁拳銃・小掘裕之(ポール役)、ドラッパ・リロイ太郎(カニエ役)とともに“完コピ”。しかも芸人がネタとして動画サイトに投稿したのではなく、レコード会社公認の“公式”MVとして公開されている。“パロディMV”自体は昔からあるものではあるが、昨今、動画サイトやSNSなどの普及によってさらに効果的なプロモーション手段となっており、実際にこれをきっかけとしたヒットも生まれている。果たしてこの“パロディMV”は、低迷が続く日本の洋楽市場復活の起爆剤となるのだろうか?

NON STYLEの井上裕介が出演する米歌手メーガン・トレイナーの新曲「NO」日本独自MV

NON STYLEの井上裕介が出演する米歌手メーガン・トレイナーの新曲「NO」日本独自MV

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■「Eat It」に「Fat」……意外に歴史長いパロMV  SNS普及で増える日本独自作品

 パロディMV自体は昔からあるものであり、その第一人者として知られるのは、アメリカの第一人者アル・ヤンコビックだろうか。マイケル・ジャクソンの「Beat It」のパロディ「Eat It」や、「BAD」のパロディ「Fat」などは、日本でも大きな話題となった。アル自身、マイケル・ジャクソンから公認されていたし、マドンナニルヴァーナレディー・ガガまで、ちゃんと本人とレコード会社に許可を取ってパロディにする。もはやアルにパロディされることが、ミュージシャンとしてのステータスになっているくらいだ。

 近年はSNSなどで多くの人に拡散されやすいこともあって、プロモーション手段のひとつとしてレーベル公認というかたちで作られることも多く、日本向けのパロディMVも数多く制作されている。例えば、ここ数年の日本でのヒットと言えば、カナダ出身の女性シンガー・ソングライター、カーリー・レイ・ジェプセンの「コール・ミー・メイビー」だろう、ジャスティン・ビーバーなどの人気アーティストやスポーツ選手が“口パク”で歌ったパロディMVを発端に、同曲が収録されたアルバム『キス』は洋楽の新人としては異例のヒットを記録した。

「日本では「コール・ミー・メイビー」はローラさんが出演したパロディMVが話題となりました。個人的にはAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」のMVのパロディ展開も、この口パクMV手法を取り入れて“踊りパク”MVにしたものだと思っています。いずれにしろアーティスト本人だけではなく、いろいろな人物が口パクや踊りパクで登場したほうが、映像的にも“賑やかし”になるし、SNSなどでは訴求効果も高い。今後もプロモーションツールとしても、“パロディMV”バージョンの制作は増えてくるんじゃないでしょうか」(レコード業界関係者)

■一般ユーザーも“やってみた”で拡散 無名の新人にも有効なプロモーション手段

 今回、ノンスタ井上が出演するのは、メーガン・トレイナーの曲「NO」の日本版MV。美女に囲まれたモテモテの井上は、いつにも増して細い流し目を送りながらユルいダンスを披露している。彼のキャラクターを存分に活かした映像となっており、“キモ面白い”といったところだろうか。実際、本物のメーガンが登場する本国版MVも、メーガン自身が妙にポッチャリしているのに「イイ女」風にカッコよく踊っているので、井上版MVに共通するシュールな面白さもある。一方、渡辺直美のMVは、かつてビヨンセのモノマネで見せたハイレベルな口パク芸で、リアーナを忠実に再現。原曲には超大御所ポール・マッカートニーが参加しており、このポール役をお笑いコンビの二丁拳銃・小堀が演じているのだが、微妙に顔が似てたり、ギター演奏もサウスポーで再現していて、思わずクスっとさせられる。

「今の現役洋楽で、普段洋楽を聴かない方にも顔と名前が一致するレベルの知名度があるアーティストはあまり多くありません。ほとんどは曲は聞いたことがあるけど誰が歌ってるかは知らないとか、顔とアーティスト名が一致しない、という方も多いのではないでしょうか。邦楽すら音楽番組が減少している中で、プロモーションしたいタイミングでアーティストの来日が実現できなかったり、来日しても『スッキリ!』(日本テレビ系)など朝の情報番組くらいしか歌を披露できる場がない。プロモーションツールとしてパロディMVを使うのは、大いにアリだと思います」(レコード業界関係者)

 単に“宣伝でやりました”というのではなく、アーティストをリスペクトした上でのパロディならファンや一般層にも抵抗なく支持されるだろうし、SNSでアップすれば、若者たちが追随するかたちで「○○をやってみた」とさらにパロディ動画をアップする…という拡散の循環が構築されていく可能性もある。これなら例えアーティスト本人が不在でも、プロモーション活動に効果的な影響を与えることができるだろうし、たとえ無名の新人でもアイディアを駆使して面白いものを作ることができれば、それほど莫大な予算をかけなくても話題を拡散させることが可能だ。今後、こうした洋楽パロディMVはプロモーション手法のひとつとしてより重要になっていくのかもしれない。

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