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吉田羊が明かす“自分が一番”と勘違いしていた新人時代

 ドラマ、映画、バラエティMCと大活躍中。エンタメシーンで引く手あまたの女優・吉田羊が、青春群像劇『心が叫びたがってるんだ。』でアニメ声優に初挑戦した。そんな吉田に“声の仕事”と“言葉の力”について話を聞いていくと、女優の原体験となった、高校時代の思い出話も飛び出した。

高校時代の応援団長経験が女優の道へ進む原体験になったと明かす吉田羊(写真:鈴木一なり)

高校時代の応援団長経験が女優の道へ進む原体験になったと明かす吉田羊(写真:鈴木一なり)

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◆初アニメ声優挑戦で感じたストレス

――ナレーションなど、声のお仕事も印象的な吉田さんにとって、本作がアニメ声優デビュー作ですね。
【吉田】 正直、とても難しかったです。いただいたアフレコ用の台本の読み方からまずわからないという。“これはちょっと困ったところに来てしまったな”と(苦笑)。収録現場で長井監督が細々とディレクションをしてくださって、監督と一緒に何とか作っていった感じです。

――声だけで役の感情を表現する、声優ならではの難しさは感じましたか?
【吉田】 最初はよりわかりやすく、役の気持ちを声に乗せるようにしていたんですけれども、監督に言われたのが「あまり感情を乗せ過ぎず、もっとニュートラルでいいです」と。自分の思う通りにしゃべれないというストレスはありつつも、(感情を)抑制することで、いましゃべっているのは、吉田羊ではなく、順のお母さんなんだと意識することができ、役の気持ちになれるという逆説的な気づきがありました。

――普段のお芝居とは違うアプローチだったのですか?
【吉田】 そうですね。感情をプラスしていくというよりは、引き算の作業だったように思います。その方が、観る人がそのキャラクターに感情移入しやすくなるという、とても不思議な体験でしたね。それは今後、女優業にも持ち帰って、活かしていきたいと思っています。例えば、思いの強いセリフであるほど、あえて言葉数を少なくすることで、相手が勝手に感じ取ってくれる部分もあるんじゃないかなって。

◆バラエティは“吉田羊”を演じている

――女優という仕事のなかで、言葉の力を意識することもありますか?
【吉田】 いろいろな役をやらせていただくなかには、私だったら言わないようなセリフもあります。でもそれは私の思考であって、その役の思考ではない。こういうセリフを吐く人なんだというところから、言葉が役を立ち上げる糸口になったり、そこから役を見つけていくという作業をします。女優って言葉を扱う仕事なので、言葉の重みを感じることはよくありますね。

――バラエティなどでの冴えたトークは?
【吉田】 私自身は、バラエティに出ている吉田羊を演じているつもりではいますけど、観る方には吉田羊の言葉として受け取られるじゃないですか? 自分の意図した通りに受け取られるとは限らない。そういう言葉の危険性も含めて、気をつけて扱わなくてはいけないと思っています。

――どのように気をつけているのですか?
【吉田】 例えばブログで、全てを投げ出してしまいたい! というようなネガティブな言葉を吐き出したくなるときでも、そうしたところで誰も得をしないし、いい気持ちもしないじゃないですか。なので、それをポジティブな言葉に変換して、発信するようにしています。そうすることで、自分自身もポジティブな方向に引っ張られるし、いま自分に起きているネガティブな事柄には、実はこういう効果があったんじゃないか!? と認識し直すことができる。そういう意味では、演じているのかもしれませんね(笑)。

◆女優の道を選ぶきっかけになった高校時代の応援団長経験

――ところで吉田さんは、どんな高校生でしたか? その頃からすでに、ハンサムウーマンだったのでしょうか。
【吉田】 至って普通の高校生でした(笑)。ただ高校3年の体育祭で、応援団長をやりました。この映画のなかの順たちのように、仲間と衣装デザインを考えて、衣装を縫って、放課後みんなで集まって、ダンスの振り付けを考えて、練習して……。そのゼロから自分たちで作り上げること、目標に向かって一致団結すること、それぞれに役割を全うすること、その一つひとつが、あのときの私たちをひと回り大きくしてくれたと思うんです。あの経験があったからこそ、今がある。何かに向かってがんばることに対して“あのときもやれたじゃないか!”って背中を押してくれる経験だったと思います。

――そのなかでも、応援団長として先頭に立っていたのですね?
【吉田】 当時の私は、自信のない目立ちたがり屋という、非常にめんどくさい性格で(笑)、自分から「応援団長やりたい!」って言えなかったんですよね。でもたぶん、顔に書いてあったんでしょうね。周りが「吉田でいいんじゃない?」って神輿に上げてくれて、無事に応援団長をやれたんです(笑)。私の高校時代の思い出はそれだけと言っても過言ではないくらい、印象的な出来事でした。女優という仕事を選ぶ原体験にもなりました。

――応援団長から女優へ、ですか!?
【吉田】 応援団長をやって、ファンクラブができたんですね。「先輩、カッコいい!」って(笑)。肉親ではない人間が、私のパフォーマンスを評価し、喜んでくれたという体験は、女優という仕事に通じるものがあって。いま思えば、あれが初めて、人前で何かをしたい、やることが気持ちいい! と感じた原体験だったと思います。

――高校生の頃といまとでは、何が変わったと思いますか?
【吉田】 根本的には変わってないですね、私という人間は。いまだに自信ないですし(苦笑)。でも人は、自分だけで生きているわけじゃないんだなっていうのは、いまこの世界でいろいろなご縁をいただくなかで実感しています。昔は……とくにお芝居を始めて、小劇場でやっていたころは、自分こそがいちばん芝居がうまいと勘違いしていた人間でしたから。そこから次第に、お芝居っていうのは、相手がいてこそですし、お互いに心を震わせて、初めて成立する世界だということを痛感するようになりました。うまい方とやればやるほど、自分の下手さ加減を実感して、自分がいちばんだなんて思ったら終わりだなというようなことを感じるようにもなり……。昔に比べたら、勘違いできなくなったっていうのは、変わったところかなって思いますね(笑)。
(文:石村加奈)

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