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第1回 二つ返事で引き受けたけど…

堤幸彦

 映画やドラマを作っております堤幸彦でございます。新作映画『MY HOUSE』の公開まで1ヶ月、4回に渡って心境を綴る連載……ってか。

 なにしろ一から自分で企画した映画のため、宣伝のため二つ返事で引き受けたものの、そんな連載を一度もしたことがないのでどう書いてよいかわからないのだった。エッセイなんて気の利いたものは全く書けない。グルメでもなくペットも飼ってない。“枕”や“引用”や“教訓”に通じる天声人語的ネタも持ちあわせない。またワタシは成人病のデパートなので、一日一食ノススメとか楽しい両手大振りウォーキングとかピロリの退治法などの辛気臭い話は専門家だが、今回は全くお門違いだ。かくなるうえは映画『シャイニング』のジャック・ニコルソンみたいに「MY HOUSE MY HOUSE MY HOUSE MY HOUSE……」と原稿を埋めるか。一個「MIKI HOUSE」だったりして……ううむ、なんてくだらない大人げない。

 今年前半は自作の公開ラッシュで、2月に『平安結祈』、3月に『Kesennuma, Voices.』、4月に『劇場版SPEC-天-』と連続した。それぞれ想いをたっぷり込めた作品であり忘れられない作品たちだが、想いが「うわっ重いっ!」と全身にのしかかる決定版的作品が今回の映画『MY HOUSE』なのだった。

 天才的視点で都市の死角に光をあてる坂口恭平氏の雑誌原稿に触発されたのが5年前。取材しストーリーを組み立て、名古屋のカリスマ劇作家・佃典彦氏と脚本化し、さまざまな作品の影で虎視眈々と作品成立をもくろみ、何度も脚本を直し、一度絶望的に頓挫し、しかし強力な援軍が登場し、故郷・名古屋で撮影にやっとこぎつけたのが昨年3月。まさにワタシの執念という想いが重くのしかかった映画『MY HOUSE』、ついに公開だ。

 その主役はなんと「路上生活者=ホームレス」だ。過去、バブル絶頂期1990年にNYで『HOMELESS』というズバリな映画を撮影したことがあった。主役はオノ・ヨーコさん。高度に発達した資本主義国家に家なき者の群れ、無言で我々を問い詰めるその存在。その頃からワタシの脳の片隅に彼らは住み続ける。20数年してなぜワタシはまた彼らに向かうのか。

 そのへんの「重い想い」はまた次に。

プロフィール

堤幸彦 1955年11月3日生まれ。愛知県出身。
1988年、故・森田芳光プロデュースのオムニバス映画『バカヤロー! 私、怒ってます』内『英語がなんだ』で映画監督デビュー。ニューヨークで撮ったオノ・ヨーコ主演の『ホームレス』(1991年)、『さよならニッポン! GOODBYE JAPAN』(1995年)などの映画のほか、テレビドラマやミュージックビデオ、ライブ映像、舞台の演出と幅広く活躍。『金田一少年の事件簿』『ケイゾク』『トリック』などの斬新な演出はその後のテレビドラマに大きな影響を与えた。主な監督作は『ケイゾク/映画 Beautiful Dreamer』(2000年)『トリック劇場版』(2002年)『恋愛冩眞』(2003年)『明日の記憶』(2006年)『自虐の詩』(2007年)『20世紀少年』3部作(2008〜2009年)『まぼろしの邪馬台国』(2008年)『BECK』(2010年)『はやぶさ/HAYABUSA』(2011年)『劇場版 SPEC〜天〜』(2012年)など。

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作品情報

MY HOUSE

MY HOUSE 構想から5年を経て、堤幸彦監督が自ら企画から手がけた意欲作を世に送り出す。実在の人物をモデルにした主人公の生活を通して見つける、物にあふれた暮らしのなかで“本当に必要なもの”とは……。

ストーリー:
可動式の家。アルミ缶の換金。社会の枠組みを軽やかに超えていく人々がいる。とある都会の片隅に、見たこともない「家」が建っていた。それは鈴本さん(いとうたかお)とパートナー・スミちゃん(石田えり)が作った組み立て式の、どこへでも自由に移動できる画期的な「家」。鈴本さんはほぼ0円で生活を賄っている。都会に捨てられたアルミ缶を拾い集め換金、不要になったクルマのバッテリーを使って狭いながらもオール電化。目からウロコのアイディアを駆使することで、質素ではあるがそこそこ快適に暮らしていた。都会に生きる自由で不自由な存在。その一方で、エリートコースを目指す中学生・ショータ(村田 勘)がいた。人嫌いで潔癖症の主婦・トモコ(木村多江)がいた。決して交わるはずのなかった彼らの暮らしが、ある事件をきっかけに交錯していく──。

監督:堤幸彦
出演:いとうたかお 石田えり 村田 勘 板尾創路 木村多江

2012年5月26日(土)より新宿バルト9他全国ロードショー
(C)2011「MY HOUSE」製作委員会

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