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斉藤和義『20周年を迎え感じる意識の変化とは?“好きなシングル”ランキングも発表☆』
今後は興味のある人と組んで曲を作る機会が増えるんじゃないかな
「既発曲ばかりのアルバムじゃつまらないから、“いま、歌を作るとこういう感じ”という新曲だけのアルバムも作ろうと思ったんですよ。(2枚組という案もあったかもしれないけど)情報量が多すぎて聴いていると疲れるから、それは避けたかった。でも、2枚同時発売だから結局は似たようなものなんですけどね(苦笑)。タイトルは決まるまで時間がかかりました。問題は中身だからどんなものでも構わないと思ったけど……。2枚聴くと“いまの斉藤和義”という感じになっていると思います」
聴いた人それぞれに思い浮かぶ斉藤和義像は違うと思うが、タイアップ付きのシングルが並ぶ『斉藤』からは、「やさしくなりたい」の大ヒットを筆頭としたオファーが次々と舞い込んでいる現状や、クライアントの意向を十分に汲み、それを枷(かせ)ではなく踏みきり台にして自分の音楽世界を広げてみせる斉藤の強さとポテンシャルの高さが見えてくる気がした。『和義』からは、これまでとはひと味違う斉藤が見えてくる。曲作りから全演奏までひとりでこなした曲がある一方で、共作が10曲中5曲を占めている。
「詞も曲も、全部を自分で作るのが基本ですけど、それにこだわりすぎることはないな、と思うようになってきているんですよ。歌詞は自分で書くにしても、曲はほかの人と作ってみたいな、と。途中まで出来た曲のその先を誰かと一緒に作ることで、予想を超えた展開になったりする。自分の曲も広がるし、作っていても楽しいですよ。何より大事なのは“いい楽曲を作ること”。そのために興味のある人と組んで楽曲を作る機会は、今後は増えるんじゃないかな」
10年近く連れ添ったメンバーもいるツアーバンドや、今年になって知り合ったベーシストで作曲家の山口寛雄。稀代のドラマー 中村達也、RIZEのベーシスト KenKen。さらに今年5月、MANNISH BOYS(斉藤和義と中村達也によるロックンロールユニット)として『WEEKEND LOVERS ’13』ツアーを一緒に回った、The Birthdayのチバユウスケとも共作している。
「まさかここに来てチバくんと一緒に作品を作るなんて、自分でも思ってなかった(笑)。ツアー中に間近で接して、出てくる作品は違うけど、曲作りに対する姿勢が一緒なんだろうなあという気がして声をかけたんですよ。歌詞を書く者同士、それぞれにこだわりがあって、作ってておもしろかったし、作りがいがありました。2人だからこそできた曲になったと思うし、やってよかった」
“わかりやすさ”と“こだわり”、その両方をいつも混ぜていたい
「曲の作りにしても、仕掛けや音色、機材にしても、結構マニアックなことはやっていると思うけど、それがそのまま出るのは嫌なんですよ。すぐに憶えられる歌謡曲が大好きだった影響もあると思うけど、誰にでも口ずさめるわかりやすさと自分にしかわからないこだわり、その両方をいつも混ぜていたいな、と思ってますね」
斉藤の楽曲は、以前に増して憶えやすくなってきている気がする。東日本大震災と福島の原発事故の後、「ミュージシャンとしての自分の存在意義を見失った」と以前斉藤は話していたが、そこを超えた斉藤の中に音楽で心を和ませる、口ずさんでもらうことで心を楽にする、という意識が強まったのではないかと思えてならない。また、「普段の生活で感じたり考えていることが歌になる」斉藤だからこそ、結果的に反原発色がストレートに出た前作『45 STONES』を経て、相変わらず消えない不信感や疑問をいまは“気付く人は気付く”くらいのさりげなさで忍ばせてあるようにも思う。この2年の斉藤の変化も、きっとアルバムに刻まれている。
斉藤は8月にデビュー20周年を迎えたが、彼の実力に人気が追いついたのはここ数年。アニバーサリーライブで「デビュー50周年を超えたザ・ローリングストーンズに比べたらまだまだ駆け出し」と話していたが、きっとそれは謙遜でもなんでもない素直な思いのはず。“守り”になんか入ることなく、こだわりから解放された自由な心で、誰より自分が楽しむために、いままでにない新しい音楽、もっといい歌を追求していこうという果敢な姿勢が、今回のアルバムには映し出されており、“斉藤和義はまだまだこれからおもしろくなる”と確信させてくれる。
⇒【20周年☆特別企画】和義ファンに聞いた! 好きな曲ランキング
(文:木村由理江)
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