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海外で脚光浴びるR&Bサウンド

 サム・スミスエド・シーランら、若手のヒットや、ディアンジェロの14年ぶり新作など、海外ではR&Rサウンドが支持を集めている。その盛り上がりを受けて、日本でもR&Bブームが到来する。

本年度グラミー主要部門で4冠を獲得したサム・スミス。今年2月18日、東京キネマ倶楽部での一夜限りの来日ライブを実施。チケットは1分で完売したという

本年度グラミー主要部門で4冠を獲得したサム・スミス。今年2月18日、東京キネマ倶楽部での一夜限りの来日ライブを実施。チケットは1分で完売したという

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 サム・スミスが本年度グラミー主要部門で4冠を獲得したことは日本でも大きな話題となった。年々華やかになるこのグラミーという大舞台で、英国の新人が支持を集めたことは特筆に値すると言っていいだろう。なぜなら、サムはまだ派手なショウビズ界にも慣れていない、シンプルに歌の良さを確実な歌唱力で伝えることができる実力派だからだ。

 実際に近年、歌にしっかり基軸を置いた男性のソロ・アーティスト、とりわけソウル、R&Bの現代版とも言えるボーカリストが今一度評価されるようになっている。

 その傾向を象徴するのが、ディアンジェロの約14年ぶりとなる新作『ブラック・メサイア』だ。クールで洗練されたトラックに唸らされるものの、基本は彼のセクシュアルなボーカルが堪能できる1枚。今年の「サマーソニック」に出演することも早々に発表され、デビュー当時を知らない若い世代からも熱い視線が注がれている。

 エド・シーランは、同じ英国白人であるサム・スミスよりひと足早く、ブルー・アイド・ソウル的なスタイルでファレル・ウィリアムスらのバックアップを受けて、アルバムが全米、全英でチャート1位を獲得。アデルの男性版とも言われるサムの登場前に、この路線に先鞭をつけたような印象もある。かつてはリアーナとの恋仲が話題を集めたクリス・ブラウンが、EDMとの融合をつきつめたアルバムを経て、昨年の『X』で王道R&B路線へと大きく舵を切ったのも興味深い。まもなくリリースされるという新作は、それこそディアンジェロがデビューしてきた90年代のスタイルを意識したようなヒップホップ・ソウル・アルバムになるとのこと。そのディアンジェロ、クリス・ブラウンが所属する日本のソニー・ミュージックジャパンインターナショナルの担当者も、ソウル、R&Bへの見直しと90年代というキーワードを挙げた上で、「3月末に来日予定のティナーシェという女性アーティストも、かつて“ヒップホップソウル”と呼ばれ一世を風靡したサウンドを現代にアップデートしたような作品で、注目を集めています。90年代伝説のグループ、ジョデシィも復活するようですし、R&Bブームの兆しを感じます」と分析する。

■ブームへのカギはロック・リスナーの取り込み

 こうしたソウル、R&Bを下地にした本格派ボーカル再評価の背後には、例えば若手とデュエットするトニー・ベネットや、生誕100周年を機に、今なお影響力を保ち続けるフランク・シナトラらが見直されるような傾向とも無関係ではないだろう。ボブ・ディランの新作は、そのシナトラのレパートリーを取り上げたものだった。

 また、ブルーノート所属の若きシンガー、ホセ・ジェイムズと、過去にグラミーの「ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞」を幾度も受賞しているカサンドラ・ウィルソンが、先頃揃ってビリー・ホリデイのカバーアルバムをリリースしたのも印象的だ。

 サム・スミスやエド・シーランらがブラック・ミュージック・テイストを素直に打ち出したボーカル・アルバムをヒットさせたことで、ロック・リスナーへの訴求も高まった。こうなると、かつて時代を席巻したベイビーフェイス、ローリン・ヒル(フージーズ)、TLCといった90 年代のR&Bシーンを支えた主役たちの本格的復活を期待してしまうが、ともあれ今年、ディアンジェロやファレルも出演する「サマーソニック」などに集まる洋楽ロック・リスナーをどこまで取り込めるかが、今後こうしたR&B、ソウル・ブームを日本でしっかりカタチにしていくためのカギとなるだろう。

(ORIGINAL CONFIDENCE 15年3月30日号より、文:岡村詩野)

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  • 本年度グラミー主要部門で4冠を獲得したサム・スミス。今年2月18日、東京キネマ倶楽部での一夜限りの来日ライブを実施。チケットは1分で完売したという
  • 若い世代からも注目を集めるディアンジェロは、「サマーソニック2015」に出演する
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