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水樹奈々『2年ヶ5月ぶり☆久々アルバムで発見できた“新しい自分”とは?』

 声優アーティストのトップランナー・水樹奈々が、9thアルバム『ROCKBOUND NEIGHBORS』を完成させた。オリジナルは2年5ヶ月ぶり。壮大なオーケストレーションで始まり、素朴な心情を歌うバラードで終わる全16曲は多岐に渡るが、どこを切っても耳に残る圧倒的クオリティの1枚となった。

どの曲にも“水樹節”を入れたい

――アルバム楽曲をセレクトする前から、“こんなのをやりたい”というのはありました?
水樹奈々やっぱりアルバムだからこそ、振り切って笑ってしまうぐらいインパクトのある曲は入れたいし、最近のシングルは速い曲ばかりだからバラードも歌いたい。ライブでコール&レスポンスができるポップな曲もダンスナンバーも……と、幅広くセレクトしたいと思ってました。ただ今回は、原点に帰って“歌とメロディーで勝負!”ということをコンセプトにしていて。それはどの曲でも実践できたんじゃないかと思います。

――シングルでは熱い曲が続いてますが、そこが必ずしも自分のなかの王道ではないと?
水樹その時細胞が求めてるというか、歌いたい曲を選んでいます。「Lovely Fruit」みたいにキュートで女の子らしい曲も、「LINKAGE」みたいにゴリゴリ攻めまくりの曲も歌いたい。欲張りですけど、守りに入ると、できることも狭まっちゃうので、冒険する心はいつも持っていたくて。

――そういう新しい自分は、今回のアルバムを通じて発見できました?
水樹できました。テンポが速いドラマティックな曲が多いけど、ボーカルは合わせてガンガン激しく乗せるのではなくて。俯瞰(ふかん)で捉えて、曲のなかの繊細な部分をちゃんと声にする。女性らしい表現をできたのが新しい発見でした。「アヴァロンの王冠」も、オーケストレーションの派手さに唖然とするかもしれませんけど(笑)、ボーカルをよく聴いていただくと、実はすごく優しく歌ってるんです。台風の目にいるような状態?不思議な温度感があって。直球だけでなく、違う角度からも投げられるようになって、よりボーカルで引っ張る形が見えてきました。大きな変化の1枚になった気がします。

――確かに、激しい曲でも歌声にはフェミニンな印象が強いですね。
水樹ただジャンルが幅広くても、“歌ってるだけ”になってはいけない。どの曲にも必ず“水樹節”というか、自分らしさを取り入れたくて。それがニュアンスの付け方やビブラートのかけ方、感情の乗せ方になり、結果的に私の素に近くなって、女性らしさが前に出たのかもしれません。

――さっき出た「Lovely Fruit」は、お姉さんっぽくて大胆ですよね(笑)。
水樹曲がポップでコミカルな要素も入っていて、(グルメアニメの)『トリコ』のテーマらしく<いただきます>とか<食べてもいいよ>というワードを織り交ぜてもらったら、ラブな部分とリンクして、ドキッとする小悪魔チックな曲になりました。ウブな男の子をからかってるような(笑)。

――一方、「ダーリンプラスティック」や「Crescent Child」で青春の残像や行き詰まりがリアルに歌われているのも、新しいかなと。
水樹大人になって思春期の頃を改めて思い返すことはあるし、その2曲はノスタルジックな雰囲気があったから。「ダーリンプラスティック」はデモを聴いたとき、私と同年代の女の子が仕事で疲れたりイヤなことがあって、20代前半ぐらいの恋をふと思い出すイメージが浮かびました。お互い嫌いになったわけでなく、若さゆえに別れてしまった人が“今ごろ何してるのかな?”と頭をよぎる。そんな温度感で歌えたらと。

――「Crescent Child」は悩みの渦中にいるようで。
水樹自分の将来について悶々としている、10代の思春期の頃の気持ちを歌いたいと思いました。実際に今、ラジオに10代の方からいろいろ相談メールをいただくんですが、そんなみなさんに届ける歌を作りたかったんです。振り返れば、私もその頃はうまく行かなくて迷って、壁に当たって、諦めかけたことが何度もあったし。だから、誰でも同じみんな同じように悩むことがある。そして、抜け出す術は自分しか見つけられない……ということを歌いました。

