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カラオケ対決番組からヒットが生まれた2013年〜カバーアルバムの新しいかたち

 ここ数年、カバーアルバムが人気傾向にあり、世代問わず手に取りやすい商品となっている。徳永英明が女性アーティストの名曲をカバーした『VOCALIST』シリーズをはじめ、世界が絶賛した由紀さおり&ピンク・マルティーニの『1969』など、音楽市場を賑わした。だが2013年は、そのカバー市場に変化が見え、新しいかたちでのヒットが目立った。

クリス・ハートのカバーアルバム『Heart Song -Special Edition-』

クリス・ハートのカバーアルバム『Heart Song -Special Edition-』

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■近年は、“企画力”が高いアーティスト独自のカバーアルバムがヒット

 その時代を代表する女性アーティストの名曲の数々を、男性アーティストである徳永英明がカバーした『VOCALIST』はロングセールスを記録し、シリーズ第4弾まで発売された。米・ロサンゼルス在住のシェネルも海外アーティストながら、久保田利伸やMISIAらのJ-POP曲を英語詞でカバーした『ラブ・ソングス』で、新しいカバーマーケットを開拓した。

 昨年は、世界で活躍するジャズオーケストラ、ピンク・マルティーニと由紀さおりがコラボレーションし、ほぼ全曲を日本語で歌ったカバーアルバム『1969』は、海外でも高い評価を得た。また、福山雅治や平井堅など男性シンガーの楽曲をカバーしたBENIの『COVERS』は、収録13曲中、10曲の英語訳詞を自身で行った。いわゆるコ永英明の“女性ボーカル作品の男声カバー”の対極を行く“男性ボーカル作品の女声カバー”で、話題を集めた。ここ数年の傾向としては、年代やジャンルを問わず、趣向を凝らした“企画力”の高いカバーが好まれ、新たな“ジャンル”として定着してきた。

■カラオケ対決番組への出演がきっかけでヒットへ

 そんななか、2013年は、バラエティ番組への出演をきっかけに人気を獲得したアーティストによるカバーアルバムのヒットが目立った。関ジャニ∞がMCを務めるバラエティ番組『関ジャニの仕分け∞』(テレビ朝日系)のカラオケ対決企画「歌ウマ芸能人仕分け」で、圧倒的な歌唱力の高さを披露し注目を集めたMay J.。番組内でも高い評価を得た宇多田ヒカルの「First Love」や伊藤由奈の「Precious」を収録した『Summer Ballad Covers』が、年間アルバムランキングで28位にランクインした。

 カバーアルバムを発売した際に、ORICON STYLEのインタビューで、「負けてはいけないという自分自身のプレッシャーがすごくて、いっそ一度、負けたほうがラクになるんじゃないかなと思ったりもして……」とプレッシャーに押し潰されそうになった時もあったと語っている。しかし、競合アーティストやタレントを次々と負かしていく彼女の「どんな曲でも挑戦したいっていう気持ちは常にある」と強い意志で挑む姿は、ただのカラオケ対決を超え、観るものに感動を与えた。

 日本の歌を世界一上手く歌う外国人の座を競うカラオケ番組『のどじまん ザ!ワールド』(日本テレビ系)の第3回大会優勝者となったクリス・ハートもそのひとり。彼の歌手デビューアルバム『Heart Song』は、年間アルバムランキングで29位と新人ながら大健闘した。

 米カリフォルニア州サンフランシスコ出身のクリスは、中学生の時に、ケーブルテレビでオンエアされていた日本の歌番組をたまたま観たことがきっかけで、J-POPに興味を持つようになった。来日後、J-POPのカバーやオリジナル曲の動画をYouTubeにアップした際に、日本テレビのスタッフの目にとまり、2012年3月に『のどじまん ザ! ワールド』に出演。小田和正の「たしかなこと」を歌唱し、天才ソウルシンガーと絶賛され、見事優勝した。

 デビュー時にORICON STYLEのインタビューで、クリスは「初めてJ-POPを好きになった12歳の頃は、『紅白歌合戦』に出たいっていうのが目標だった」と話してくれた。その彼が、松田聖子とのデュエット曲「夢がさめて」で大みそか恒例の『第64回NHK紅白歌合戦』に初出場を決めた。魅せ方や聴かせ方にも新たな要素が加わり、番組から派生して新たなかたちで人気を得たカバーアルバム。ニコラス・エドワーズやダイアナ・ガーネットといったカラオケ番組発のアーティストが続々デビューを果たした2013年、これまで無かった、新たな“ブレイクの過程”を提示したと言えるだろう。

関連写真

  • クリス・ハートのカバーアルバム『Heart Song -Special Edition-』
  • May J.のカバーアルバム『Summer Ballad Covers』

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