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「和楽器バンド」アーティスト価値を高めたメディア露出への姿勢

 異色の編成ながら音楽性はあくまでキャッチー。和楽器バンドは、人気のボカロ曲カバーで話題を呼びながら、その後は一貫してオリジナル楽曲で勝負している。国内外で人気を博しながら、メディアへの露出が極めて少ない理由とは。

■台北ライブは3分で即完売Live NationのNY招聘も決定

 今年3月、レディー・ガガやマドンナなどを手がける世界最大のコンサートプロモーター・Live Nationの招聘で、初のニューヨーク公演を行うことが決定した和楽器バンド。その名の通り、日本古来の伝統楽器(箏、尺八、津軽三味線、和太鼓)とギター、ベース、ドラムを掛け合わせ、ボーカルは詩吟の師範という異色編成の男女8人組だ。

 14年4月にボカロ曲のカバーアルバムでデビュー。昨年9月にリリースした全曲オリジナルの2ndアルバムが初登場1位に付けた一方で、デビュー作もロングセールスを続け、累積売上10万枚を突破している。

「ボカロ曲というわかりやすさでデビューしただけに、単なるカバーバンドに見られかねない危惧もありました。2ndアルバムまでに十分な時間を費やしたのも、彼らの作詞・作曲能力の高さを示したかったからです」(エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ担当者・吉澤幸治氏/以下同)

 2ndアルバムをひっさげての全国10ヶ所ツアー、台北2日間公演、そして今年1月の日本武道館公演はいずれもチケット入手困難に。さらに昨年末には日本レコード大賞企画賞も受賞。吉澤氏の懸念はひとまず杞憂に終わった形となった。

■世界を視野に“急ぎすぎない”展開を

 かように音楽のインパクト、話題性、そして売上ともに十分だが、一般からの認知度はまだ高いとは言えない。その原因として考えられるのがメディア露出の少なさだ。

「彼らは、日本の伝統芸能をよりポップに世界へ広げたい、という志のもとに集結した実力派集団です。しかしそうした背景や思いの説明がないまま大量露出したら、見た目のインパクトから“イロモノ”で終わってしまう危険性も。実際、メディアからのオファーは増えていますし、「上り調子の今、なぜ出さないの?」という声もありますが、今は堪えて慎重になっているところです」

 世界を視野に入れたバンドとして、国内での1つの到達地点に定めているのが2020年。そのタイミングにはビジュアルのみで消費されない世間的な認知、さらにはオリンピックにふさわしいお茶の間感を獲得することを目指して、2020年から逆算した「軸をぶらさない」「急ぎすぎない」展開にこだわっている。

 現在は作品性を磨くことに注力し、楽曲そのものはもちろんミュージックビデオ制作にも徹底的にこだわり、シングルはすべてDVDとBDで発売。和装束風の衣装で魅せる圧巻のパフォーマンス、しかも8人ともに美男美女揃いという視覚的なエンタメ性から、動画サイトでの初期作再生数は約2年経った今なお週に数十万単位で伸びている。

 加えてメディア露出の少なさによる飢餓感も、CD売上やライブ動員に繋がったと考えられる。もちろんいつかは世間に広く打ち出す必要があるが、「今年はまだ早い」と吉澤氏。しかし冒頭で挙げたLive Nationからの招聘といった話題性も相まって、アーティストの価値はますます高まっている。それは今年4月から始まる全国ツアーのライブ会場のキャパの拡大や、チケットの争奪戦ぶりからも伺えるところだ。(文/児玉澄子)

(コンフィデンス 16年3月7日号掲載)



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