――直接“がんばれ!”という形ではなく。
水樹「もがいてるときの感情で……」と、作詞家さんにお願いしました。気持ちが落ちてナイーブなときに、熱量の高い曲で“大丈夫だ!”と言われても……ってなるじゃないですか(笑)。そんなときにただ寄り添って、気持ちを上げるきっかけになる曲にできたらいいなって。

普段着やパジャマ、スッピンの私がいる作品

――そして、今回も「STAR ROAD」で作曲を手掛けてますが、そっちにも意欲が?
水樹毎回チャレンジしていきたいと思ってます。最初に作曲したのが「SUPER GENERATION」で、いきなりシングル表題曲制作にチャレンジだったので「そんなー!?」ってところから始まったんですけど(笑)、探り探りで形になると、大変でも“もっと追求したい!”と意欲が沸いてきて。メロディーは作詞よりも自分を出さないと、生まれないものだと思います。自分の裸というより、内臓まで見られてる感じなので(笑)。日記やメールを見られるより恥ずかしいというか(笑)。

――そうですか?作詞のほうが言葉になる分、恥ずかしい気もしますが。
水樹私もそう思ってたんです。メジャーデビューして初めて作詞したのは「恋してる…」で、キュンキュンなワードがいっぱい入っていたし。でも、曲を提出するときは、それ以上に恥ずかしかった。自分が聴いてきた音楽や触れてきたものがダイレクトに出るから、言葉以上に伝わっちゃう感じで。

――でも、「STAR ROAD」のメロディーは、スタッフにも好評だったのでは?
水樹すごく好評で嬉しかったです。感性を解放するために軽井沢に行って、星空を見ていたときにメロディーが浮かんだんですけど、「冬の星空の空気が伝わった」と言ってもらえて。私は小さい頃から演歌や歌謡曲を聴いて育って、そういう歌謡曲の雰囲気も入って、これまでになく私らしい曲になりました。

――アルバム全体でも、2年5ヶ月前と違う、あるいは去年とも違う自分も出せましたか?
水樹さっきの話と重なりますけど、今年はより自分らしくいられた年だと思うんです。大きな転機になったのは、去年始めに自叙伝を出して、直後のフルオーケストラライブで、今までにない自然な自分をステージで感じられて。そこから少しずつ変わりはじめました。ずっと戦闘服を着てなきゃいけないと思っていたんですが、そうじゃない自分がいてもいい――と気づけたのが、今年でした。

――それがアルバムにも出て。
水樹アルバムには普段着の私もいれば、パジャマの私もスッピンの私もいる。バラエティ豊かな曲とふれ合うには、直球勝負だけだと対応できない。前回のツアーから、みんなとより近くにいたいと思って“絆”をテーマにしました。でも、自分がオープンにならないと深くは繋がれない。だから、歌い方がガラッと変わった部分もあります。ツアーから大きく変わった自分が、一歩踏み出した作品になりました。

――では、来年に向けて、さらに身に付けていきたいものもありますか?
水樹表現の幅をもっと広げたいです。声優としても、年相応以上の役を演じることもあると思うので、そこで、自分がどんな人生を過ごしているかによって、出せるものも変わると思うんです。だから、プライベートももっと充実させたいです。今は仕事で余裕がなくてセカセカしてることが多いので、ちょっと早く起きて朝食を作って、優雅に紅茶を飲んで仕事に行くとか(笑)。

――今の多忙なスケジュールだと、なかなか難しいんでしょうけど。
水樹でも、忙しい人ほど時間の使い方が上手じゃないですか。いつの間にか習いごとをして、特技を増やしてたり。日常生活で、それこそ朝1杯の野菜ジュースを作るだけでも、全然変わると思うんです。そういう大人の余裕が持てるようになりたい(笑)。色気とかの表現にも繋がるはずだから。懐の深い人になりたいです。

――プロフィールの特技欄には、ずっと“お菓子作り”と出てますけど。
水樹もう年に2回ぐらいしか作ってません(笑)。でも、クリスマスにはちゃんと作りますから!(笑)
(文:斉藤貴志)

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