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OKAMOTO'S『自由な発想と音楽への情熱――先輩アーティストも認める彼らの魅力とは!?』

今年CDデビュー5周年を迎え、5枚目のアルバム『Let It V』をリリースし、自己最高位となる14位にランクインして注目を集めているOKAMOTO'S。勢いは止まるところを知らず、早くもアルバム『VXV』をリリース。いい意味でロック・バカで、そこが最高にかっこいい作品。このアルバムを聴くと、そんなOKAMOTO'Sの様々な魅力が見えて来る。

最近は音楽をあまり好きじゃないバンドが多いのかな(苦笑)

 OKAMOTO'Sの『VXV』には、RIP SLYME、奥田民生、東京スカパラダイスオーケストラ、黒猫チェルシー、ROY(THE BAWDIES)という5組とのコラボ曲が収録され、OKAMOTO'Sならではの多彩な魅力が散りばめられた。

 そもそもOKAMOTO'Sほど、特に先輩のロックバンドやアーティストから愛されているバンドは、他にはいない。これまでにも、Chara、吉井和哉、奥田民生、宮田和弥、甲本ヒロト、真島昌利、チバユウスケなど、共演歴を挙げれば枚挙にいとまがない。それはなぜなのか?

 「単純に音楽の話が当たり前にできるからじゃないでしょうか。ロックに限らず音楽が好きで、音楽が仕事だからそういうのが当たり前だと思っているから。でも逆を言うと、最近は音楽をあまり好きじゃないバンドが多いのかなって(苦笑)」(オカモトレイジ)

 近年の20代のバンドを取材すると、ナンバーガールやHi-STANDARDなどの日本のロックバンドをルーツに挙げるアーティストが多い。そんななかにあってOKAMOTO’Sは、珍しく60〜70年代の洋楽ロックをルーツに挙げる。学生時代に村上龍の原作映画『69』に触発されたことや、ジャム研(部活)に入ったことをきっかけに、60〜70年代のロックの魅力に取り憑かれ、当時のありとあらゆるサウンドをむさぼり聴いた。その知識量は、40代や50代のロックアーティストをも唸らせる。きっと先輩のバンドがかつて感じていたものと同じ、ロックのルーツに対する愛情やリスペクトの気持ちを、OKAMOTO'Sからも感じているのだろう。そんな骨のある後輩が現れたら、かわいがりたくもなるし、いっちょ鍛えてやろうという気にもなる。スカパラとの「Heart On Fire」や民生との「答えはMaybe」は、一発録りでレコーディングを慣行したとのこと。OKAMOTO'Sの持つポテンシャルの高さを信頼すればこそのレコーディング方法だ。

 「スカパラのときは、総勢13人が一度に入れるスタジオで、“せーの”で録ったんです。しかも音のチェックもなしでいきなり。さすがの俺らも、“マジですか?”って、ちょっとピリッとなりました。しかもイントロが俺のギターだったんで、かなり緊張しましたよ。でも、そんなすごくいい緊張感の中で、最高のテイクを引き出してもらいました」(オカモトコウキ)

 「民生さんは逆に、リラックスした雰囲気の中で引き出してくれた。三日間の合宿レコーディングをしたんですけど、8割くらい遊んでました。釣りに行ったり、民生さんが作ってくれた飯を食べながらみんなで『Mステ』観たり(笑)。音楽的な知識や、技法とはまた違うものを勉強させてもらった感じですね」(オカモトショウ)

賞味期限のないロックを――自分たちの音楽にこだわりを持つべき!

 また、RIP SLYMEとは、OKAMOTO'Sが演奏した音源をDJ FUMIYAがエディットする形で制作。音源が両者を行き交うやりとりが何度もあったそうで、「バンドとHIP HOPのいいところ取りのコラボになった」と話す。こうした先輩アーティストとのコラボもあれば、同年代との普段からの仲の良さや信頼関係が、いい具合に表れたのが、ROY(THE BAWDIES)と黒猫チェルシーといった、OKAMOTO'Sと近しい存在にあるバンドとのコラボだ。

 THE BAWDIESは、OKAMOTO'Sの出身校の先輩にあたるそうで、同じ60年代という音楽もそうだが、学校という意味でもルーツを同じくする。聞けば両者の出身校である和光学園は、政治家や文化人をはじめ、フリッパーズギターやリトルクリーチャーズなど多くのアーティストを輩出している。かと言って、特に音楽に力を入れている学校というわけでもないそうで、そうしたこの学校の持つ独特で自由な校風も、OKAMOTO'Sを作り上げる上では非常に大きな要素になった。

 「服装や髪の色なども自由で、他の学校にあるような縛りがないんです。時間の使い方もそれぞれなので、自分のやりたいことを見つけた人間にとっては最高の学校です。ただ、やりたいことを見つけられないと、逆にキツかったと思う」(オカモトショウ)

 「BAWDIESは、ステージじゃないところでの彼らの雰囲気が、すごく俺らと似ているんです。学校時代に、廊下でじゃれてた景色みたいな。俺らもそうだったから、すごくよく分かるんです。だからBAWDIESも、俺らに同じものを感じてくれていたみたいで、最初から壁なく接してくれていましたね。そういう気持ちに対するお返しが、このアルバムでようやくできたと思います」(ハマ・オカモト)

 そして黒猫チェルシーは、メジャーデビュー年やデビュー日が同じ、しかも年齢も同じ。同じ時代に同じ音楽シーンを歩んで来た、言わば盟友のような存在だ。黒猫とのコラボ曲「Family Song」からは、そんな両者だからこそ分かち合えるアツさを感じることができる。

 「彼らの楽曲や歌詞を聴くと、どういう時期にどういうことで悩んでいたのか、手に取るように分かる。結局歩んでいる道が同じだから。別になれ合ってるわけじゃないですよ。でもまあ、そういう意味ではメンバー以外で同年代の理解者って他にいないから、すごく貴重な存在です。早死にしないでほしいです」(ハマ・オカモト)

 何者にも縛られない自由な発想、好きな音楽に対してはとことん貪欲でマジメ、やんちゃだけどハートのアツさもある……。5組とのコラボを通して見えて来たOKAMOTO'Sの魅力は、実にシンプルでピュアなものだった。そんな持ち味を引っ提げて、次に作るのは何か?アルバムの最後には、OKAMOTO'Sだけで作った新曲「SAD SUNDAY」が収録されている。この曲のポップさ、キャッチーさ、切なさ、シンプルさは、今後の彼らに期待するだけのヒントを秘めている。

 「ちゃんと結果を出さないと、ただの口うるさいレコードオタクと思われちゃう(笑)。だから次は、ちゃんとヒットを飛ばしたいですね。そうすればもっと自由になれて、もっとたくさんのものを届けられるようになる。それに今の時代、わざわざCDを買ってくれる人は、本当に心底音楽が好きな人だけだと信じてるんです。だからこそ、自分たちの音楽にこだわりを持つべきだし、こだわって作らないといけないと思う。いっそ、金のためやモテたくてヒット飛ばしたいって言っちゃったほうが、よほどポップだと思うんだけど、残念ながら俺らって、そうじゃないんです(笑)」(オカモトショウ)

 60年代をルーツに、それを現在の彼らがやることで生まれる、懐かしくて新しいロック、それがOKAMOTO'S。この世は泡沫、栄枯盛衰と言うが、流行廃りのその先に残って行くのは、きっと彼らのような賞味期限のないロックをやるバンドだろう。
(文:榑林史章)

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