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吉田豪のギリギリレビュー!! Vol.2 MUSASHI'S featuring P-A『だいすき!!』

『ブックオフ』から“お宝”を発掘する事にかけては他の追随を許さない人気コラムニスト・吉田豪。そんな彼が、今後100円均一のワゴンセールに埋もれてしまうにはあまりに惜しい名曲&珍曲を毎週紹介!

“ももクロ”大ブレイクのきっかけは「猫版ボーカロイド」!?

MUSASHI'S featuring P-A『だいすき!!』
MUSASHI’S featuring P-A
『だいすき!!』

 あの『クイックジャパン』で2度目の大特集が組まれることが決まったり、『MUSIC MAGAZINE』や『MARQUEE』といった音楽誌の表紙になることも決まったりと、いま大変なことになっているももいろクローバーZ。彼女たちの歴史を大雑把に分類すると、音楽的にはこんな流れになるんじゃないかと思われます。

 まず、第一期が和のコンセプトで普通にいい曲をやっていたけれど、まだまだ引っ掛かりが少なかったインディーズ時代(『ももいろパンチ』〜『未来へススメ!』まで。09年)。第二期がメジャーデビュー以降の、音楽的にもステージアクション的にもアクロバティックになって、変化球でありながらも豪速球みたいなとんでもない曲を連発していた時代(『行くぜっ!怪盗少女』〜『ピンキージョーンズ』〜『ミライボウル』まで。10年〜11年)。

 そして第三期が、早見あかりが抜けてZが付いてからのバラエティ的な要素を強化した時代(『Z伝説』以降。11年〜)。ただ、実は第二期になってもそのまま「いい曲」路線が続くはずだったわけなんですよね。当初の予定だと『怪盗少女』がカップリング曲になり、後に映画『モテキ』の挿入歌にもなったカップリング曲の『走れ!』でメジャーデビューするはずだったのが、土壇場でそれが引っくり返ったことで彼女たちの運命を大きく変えた、と。

 そんな『走れ!』や『全力少女』(『ミライボウル』のカップリング曲)みたいに、ももクロ第二期の「いい曲」を作ってきたのが、michitomoという人。ボクがこの人の曲を最初にいいと思ったのは滝沢乃南のアルバム『Peach』(08年)だったんですが、最近は吉川友の『きっかけはYOU!』『こんな私でよかったら』(11年)や、ぱすぽ☆『ViVi夏』(11年)。そして、一部アイドルヲタの間で高く評価されているPrizmmy(12年)などの仕事でもお馴染み。ももクロも含めて、ユニバーサルミュージックで起用されやすい人なんだなと思ってたら、ユニバーサルでこんな仕事もこなしてたことが判明したわけですよ!

 なんと歌う猫、MUSASHI'SのCD! ジャケを見るだけでもクラクラする! ちょっと調べてみるだけでも「Youtubeで140万アクセス達成!」「日本のみならず、韓国、中国でも現在話題沸騰中!」「『TBS愛の劇場・大好き!五つ子2008』主題歌!」「『うたばん』『ミュージックステーション』に出演!」といった威勢の良すぎるフレーズが次々と引っ掛かり、『MUSASHI'S BOOK』や『歌う猫MUSASHI'Sのぼけぼけ雑記帳』といった単行本まで出してるらしいのに、なぜかそれほど話題になった気もしない、この作品。「猫版ボーカロイド」と呼ばれていただけあって、要はそんな代物でした。つまり、猫の鳴き声をそのまま取り込み、『一年生になったら』『ハッピーバースデー』『ほたるの光』といった曲を演奏するだけ! 以上!

 そんな微妙なCDなのになぜジャケ裏に「スターダスト・ミュージック」というクレジットが入っているかというと、実はこの猫がスターダストプロモーション所属だったという衝撃の事実! 「事務所と、1曲につきカツオ1匹のギャラで正式に契約を結んでいる」ってギミックになってたけど、それは確実に不当な契約でしょ!

 そして、表ジャケのレコーディングに挑む猫たちに隠れて、ひっそりと書かれている「featuring P-A」という文字。これは榎本加奈子の主演ドラマ『P.A.(プライベート・アクトレス)』のことでもパレスチナ自治政府のことでもなく、Power Ageのこと。なんか硬派なパワーメタルバンドみたいな名前ですが、スターダストプロモーション所属の9人組ガールズユニット! 野球評論家・西崎幸広の次女・西崎莉麻といった小学生から高校生までのメンバーによって形成され、国民的アイドルグループの某メンバーや岡本杏理も一時は所属。05年に結成され、09年に解散。最末期には有安杏果(ももクロメンバー)も加入してたり、代々木公園で路上ライブを繰り広げていたという意味でも、“プレ”ももクロといっていいような存在だった、と。そんなグループの唯一のCDが、同じ事務所の猫の抱き合わせ企画だったわけですよ! で、そのタイトル曲の『だいすき!!』だけはメインボーカルをPower Ageが務めたアイドルポップで、P-Aのコーラスアレンジをmichitomoさんが担当していた、と。

 でもまあ、これがおそらくユニバーサルとmichitomoさんが繋がったきっかけなんだろうし、おかげでももクロや吉川友の名曲が誕生したんじゃないかと思うと、猫に感謝するしかないわけです。きっかけは猫!

今週の1曲

MUSASHI'S featuring P-A『だいすき!!』

MUSASHI'S featuring P-A『だいすき!!』
(08年/ユニバーサル)
ノルウエージャンのリーダー・ムサシ君を中心とした5匹の猫のボーカル・ユニット「MUSASHI'S」による初CD。「一年生になったら」、「ほたるの光」などの名曲を猫の鳴き声だけで歌い上げるという“ネコ版”ボーカロイド作品。世の猫好きには堪らない珠玉の1枚。

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プロフィール

吉田 豪(よしだ ごう) プロ書評家、プロインタビュアー、コラムニスト。徹底した事前取材を元にした有名人インタビューで知られており、インタビュー集を複数出版。またアイドルにも造詣が深く、メジャーからアンダーグラウインドまで幅広く研究。独特な切り口からインタビュー集やコラムなどは熱狂的なファンも多く、福山雅治を筆頭に芸能界からの支持率も高い。

PROFILE 吉田 豪Twitter

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