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年間映画興行ランキング TOP5はアニメと洋画 邦画メガヒット時代の終焉!?

 2013年の年間映画興行ランキングTOP10とともに、この一年の映画シーンを映画ジャーナリストの大高宏雄氏が総括する。今年のTOP5は、『風立ちぬ』(120億円)『モンスターズ・ユニバーシティ』(89億6000万円)『ONE PIECE FILM Z』(68億5000万円)『レ・ミゼラブル』(59億3000万円)『テッド』(42億円)とアニメと洋画が占めた。アニメの隆盛、それと逆行する邦画実写の興行結果、メガヒットの時代の終焉を指し示す邦画シーンの動向、重要な意味をもつダイナミックな“観客動向”の変化とは。

1位『風立ちぬ』、2位『モンスターズ・ユニバーシティ』(C)2013 二馬力・GNDHDDTK(C)213 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

1位『風立ちぬ』、2位『モンスターズ・ユニバーシティ』(C)2013 二馬力・GNDHDDTK(C)213 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

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◆多岐にわたるヒット傾向を見せたアニメ作品

 映画興行は一筋縄ではいかない様相を呈してきた。これまで毎年、映画“興行”総括を行う過程で、私はこうした言い回しを使うことはなかった。一筋縄ではいかない。その及ぼす範囲は、邦画、洋画含めた映画のありよう、宣伝など情報装置の変化、シネコンなど映画館システムの形など多岐にわたるが、ここでは観客の動向が、もっとも一筋縄ではいかなくなってきたことを強く指摘しておきたい。

 その顕著な例が、アニメ興行の充実ぶりである。アニメ全般のことではない。当然、個々の作品をあたれば、いい結果ばかりではないからだ。ただ、総体的な意味において、明らかにアニメは集客力を増している。それは、データがはっきりと物語っていることだ。

 2013年、邦画と洋画を合わせた作品別の興収では、『風立ちぬ』『モンスターズ・ユニバーシティ』『ONE PIECE FILM Z』が、TOP3を占めた。邦画だけをみても、上位4位までがアニメである。実写作品では、『真夏の方程式』や『そして父になる』などが30億円台の前半で推移したが、アニメのこの“位置取り”に、驚かない人はいまい。アニメが、映画興行の最前線、否中枢部に出てきたのは、間違いのない事実なのである。

 かつても、アニメの強い時代はあった。では、その時代と何が違うかといえば、ヒットのバリエーションが明らかに増えたことである。スタジオジブリの宮崎駿監督の新作が登場し、『ドラえもん』『名探偵コナン』『ポケモン』などの定番アニメが並ぶのには、誰も驚かない。だが2013年は、これらに『ONE PIECE』と『DRAGON BALL』の大ヒットが加わった。ピクサーやディズニーのCGアニメも、当然ながらこの列に並ぶ。

 さらに、20億円近くまで数字を伸ばした『魔法少女まどかマギカ』や『銀魂』なども登場した。これらの成績から、アニメの興行が作品ジャンル、客層の広さなどを含めて、実に多岐にわたるヒット傾向を見せたのがわかるだろう。そこから、観客の嗜好性、関心の所在の変化を読み解くことができる。このダイナミックな“観客動向”の変化にこそ、現在の映画と興行のありようを揺さぶるような極めて重要な意味があると考えられる。

 そのアニメの中枢に位置するスタジオジブリの宮崎駿監督が、『風立ちぬ』の公開中に引退宣言をしたことも、先の嗜好性、関心の所在の変化を背後に置いてみると、実に象徴的な出来事だったと言えはしないか。それは、いち映画監督の決意表明を超えて、邦画全般にとっても、一筋縄ではいかない変化をもたらすことになるからである。それは単純に言えば、メガヒットの時代の終焉を意味する。

◆アニメの隆盛と逆行する邦画実写の興行結果

 2012年は『踊る大捜査線』シリーズが終わり、2013年は宮崎監督の引退が現実になった。それは、この15年にわたり両者が生み出してきたメガヒット作品の終焉を指し示す。今後、メガヒットがゼロということはないだろうが、そのポテンシャルが著しく減退するだろうことは想像に難くない。それを指しても、一筋縄ではいかない時代に突入するだろうことが予測されよう。

 そのメガヒットなき時代の傾向は、とくに邦画の成績にすでに表れているのだ。『真夏の方程式』は、『ガリレオ』シリーズの前作を大きく下回った。これを象徴的に、テレビ局主体の実写作品は全体的に成績を落としている。それはまるで、アニメの隆盛と逆行するような興行結果だったとも言える。本来なら、実写作品、アニメが並び立つような興行が成立してもいいのだが、映画興行というのは何らかのバランスを取ろうとするのだろうか。相乗効果的に動員が伸びていくことが、なかなか実現しないのである。

 そうしたこととも関連しなくはないと思うが、単館系興行のほうを振り返っても、ヒットが少なかったと言わざるをえない。邦画では、『凶悪』や『地獄でなぜ悪い』などがシネコンメインの単館系という今日的な興行の場で、ある程度の成功をみたことは特筆していい。洋画は、『クロワッサンで朝食を』や『ハンナ・アーレント』など、シネスイッチ銀座や岩波ホールで好成績の作品も登場した。だが、全体の活性化にほど遠い推移だった。

 『凶悪』や『地獄でなぜ悪い』でいえば、本来ミニシアターで公開されてしかるべき作品が、シネコンメインになるとますますミニシアターから話題作が減ってしまうことも考えたい。さらに翻って、シネコンメインの単館系作品は、果たして本当にその興行の力が発揮できているかといえば、かなり疑問な点も残る。作品にふさわしい公開の形もまた、一筋縄ではいかない。

 くどくなるが、全く映画興行は一筋縄ではいかなくなった。今回、観客動向の変化を見据えて、こうした言い方をあえて多用しているわけだが、その意には、プラス面も加味したつもりだ。映画界は、この変化をどう観客増につなげるかを、真剣に考えるときに来たからである。アニメへの関心の増大は、実写作品とのバランスを本当に崩すものなのか。否、そうではない。邦画、洋画、実写、アニメ云々を超えた映画への関心の広がりが、そこからは期待できないか。

 そのような諸々を、ひとつの閉じられた枠に押し込めることなく、映画との可能性の問題として把握し、実践を伴う方法論を考えてみる。こういう時代にボヤボヤしていたら、取り残されるのは、ひっきょう、映画を送り出す側ということになりかねないのである。(文:映画ジャーナリスト・大高宏雄)

速報!! 2013年間興行ランキングTOP10(※興行収入も)
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