Mr.Childrenが福岡マリンメッセ公演(5月4日、5日)を皮切りに全国アリーナツアー『Mr.Children“HOME”TOUR 2007』をスタート。3月にリリースした13thアルバム『HOME』を携えて、彼らは約1年半ぶりにライブを中心とした日々を送っている。6月6日、7日の横浜アリーナ公演は、全国7ヶ所14公演を行う今回のツアーのちょうど折り返し地点。このツアーのために用意した曲目や曲順は、徐々に彼らの身体に馴染み、そして4人はライブを重ねるたびにアルバム『HOME』を携えたツアー(ライブ)には、会場に足を運んでくれたみんなの存在がいかに重要なのかを改めて感じているのだろう。だって『HOME』は、今までの彼らの作品のなかで、いちばんみんなのそばにあって、みんなの生活に寄り添っているアルバムだから・・・。
今回のツアーには、Mr.Childrenのプロデューサーである小林武史が参加しているというのもキーポイントだ。デビューからずっとメンバーと共にMr.Childrenの作品を一緒に形作ってきた小林が、Mr.Childrenのツアーに参加するのは初めてだが、『HOME』に収録されている曲たちの原型をスタジオ内で“せ〜の!”と呼吸や気持ちを合わせて作ったMr.Childrenの4人と小林武史にとって、このステージ上に小林武史がいるのは、とても自然な流れだった。そして、このツアーに参加したミュージシャン(ストリングスやホーンセクション)もまた、『HOME』のレコーディングを彼らと一緒に行った人たちばかり。そう、このツアーは『HOME』のレコーディングスタジオから生まれた音や歌が、生のライブへとゆるやかに結びついていったものになっていたのだった。
横浜アリーナは、1公演で約1万5千人の観客を動員できる大きな会場だ。立ち見のお客さんもぎっしり入り、彼らはぐるり360度観客に囲まれたステージに立った。そこは汗にぬれた後ろ姿も、ひと呼吸ついてステージドリンクを飲む姿も、すべて丸見えの場所だけど、なんだか彼らはみんなに見守られているこの場所が、とても心地いいように見えた。ベースの中川がドラムのJen(鈴木)のほうを振り向いたときの表情だって、通常のステージ設定では決してみることができないし、それこそ田原がギターを変えるときのスタッフの素早い動きだって、いつも以上によく見える。『HOME』はとても優しくて温かなアルバムだったけど、すべて丸見えのライブには、そこに潔さがプラスされていた。そして、彼らにとって横浜アリーナという場所が“ホームグラウンド”のような場所であるということも、この日ならではの温かな雰囲気を作っていた。
東京出身の彼らだけれど、6月6日のライブは、なんと17回目となる横浜アリーナでのライブだったのだ。「みんなの表情、声、リズムのとりかた、後ろからの視線に影響されながら、今日の音を完成させたいと思います」と、桜井のMC。あえて未完成のまま完成させたアルバム『HOME』が、みんなと共に、この1日だけの“HOMEライブ”を作り、『HOME』というアルバムは、そのアルバムに収録されてはいない他の演奏曲までも“HOME”の色にした。「彩り」の歌詞にあった赤やピンクや紫には、人それぞれが思い描く濃淡があった。「Another Story」の風景は、きっとみんなの近所にあったり、かつて見た風景だったりする。小林武史のピアノから始まる「PIANO MAN」。ズンズンと体に響く重低音がライブ会場の雰囲気をガラリとクールに変化させた「フェイク」。桜井が<そのすべて真実>と歌った言葉が胸に刺さった「Any」etc・・・。ライブが始まってすぐに汗だくになっていた桜井。演奏しながら歌を口づさんでいるJen。大きな会場にいるみんなを見回しながら、思わず笑みがこぼれていた田原。黙々とベースを弾いていた中川。そして、小林武史の表情豊かなピアノ。そこにある全てのものが、Mr.Childrenそのものだった。
「タイトルとは真逆な曲」と桜井が言って歌ったのは「あんまり覚えてないや」だった。この日のライブのことを100%全部何もかも覚えて記憶に残すことは難しいだろう。けれども、この日のライブで感じたことや見えた風景や誰と一緒に見に行ったかということは、きっとこれからどんなに時が経っても忘れないと思う。いつもの生活に戻って、仕事や勉強や日々の忙しさにもまれて、もし忘れてしまったとしても、アルバム『HOME』を聴いたり、街の中でふと彼らの曲を耳にしたときに、その記憶や感触がふんわりと自分の心のなかに温かな風となって吹いてくるだろう。アルバム『HOME』と“HOME TOUR”は、みんなにとって、彼らにとって、そんな大切な存在になった場所だと思う。
(文:松浦靖恵)
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