ミュージック インタビュー&コメント

ミュージックインタビュー&コメント
2006年09月20日
Special Interview
BUMP OF CHICKENにとって『人形劇ギルド』とは―――?
(前のページから続く)
 『人形劇ギルド』の舞台は、中世から近世の雰囲気を湛えた“炭鉱の島”だ。島全体が炭鉱になっていて、日夜を分かたず人が行き交う活気に満ちた島だ。そこに住んでいる父親と娘、マンナズとベルカナの物語だ。娘が欲しがっていたピアノを買うために“HEAVEN”と呼ばれている危険なギルドに潜って仕事をする決心を固める父親と彼を思う娘の気持ちが描かれている。さりげなくて暖かい。そしてユーモラスで哀愁がある。チャップリンの映画のようでもある。最後にはホロリとさせる結末も用意されているが、それは見てのお楽しみだ。

「そういう物語がたどり着いた先は、CDの「ギルド」とはイコールではないでしょうけど、親と子の結びつきという内包しているものは同じですね。曲を書いている時に炭鉱夫が働いているイメージはあったわけですから、同じ血液的な感じは色濃くあると思います。「ギルド」の宣伝ビデオではなくなってるでしょうけど、逆にこの物語の主題歌があるとしたら「ギルド」だという、そういう関係だと思います」(藤原基央)

 『人形劇ギルド』のもう一つの大きな特徴は、無声映像であることだ。台詞は言葉ではなくて文字で画面に出る。全編が炭鉱のSEと音楽で綴られている。作曲は藤原基央で演奏はもちろんBUMP OF CHICKENである。

「無声映像は僕が好きだったということなんですけど、BGMで場面をつないでゆきたいと思いましたね。人形の動きは素晴らしくてホントにプロの仕事だと感動してるんですけど、やっぱり人間が動くよりは制限があるじゃないですか。そこに言葉を使うと実際の人間の肉声よりも拙くなりますよね。それをテロップで出しますと、BGMと人形とで台詞に色がついてくる。そうやって言葉が聞こえてきたら面白いなと思いましたね。ミュージシャンぽくて良いんじゃないかと」(藤原基央)

 藤原基央は、すでにRPG『TALES OF THE ABYSS』のサウンドトラックを手がけている。BUMP OF CHICKENの楽曲のように歌詞のある音楽とそうでない音楽に違いはあるのだろうか。

「今回、映像を見ながらカット割りに合わせて曲を書いて演奏していったんですが、「ギルド」と同じキーの中で何回場面展開ができるかとか、そういうアドリブの技量が試されたりもしましたね。歌詞に関しては、音楽ってそういうものだと思うし、抵抗はないですね。制約が取れたという言い方もできますしね。僕らにとってはこの人形劇も、手段は違いますけど、『ユグドラシル』や『jupiter』、あるいは、今レコーデイングしている作品と変わらない気持ちで作ってますからね」(藤原基央)

 音楽と映像。一人の表現者にとって、作品の形こそ違え、生まれてくる感受性の泉は同じということだろう。

「僕らの年代はテレビをつければ『三国志』とかやってましたし、ピンク・フロイドのクレイとかも見てましたからね。特別にあの番組が好き、ということじゃなくても自然になじんでいるんだと思います」(直井由文)

「人形劇とか切り絵とかって実写ものや音楽アニメよりも鮮烈に覚えていたりするんですよ。グリム童話とか。ああいうのってすごくかわいいか怖いかどっちかなんで、それが共存しているイメージはありましたね。そういう表現手段で童話のような教訓話を描くというのは子供心に印象に残っているんだと思います」(藤原基央)

「俺らもフジ君が脚本を書くという話を聞いたときに違和感がなかったのは、小学校の時に、そういうことがあったんですよ。僕たちの世代は漫画を書くことが当たり前になっていた世代で、授業中とかみんな描いていた。でも、たいていはドラゴンボールを描きたかっただけじゃん、というのだったりするんだけど、フジ君は違って、構成力がすごかった。全6巻か10巻。でも、その漫画が行方不明なんですよ(笑)」(直井由文)

 音楽も映像もその人から生まれてくることには変わりがない。『人形劇ギルド』は藤原基央の作家性を反映したものであり、それこそがBUMP OF CHICKENの独自性の表れと言えるだろう。

 2006年の夏、彼らは夏フェスにも姿を見せず、レコーディングに集中していた。

「フェスの夏しか経験がありませんでしたから寂しくもありましたけど、レコーディングの合間に海に行ったりもしましたね。順調に僕らのペースで進んでます。世間一般からすれば亀の歩みかもしれませんが、僕らからすれば脱兎のごとく。大空を舞う鷲のごとく飛翔しております(笑)」(藤原基央)

「今やっていることというのは本当の意味でミュージックをやっているという感覚がありますね。みんな自分の獲物を持ってスタジオにこもってます」(直井由文)

「まずはこの人形劇を見てほしいなと思いますね」(増川弘明)

 ある意味ではCDよりもBUMP OF CHICKENらしいのが『人形劇ギルド』だろう。そして、彼らならではの仕掛けも十分に楽しめることだろう。
(写真:草刈雅之)
(文:田家秀樹)
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