新作映画『R100』の公開が迫る松本人志監督が登場。一貫した映画製作に対するスタンス、さらには、現在の松本自身に生じている“迷い”についても言及してくれた!!

(作品が)良いのか悪いのか自分でも分からなくなる

松本人志
松本人志

──『R100』を試写で観たのですが、印象的だったのが、観てる人の間で、高笑いではなく、押し殺したような笑いが起きていたことなんです。高笑いすることが、はばかれるというか。
【松本人志】 あ〜そうですか。まぁ、そうでしょうね(笑)。今回はホントに台本が破たんしているので、当初から演者さん、スタッフには「基本、笑いはないつもりで」って言ってたんですよ。まぁ本がおかしいから、どこかで“こぼれる笑い”はあるのかもしれないですけど、作り手の姿勢としては変に笑いを取らないで行こうという考えでしたね。 ──ただ、松本さんがこれまで“笑い”というフィールドで提示してきた狂気が詰め込まれているなと感じましたね。
【松本】 うん。でも、(今作は)コメディ映画ではないじゃないですか? 未だに「今度の映画、笑わせてくださいね!」って言われるときもあるんですけどね。 ──先ほど仰った、“こぼれる笑い”はあります。
【松本】 笑いを閉じ込めるような作り方なんですけど、圧力釜みたいなもんでどこかで蒸気が漏れるんですよね。漏れたところで笑ってくれる人もいると思うんですけど、漏れたことに気付かない人もいるんでね(笑)。 ──そこが松本さんのジレンマですよね。お客さんは「ダウンタウン・松本人志が作った映画だからどれだけ笑わせてくれるんだろう?」というスタンスで来る人も多いですから。
【松本】 僕が一貫していっているのは、僕の映画はコメディや喜劇ではないんですよ。ただし、世に出すからには映画としての松本ブランドみたいなものを作りたいなとは思いますけどね。 ──とはいえ、これまで私たちに“笑い”として魅せてくれた要素が全て入っていると言えると思います。『ごっつ』はもちろん、『頭頭』しかり『ヴィジュアルバム』しかり……。
【松本】 いや、そう言ってもらえるとありがたいんですよ。結局、監督やって、脚本も作って編集もやってとなると、よく分からなくなってくるんですよ、良いのか悪いのか(笑)。 ──松本さんでも迷いが生じるんですか!? 意外というか(笑)。
【松本】 もうね、腐るほど観るワケだからね。結局のところ、最終判断をどのように決めるかというと、自分が初号試写でどう思うか?という事なんですよ。そこが答えなんですよ。実際に「良いのが出来たな」って思ったんで。もちろん、「あ、ここもうちょっとイケたかな!?」みたいな部分は、多少ありますけどね。よく頑張れたんじゃないのかなって。

今回はもう一回ハチャメチャにしたかった

松本人志
松本人志
松本人志

──前作の『さや侍』は非常に“映画らしい映画の作り方”だったと思うんです。今回の『R100』でのハチャメチャさというのは、やはり前作からのカウンターとしてその衝動に駆られたんですか?
【松本】 『さや侍』でストレスを感じていたワケでは無いんですけど、反動という部分は当然出るでしょうし、出てしかるべきだと思う。今回、まず最初に決めてたのは、とにかくメチャクチャにしたいと……もう一回『大日本人』まで立ちかえってね。でも制作の段階を経て、本はメチャクチャだけど、出ている役者さんにはしっかりとした演技をしてもらうという考えになっていったんですよね。 ──主演の大森南朋さんと、様々な“女王様”たちによる“SとMの哲学”がぶつかりあってますけど。
【松本】 まぁ、ひとつは“男のずるさ”ですよね。自分の家庭が大変な時でも快楽を求めてしまうというずるさね(笑)。そういう“ずるさ”の演技については大森さんとはしっかり話し合いましたね。「コイツ(主人公)はホントにずるいヤツやから」って。 ──でも、良い夫であり良い父でもある……その2面性が人間っぽさなんでしょうね(笑)。
【松本】 うん。悪いヤツではないんです。ウソはついてないですから。

僕は“職業M”、プライベートで「叩いてくれ!」という事はない

松本人志
松本人志

──大森さん演じた主人公・片山は松本さんを投影したキャラクターなんでしょうか?
【松本】 アハハハハ! まぁ、そうなんでしょうけどね(笑)。ただ、ふと思ったのは、そもそも僕、20歳位まで“M”では無かったんですよ。この仕事をやり出してからなんです。職業として“笑い”を追及したときに、“M”という形をとることによって、より笑いを生み出しやすい状況になっていった。だから、浜田(雅功)も多分どんどん“S”になっていったと思うんですよ。 ──それは役割として?
【松本】 そう、役割としてですね。それは凄く感じますね。そもそも僕、違うんですよ。だから“職業M”なんですよ。 ──アハハハハ! でも、確かにボケ担当ならMの方が良いワケですもんね。
【松本】 追い込まれて、追い込まれて何か言ったりね。仕切る人間は“S”の方がいいし。何時までも人の話聞いてたら先に進まないですから。対極であるべきというのは、コンビでお笑いに携わっている部分では重要ですね。“SとM”というテーマは、笑いを追及するという意味でも、避けては通れない部分ですね。 ──主人公・片山も最初は“M”だったのに、徐々に“S”的行為に恍惚の表情を浮かべます。私自身も、自分がSなのかMなのか分からなく時があるんですよ。
【松本】 それはね。目の前に対峙する人で変わることで、目の前にいる人間が発するパワーによってMにもSにもなるんです。目の前にいる人間がもの凄いSのパワーを発すると、受け手側である自分は「あ、そういうことね」ってなるんですよ、きっと。 ──あぁ〜確かにそうですね。つまり松本さんの場合は、浜田さんが“対峙する相手”だったからという事ですね
【松本】 職業で言うとそうなりますね。これが恋人や夫婦となると……リングが変わりますから(笑)。 ──フィールドが異なると(笑)。
【松本】 確実に言えることは、僕はプライベートのセックスで、相手に「叩いてくれ!」という事はないですね。 ──アハハハハ!!
【松本】 ……まぁ風俗では多少そういうこともあったかなぁ(遠い目)。


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インフォメーション

『R100』
10月5日公開 ワーナー・ブラザース映画

サラリーマン生活を送る片山(大森南朋)は、家庭や仕事のストレスから、1年という期限付きでミステリアスなクラブへの入会を決意する。入会の際の条件は、たとえ何があろうとも途中で退会することはできないという内容で、様々な“女王様”たちが片山を襲う。職場や家庭にまで忍び寄る女王様に反逆の狼煙を上げる。

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