2011年 本ランキング発表!ミリオンセラー続出!書籍のヒットからの“次への広がり”

ヒット作が生み出す社会現象

 2010年、書籍の世界に大きな変化の潮流が押し寄せた。「電子書籍」の普及である。端末が揃い、時代がエコを謳うことで、本は“めくる”ものから“フリックする”ものへと変化しそうな勢いだった。だが、書籍の年間ランキングは思いもよらぬ結果を導き出した。2→2→7。これが何を表しているかわかるだろうか。答えはミリオンセラーの数(コミックを除く)。2009年、2010年には各2作だった100万部以上の作品が、2011年には7作も生まれたのである。活字離れ、電子化への移行が喧伝(けんでん)されているなかにあってこのデータは何を意味しているのか。

 単純に、電子書籍化されていない作品が上位に並んだということかもしれない。事実、TOP10のなかで電子化されたのは『心を整える。』のみ、それも2011年10月のことだ。だが、裏を返せばそれだけ“今読みたい”と、読者を刺激した作品の多さを物語っているとも言えないだろうか。ドラマ化された『謎解きはディナーのあとで』は人気シリーズになりそうな気配を漂わせているし、樫木裕実の“カーヴィーダンス”は社会現象的な広がりを見せた。“タニタの写真食堂”の丸の内出店は、ヒット作が生み出した新たな食文化と捉えてよさそうだ。

 すでに映画化・アニメ化がなされた『もしドラ』は言うに及ばず、読者人気が本だけにとどまらず、次への広がりを見せることで、セールスに拍車がかかるという好循環も生まれ、それが書籍界全体の賑わいにつながっている。

スタンダードと化した“ルフィの冒険譚”

 2011年も『ONE PIECE』のパワーに圧倒された1年となったコミックランキング。上位4作品を独占した売上は、11月に発売された第64巻で250万部超。その直前作にあたる第61〜63巻がすべて300万部オーバーというのだから、まさにモンスター。次の世代へ、そのまた次の世代へと語り継がれてきた“ルフィの冒険譚”は完全に“スタンダード”と化した。

 とはいえ、常に上位をにぎわせる“定番”はこのほかにもたくさん存在する。『NARUTO―ナルト―』『君に届け』『鋼の錬金術師』『HUNTER×HUNTER』『聖☆おにいさん』が軒並み100万部超え。傾向やタッチが偏るでもなく、文字通り多彩なラインナップで読者のあらゆるニーズに応えていく。それは取りも直さず、潜在的なコミックファンの多さ、コミックマーケットの裾野の深さを示してもいる。常に世界中の注目の的となっているジャパニーズ・マンガ。2012年はどんな新顔がこの“定番”枠に名乗りを上げることになるのだろうか。

時代のキーワードとなった“絆”

 文庫においては、この1年も“映像化”が重要なファクターとなった感がある。2010年のテレビドラマ化に続き、2011年には映画化でさらに多くの大衆を引きつけた『八日目の蝉』。時代のキーワードとなった“絆”を強烈に意識させるストーリーが、女性層を中心に高い支持を集め、堂々のミリオン突破となった。

 単行本が2010年の年間BOOKランキングで27位に入った『神様のカルテ』は、文庫でさらに飛躍を遂げ2位を獲得。2010年の本屋大賞2位、その後の漫画化、さらに櫻井翔、宮崎あおい主演による映画化など、アピール要素を高めていったことが文庫のセールスに結実したと言っていいだろう。この作品でデビューを飾った夏川草介の新作はさらに注目を集めるはずだ。

 新しい大阪市長の誕生で話題を集めている近畿。そこを舞台にした『プリンセス・トヨトミ』『阪急電車』も、映画公開がセールスを後押しした作品と言える。とくに『プリンセス・トヨトミ』は、大きな胎動を見せ始めている大阪の“いま”と照らし合わせながら小説の世界へ入ってくるであろう新規読者の増加に注目したい。

 最後に、この人の安定感にも触れずにはいられないのが東野圭吾だ。出す作品がことごとくヒット。映像化も途切れることのないヒットメーカーは2012年も“さすが”と言わせてくれることだろう。

(文:田井裕規)